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公開日:2023年7月8日 更新日:2023年7月21日

パラスポーツ特集「Do it」まずはやってみる。

スポーツで思い切り汗をかきたい。仲間と体を動かして、ワイワイ楽しみたい。
その想いに、障がいの有無は関係ありません。
パラスポーツに「挑戦し続ける方」と、スポーツ活動を「サポートし続ける方」二人のインタビューを通して、「一歩踏み出すこと」の大切さを、皆さんと一緒に考えます。

 

 

Para athlete’s Story –パラアスリートの物語-

失明、絶望。そして出会ったパラスポーツ。

 

サウンドテーブルテニス代表:原則子さん

 

【サウンドテーブルテニス】
金属球が4つ入った音の鳴るピンポン球を、アイマスクした状態で打ち合い、点数を競うスポーツ。ネットの下を通してラリーし、自分の打った球が相手のエンドフレーム(サイドラインのふち)に当たった後、コートから落ちなければ得点となる。

 

子どものころから体を動かすことが好きでした

子どものころは外遊びが大好きでね。かくれんぼとか、缶蹴りとか。あとゴム跳び。物干し竿のところへゴムを張っておいて、ぽーんって跳ぶのよ。それを子どものころにずっとやっていたから、中学生になって走り高跳びが結構跳べました(笑)。それと、ビー玉遊びが私上手でね、強かったのよ。ビー玉は色々な模様のものがあって、ずーと袋にしまって宝物にしていました。結婚したときもそれ持って行ったぐらい(笑)。4人兄弟の長女でしたので、学校ごっこって言って私が先生の役をやって、弟や妹の面倒見てあげたりしていました。まあ普通の女の子ですね。昔の、昭和の子どもです。小学校のときは控えめでね、すごいおとなしかったのよ。でも中学校ですごいおしゃべりなお友達と親友になっちゃって。それからですね、こういう風によくしゃべるようになったのは(笑)。

 

絶望の日々を変えた「サウンドテーブルテニス」との出会い

卓球に出会ったのは中学生のとき。それから少し離れた期間はありましたがずっと続けていました。「遠征して大会に行こうね」って仲良しのパートナーと夢に燃えていたんですけど、平成22年、62歳のときに目の病気(視神経炎)が原因で失明して、そこで私の今までのいろんな生活に幕が下りて終わってしまいました。何も考えられなかったですね。毎日泣いていました。目が覚めて、起きても見えないんです。ショックで何もできませんでした。子どものころから、活発に飛び回っていたのに、外にも出られなくなって。なんて言うか、恥ずかしいというか。自分が惨めな気持ちで。外も一人じゃ歩けない訳ですよね。夫の手につかまって、なるべく白杖を持たないで、すまして、それなら見た目には目が見えないとは分かりませんので。そんな風にやっていたんですけどね…。

「サウンドテーブルテニス」との出会い

娘が、暗く落ち込んでいるのを見かねて、インターネットとかで調べてガイドヘルパーさんっていう制度が使えるっていうのが分かって。私も、障害者手帳もらったときに福祉事務所で説明されていたんだと思うんですが、障害者手帳を受け取ったことで、「本当に障がい者と位置付けられたんだ」とショックのあまり何にも頭に入んなくって。

それで、ガイドヘルパーさんを使って外出ができるっていうことが分かりましたので、来ていただいて、手続きをするおしゃべりの中で、今までの私の生活ぶりだとか、ずっとお話ししていたんです。そのときに「視覚障がい者向けの卓球クラブがある」って聞いて、全然知らなかったので、びっくりしました。そういう情報が入ってきませんでしたから。だから当時はなかった「あだちスポーツコンシェルジュ」のような窓口があるのはとても良いと思います。自分のやりたいことにめぐりあうと色々なことに道が開けますよね。どういうスポーツができる団体がどこにあるっていうのを知るまでに、ひとつ壁があると思いますので。私も仲間にはこういう卓球やっているんだということで、ボール見せたり、宣伝しているんですけど。この特集も届いてくれるといいんですけどね。ご本人でなくても、ご家族とか、近くの方が伝えていただければと思っています。

 

一歩踏み出して外へ。そこで得た、様々な出会い

一歩踏み出して外へ。そこで得た、様々な出会い卓球クラブに行くと、何十年と触っていた卓球台とボールがあるじゃないですか。「うわー卓球だっ!」と思って。音で聞いてやるっていうのは難しかったんですけど、卓球台とボールに触れるのが楽しくて。卓球との赤い糸があるみたいで嬉しかったです。最初は下手でね。下手って言ってももちろん初めてだからそうですよね。「ボールをそっちに投げるから手で取ってごらんって」当時の部長さんが言って、そういう練習から始まりました。

