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公開日:2019年6月7日 更新日:2019年6月7日
総務省が実施する「業務改革モデルプロジェクト」(※)を区が受託して行った、AI-OCR、RPAを活用した業務自動化モデルの検証結果を報告します。
※業務改革モデルプロジェクト 民間企業の協力のもとBPRの手法を活用しながら住民の利便性向上に繋がる業務改革にモデル的に取り組む自治体を支援することで、事業の成果をもとに汎用性のある改革モデルを構築し、横展開を図ることを目的とする、総務省が実施するプロジェクト。
今回の検証では、申請が一時期に集中し、短期間での入力処理等を要する業務を中心にAI-OCR、RPAの導入可能性を探ることを目的として行いました。
将来的に、これまで職員が行ってきた業務の自動化が拡大していくことで、区民サービスの向上や重点的に対応が必要な課題に、より注力していくことができます。
AI-OCR |
OCRは、「Optical Character Recognition」の略称で、手書きや印刷された紙データを、スキャナやプリンタ等で読取り、コンピュータが利用できるデジタル文字に変換する技術です。 AI-OCRは、このOCR技術にAI (Artificial Intelligence=人工知能)を搭載し、前後の文字や学習データから文字を連想することで、従来のOCRに比べ、より高い精度の文字認識を可能にしています。 |
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RPA |
RPAは、「Robotic Process Automation」の略称で、人間がパソコン上で行っているキーボードやマウス等の端末操作を記録して、人の代わりに自動で作業するソフトウェアです。 〔作業例〕システム入力、検索・抽出、データ集計・加工、メール送受信等 |
現行 |
職員が受理した書類の確認、システムへの登録、システム登録内容の確認までを行います。 |
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自動化後 |
職員は、受理した書類の確認とスキャン、OCR読取結果の確認・修正を行い、AI-OCRが受理した書類の読取りを行い、RPAがシステム登録を行います。 |
2018年7月から2019年2月の8か月間で検証を行いました。
対象業務選定基準を以下のとおり設定し、5課17業務から10業務を選定して、検証を行いました。
【選定基準】
①業務量 | 処理件数・処理時間が多く、自動化による期待効果が大きい業務 |
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②OCR難易度 | 読取りしやすい帳票や作業工数がかからない帳票 |
③RPA難易度 | 定型作業でルールがある業務 |
④汎用性 | 他部署・他業務でのモデルケースとなりうる業務 |
【選定結果】
課税課 |
○特別区民税・都民税申告書データ入力業務 ○給与所得者異動届出書データ入力業務 ○公的年金等支払報告(再裁定年金)データ加工及び入力業務 |
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子ども施設 入園課 |
○保育施設利用申込書データ入力業務 ○口座振替データ入力業務 ○受理簿作成業務 |
親子支援課 | ○児童育成手当現況届データ入力業務 |
人事課 | ○通勤手当認定・データ入力業務 |
戸籍住民課 |
○住民異動届(転出)データ入力業務 ○住民異動届(転居)データ入力業務 |
◆検証対象業務のうち、以下の6業務で合計1,436時間の削減が見込めました。
○特別区民税・都民税申告書データ入力業務(課税課)
○給与所得者異動届出書データ入力業務(課税課)
○公的年金等支払報告(再裁定年金)データ加工及び入力業務(課税課)
○口座振替データ入力業務(子ども施設入園課)
○児童育成手当現況届データ入力業務(親子支援課)
○通勤手当認定・データ入力業務(人事課)
◆一方、以下の4業務では、業務時間または窓口対応時間の削減効果が見込めませんでした。
○保育施設利用申込書データ入力業務
⇒複数枚で1セットの申請のため、スキャンに伴う書類の整理に時間がかかったため。
⇒現状の申請書記載欄がOCR読取りに適していないため(記載欄が狭い、西暦和暦の指定がない等)。
○受理簿作成業務
⇒現行作業の1件あたりの作業時間が短いにもかかわらず、複数枚のスキャンを要するなど一定量の職員業務が残るため。
○住民異動届(転出)データ入力業務
○住民異動届(転居)データ入力業務
⇒RPAの動作時間も含めると、窓口対応時間の削減効果がほとんど見込めなかったため。
業務量削減効果が見込めた6業務における費用対効果を、約415万円/年間と試算しました。
※ただし、RPA構築のための委託費用、機器購入台数については、検証段階で明確になっていないため、これらにかかる費用を除いた額を費用対効果として試算しています。
検証から、AI-OCR、RPAの導入にあたっては、以下の点に留意する必要があることが明らかになりました。
【AI-OCR】
申請書の様式等が、複数帳票、申請書の記載欄の自由度が高い、帳票レイアウトが統一されていないような業務は、人がやるべき作業が多くなってしまい、業務量の削減効果が見込めません。このような業務では導入を見送るか、申請帳票の見直しが必要となります。
【RPA】
・定型度の高い業務から選定していくことで、より高い業務量の削減効果を見込むことができます。
・業務システムによっては、RPAがシステム上の文字を認識できない、データの貼り付けができないといった特性があるものもあります。そのような場合、業務の自動化自体が困難となるため、RPAソフトの選定にあたっては、事前に動作確認を行う必要があります。
今回の検証においては、一定の効果が出た業務があった一方で、AI-OCR、RPAの活用に関する様々な課題も見えてきました。今後は、それらの課題を整理して、より効果が見込める導入方法や他の業務も含めた活用可能性を引き続き検討していきます。
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