びっくりしたのは皆がすごく明るいこと。「え! 見えなくてなんでこんなに明るくて元気なの!」って。私自身見えなくて何にもできなくて家の中でおろおろしていて。気持ちも暗くなっていましたでしょ。周りは見える人ばっかりだから。見える人は私にどういう風に接していいか分からないし、声もかけられない。「あんな元気だった原さんが…」ってそばに寄れなくなっちゃっているわけ。そんな状態でしたので、卓球クラブの皆さんが明るくてびっくりしたんです。そのおかげで私も自然に馴染めて、参加するのが楽しくなりました。人とのつながりもたくさんできました。

家に閉じこもっていたらだめなんですよね。お家に一人でいないで、飛び出せば出会いがある。人と関わることは元気が出るし、皆優しいと思うのね。自分が求めれば、なにか返ってくるように思うんです。だから諦めないで、出来ることにめぐりあってほしいですね、自分に合ったものにね。

 

サウンドテーブルテニスの面白さ

ボールの音を耳で、「右へ来たか、左へ来たか」と、とにかく集中して追いかける。醍醐味は相手にピシッとスマッシュが決まったとき「やったー!」ですよ。すごく楽しいですね。練習に来ている人たちにもそういう気持ちになってほしいなって、思っています。でも、中々決まらないんですよ。難しいのよ。今でもどうやってラケット振ったらコートから出ないで決まるのか、毎回悩んで振っています。力加減とね、回転もあるみたいだし。一瞬だから判断が難しい。でも、それがまた面白いんですよね。あんまり簡単じゃ面白くない。いまだにどうやったらいいか、考え考え、悩みながらプレーするところが面白いですね。今は、サービスエースを決めたくて、ここ1本っていうときのサーブを磨きたいと思って練習を頑張っています。

サウンドテーブルテニスの面白さ

どうしても何十年とやっていた一般卓球の癖があって、手首を使ってしまうみたいなんですけど、ラケットが60度以上傾くと相手に1点取とられてしまうんです。今は「原さん、ボールが来た方向にラケットをまっすぐ立てて」って直されているんです。素直にまっすぐ来たボールにまっすぐに打ち返した方がいいって。でも、一般卓球の経験は良いところもあって、今まで試合をしょっちゅうやっていましたので、慣れていて、緊張しないしそんなには上がらない。そういうところは有利ですよね。

 

 

出会いがつながり、広がっていった活動

絶望の日々を変えた「サウンドテーブルテニス」との出会い

卓球クラブは足立区視力障害者福祉協会っていうところの卓球クラブだから、そこに入会しないといけないっていうことで入ったんです。そこに入りましたら、女性部の方からお電話いただいて、「生け花教室もやっているから来ませんか」って言われて。それから「ソーラン節の踊りを練習しているから来ませんか」って。最初は、「無理です」って言うんですけど、先輩が「私も1年かけて覚えたから、1年やればできるよ、大丈夫よ」って言ってくださるんで、じゃあやってみようかなって。それで手取り足取り教えてもらって老人ホームに慰問するまでになりましたよ。

生け花も、目が見えない代わりに手の感覚がだんだん少しずつね発達してくるのね。手の感触で「これは菊の花」「これはひまわり」「これはカーネーション」とか分かるんです。葉っぱに特徴があるので、葉っぱを触って見分けるんです。ただ、色だけは見えないので、「これは何色の菊ですか」ってガイドヘルパーさんに聞いたりして。元々お花好きなので、楽しんでいました。

ほかにも、新年会とか忘年会とか楽しい会がありましたので、そうしたら私もだんだん、同じ目が見えない人といるときは何でも気楽に話せて、自分が解放される感じで。自分が知らないことや分からないこともあるので、そういうのは先輩にお尋ねして、聞いたりしました。「お料理、皆自分でやっているわよ、できるわよ」って先輩が言うんで、「できるかな?」って最初は思ってましたけど、りんごとかじゃがいもとか皮むいたら手が動くのよね。「できない」って思っていたことがやってみたら意外とできるんですよね。お料理だってそう。できないと思ったけど今は肉じゃがでもカレーでも野菜炒めでもなんでも普通に作りますよ。

 

気軽に声をかけてほしい

目が見えているときもお友達たくさんいましたけど、見えなくなってからもね、お友達たくさんできました。弟が言いますよ「姉貴はすごいなぁ、大したもんだよ」って、感心していますけど。でも見えない人同士助け合って生きていかないとどうしようもないのよね。見えている人もそうでしょうけど、一人じゃ生きていけないの、この世は。皆なんらかの力で助け合っている。農家の人たちが作ってくれた野菜を私たちがいただいて、生きているってことと一緒でね。だから「人と仲良くしていく」っていうことを私は大事にしている。

見えない人たちは見えない人たちで孤立しちゃいけないし、健常者とともに「共生社会」っていうのは大事だけれども、見えない人は見えない人の共通の悩みっていうかな、共通の工夫もあるじゃないですか。ですから見えない人たち同士のサロンって言いうかな、それが私、大事だなって思っているの。そこでいろんなこと知って気持ちも元気になれば、健常者の人とも元気にお話しできたりお出かけできたりするのよね。

白杖ついている人を見たら「大丈夫ですか」「何かお手伝いすることありますか」って、まずは気軽に声かけてほしいな。いきなり触られたり、つかまれたり、大きい声で話しかけられたりするとビックリしちゃうから、普通の静かな声で「何かお手伝いすることありますか」って聞いてもらえれば。

普通に歩いている人は大丈夫だと思いますが、立ち止まって「あれこっちだったかな」って考えている人。白杖持ってちょっと立ち止まっている人がいたら声かけてほしいな。方向が同じだったら、改札までとか案内してくださると嬉しいです。助けが必要ないときは「大丈夫です」って言いますので。考えすぎず、まずは声かけて、やさしくね。

 

夢に向かって進み続ける

夢に向かって進み続ける10年間面倒見てくれた夫が3年前に亡くなりました。最期はコロナで会えなくて、感謝の言葉が言えなくて、それが本当に申し訳なかったと思う。卓球の練習会場への送迎や練習相手、アドバイスなど、たくさんサポートしてくれました。だから夫のためにも、頑張って上手になりたい。去年(令和4年)栃木国体に出れて金メダルとれたときは、天国の夫に報告しました。

今の目標はサウンドテーブルテニスでもう一度国体に行くこと。それとは別に視覚障がい者の卓球連盟にトーナメント形式の全国大会があって、そこでは3位までしかなっていないのでそこで優勝したい。そしたら「夢」かなっちゃいますね。若い人がどんどん追い上げているからかなり厳しいんですよね。でも、夢があると毎日の練習も頑張れます。

 

 

 

 

原さん

原 則子さん(75歳)

足立区視力障害者福祉協会 卓球クラブ 代表
「サークル響き」おしゃべりサロン 主宰
令和4年第22回全国障害者スポーツ大会「いちご一会とちぎ大会」金メダル

 

 

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Supporter’s Story-サポートする人たちの物語-

失敗したっていい。やってみることが、大事なんだ。

 

知的障がいのある方のサッカークラブ「ADISC 」代表:鵜沢勝

「やってみたい」その想いに応えて

障がい者の就労支援施設に勤めています。2018年のロシアワールドカップのときに施設内でもサッカーが盛り上がって、利用者から「やってみたい」という声があがったんです。僕は幼少期からサッカーを始め、今でも草サッカーをやっているので、「サッカーだったら教えられるよ」ということで、「じゃあ、週末にやってみようか?」というのがきっかけで「ADISC」を設立しました。「失敗を恐れず、やってみよう」とか「やればできる」とかそういう意味を込めて「ADACHI DO IT SPORTS CLUB」。その頭文字がチーム名です。その後、東京2020パラリンピックがあって、区のオランダ連携*1にも関わりました。そのときに来日したオランダのリタさん(障がい者スポーツプログラムマネジャー)が、まずは「Do it」って言っていたんです。考えていることは同じなんだって、びっくりしました。それから「スペシャルクライフコート*2」ができたことで、私たちの活動の場が広がり、月1回の活動から月3回程度行えるようになったので、とてもありがたいです。

東京2020パラリンピックが開催されたことで、障がい者スポーツに対する認知度は高くなり、周りの見る目が変わったように思います。ただ、障がい者サッカーというと「ブラインドサッカー」は有名だったりするんですけど、知的障がいのある方のサッカーって認知度は低いですよね。実は僕も知らなかったですし(笑)。でも、ちゃんと需要がある(やりたいと思っている人がいる)し、もっともっと認知度が上がっていったらいいなって思っています。

「やってみたい」その想いに応えて

 

 

「失敗する体験」も大事

設立のときは、「ケガをしたらどうするのか」「誰が責任をとるのか」など色々なご意見をいただきました。新しいことを始めるのって皆怖いんです。でも、挑戦の先にしか新しい未来はないわけで。それこそ「Do it」の精神ですよね。僕は、誰にとっても「失敗する体験」は必要だと思っています。大事なのは「失敗から何を学び、次にどう活かすのか」だと考えます。もちろんケガをしない為の配慮は必ずします。けれど、「転ぶから走っちゃだめ」「失敗しちゃうから」ではなく、まずはやってみて、それでも転んでしまったり、失敗をしてしまったら、次はどうしたら上手くいくのかを一緒に考え、伝えていきます。今までできなかったことが少しずつできるようになると、みんな笑顔になるし自己肯定感が向上し、自尊心も育ちます。

これまでスポーツをする機会がなかった人がいきなり「体験」ってなるとハードルが高いと思いますから、まずは「外に出てみよう」。外に出られるようになったら「会場まで行ってみよう」。行けるようになったら、スポーツを楽しんでいる人を「見学してみよう」。見学することができたら、ちょこっと「体験」してみよう。というように、何が怖いのか、細分化して一つ一つ乗り越えていければその先には必ず楽しいことがあると思います。トライ&エラーの繰り返しで、その都度壁にぶつかったら一緒に考えて、私たちは活動しています。

彼らは土・日曜日に中々出かける機会が少なかったりするんで「失敗する体験」も大事すね。特にスポーツをする機会が少ないんです。高校を卒業すると体育の授業がなくなるから運動不足になっていきます。体を動かす機会が減ることから肥満になっていくし、ストレスが溜まりイライラして、親や周囲の方にあたってしまう。テレビやスマホを一日中見てるっていうことも多いです。それゆえコミュニケーション不足という弊害も起こります。そこで土・日曜日に仲間とスポーツをすることができれば運動不足は解消されストレス発散にもなります。体を動かすから疲れてお腹も減る。沢山ご飯食べて夜はぐっすり! と良い循環が生れると思います。普段の表情も明るく変わるんですよ!

去年、「知的障がい者サッカー大会」というのがあって、初めて試合をしました。メンバーはものすごく緊張していましたが、なんと点を取って試合に勝つことが出来ました。僕、感動のあまり泣いてしまったんです(笑)。チームでの交流を通して周りに感謝し、仲間を思いやる気持ちを育んでいけたらと思っています。

「当たり前のことが当たり前にできる場所」を作りたい

「ADISC」を通して人と関わり、困ったときには助け合える仲間や場所ができれば、彼らの今後にも役には立つのかなと思っています。でも、まだまだ私たちには発信力はないので「あだちスポーツコンシェルジュ」という窓口があって、とても助かっています。何かスポーツをやりたいという方が「あだちスポーツコンシェルジュ」を通して、繋がってくれるのでとてもありがたいです。現在は2名の方が紹介で参加されています。

去年は皆でコスプレをしてクリスマス会をやりました。歌って踊って、美味しいものをみんなでワイワイしながら食べました。今年の夏は地域のお祭りに参加して「お神輿を担ごう」って言っているんです。僕が一番楽しんでますね(笑)。僕が本気で楽しくないと、参加するみんなは楽しくないと思っていますから。でも、彼らがそういうことができる場所って少ないんですよ。遠目で見てるだけだったり、親御さんも「うちの子はいいです…」って遠慮したりね。

障がいがあったってお神輿担いでもいいじゃないですか。そういう当たり前のことを当たり前にやらせてあげたい。月ごとに何か1個楽しみを作りたいなと思っています。それが楽しみで日々の原動力になり、仕事や勉強も頑張れると思うんですよね。私達も同じですよね? 彼らも、今週仕事や勉強を頑張れば週末は皆に会える、友達とおしゃべりができる、サッカーができるって楽しみなんですよ。「こんなことがあったんだ」「あんなことがあったんだ」って。そういうのが彼らも楽しいんだと思います。だから練習に来るとみんなおしゃべりです(笑)。「練習するぞ」って言っても「昨日何々がどうした―」みたいに始まって一斉に話しかけられています。親ではない仲間にも話したいことがいっぱいあるんですよね。今年は合宿に行こうって言っているんですよ。もちろんサッカーはやりますが、仲間と一緒にご飯食べて、お風呂入って、花火や枕投げしてっていうのをやりたいなって(笑)。中々ハードルは高いですけどね。彼らと一緒に過ごしていると本当に楽しいんです。

ADISCを運営することで親御さん同士のコミュニティも生れ、とても良い場所になっています。たとえば、障がいを「当たり前のことが当たり前にできる場所」を作りたい持った子どもの進路について悩んでいる親御さんが、その同じ悩みを経験してきた方に話を聞ける。先輩たちから、実体験を聞いて「大丈夫だよ」って言ってもらえると安心するじゃないですか。同じ悩みを経験してきた人と話せるとストレス発散になるし、安心するんだと思います。いくら福祉を学んだ人が「ああでもない、こうでもない」って言っても、説得力が無いんですよ。同じ立場ではないしね。でもその悩みを実体験として経験してきた親御さんが言うと説得力が違います。当たり前ですよね。

 

「特別」じゃなくて、「普通」に接すればいいんだと思います

特別じゃなくて、普通に接すればいいんだと思います参加者には12歳から40歳の方がいます。なので、接し方はその方の年齢や性別によって変わりますが、別に「障がいがある」とかではなくて普通に接して、普通にくだらない話をしているだけです。「障がいに目を向けるのではなく、その方自身に目を向ける」ことが大事なんだと思います。

彼らにはネガティブなことや曖昧なことは言わないようにしています。練習をする上で指示の仕方も「あっちのゴールだよ」って言ったら「どっちだよ」ってなるので、ADISCではゴールを色分けして。「黄色のゴールだよ」とか「赤いコーンのところまでね」とか。視覚的にも分かりやすいように配慮をします。曖昧な言葉ではなく、はっきりと伝える。ときには身振りや手振り、お手本を見せたりね。それと誰に向かって話しているのか分かるように名前をちゃんと呼びます。あと、自分がされて嬉しいことは積極的にやっています。普通のことですよね。

サッカーって「イエローカード」「レッドカード」ってありますよね。ファールしたらイエローカード、それ以上やったらレッドカードで退場だよって。「やってはいけないこと」に対してカードを出すんです。だからADISCでは「やったら良いこと」に対して出す「グリーンカード」というのを使用しています。良いプレーだけではなく、あいさつが上手にできたとか、仲間に優しく出来たとか、素敵な行いに対してグリーンカードを出すようにしています。誰しも褒められたら嬉しいですよね。彼らも褒められたいから頑張るんですよ。勇気を出すんです。その行動に対して仮にそれができなくても、それを「やろうとしたこと」、「チャレンジしたこと」に対してグリーンカード出しています。褒められるプレーや行いが分かれば「またやろう」ってなりますからね。ただ、乱発しないようにはしてますけど(笑)。

 

足立区でサッカー大会を、やります!

練習が終わった後に皆でおいしいご飯やお酒を飲むことが原動力になっています(笑)。あとは彼らが試合で点取ったとき本当に嬉しかったし、皆が喜んでいる顔見るのは嬉しいですね。

ADISCを結成する際に、0から1を作る作業は大変でしたが、そこからは賛同してくれる仲間も増えたので、1から10は早かったと思います。実はジャージやサッカーボールも寄附なんです。僕がこういうことやっているというのを聞いて、「じゃあ協力するよ」って幼なじみの友達が寄附してくれました。お互い忙しく1年に1回会うか会わないかの地元の友達ですけど、ときにはスタッフとして参加してくれています。もちろん区の職員の皆さんの協力もあるので、とても心強くてありがたいです。どんどんつながりが大きくなっています。これが足立区だけじゃなくて近隣の区だとか、各地に広がって全国で仲間が増えていけば自然と「共生社会」というものにつながるんじゃないかなと思います。よく「すごいね」って言われるんですけど、全然すごくないんですよ。好きだからやっているんですよ。楽しいからやっているだけです。

コミュニティを区外にも広げて近い将来「ADISC」主催で、足立区で「知的障がい者サッカー大会」をやりたいなと思っています。いや、絶対やります! こういうのは口に出して言っとけば、叶うと思うんですよね。

足立区でサッカー大会を、やります

 

 

鵜沢さん

鵜沢 勝さん(48歳)

平成30年にサッカークラブ「ADISC」設立
区と連携し、障がいのある方のスポーツ推進に尽力している

 

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Enjoy Sports みんなで楽しく、スポーツしようよ‼

Enjoy Sports みんなで楽しく、スポーツしようよ‼ 

「あだち広報7月10日号」では、区内で障がいのある方が活動している団体のうち、3つのスポーツ団体の代表者と参加者へのインタビューを掲載しています。本ページでは、紙面で載せきれなかったそれぞれの想いや参加してみての感想などをご紹介します。

 

スポーツクラブ つばさ

  • 主な活動場所:スポーツクラブ つばさ(保木間4-53-12)
  • お問合せ先:03-3859-1283

NPO法人つばさの会が運営するトランポリン教室。会員数約200人。年少~成人の発達・知的・身体障がいのある方が所属。

NPO法人 つばさの会 理事長 齋藤 安江さん

1.障がい者との出会いは“飛び入り参加”

平成5年、総合スポーツセンターで「ごっちゃらあず(指導員の集まり)」としてトランポリンをしているとき、隣でリトミックをしていた作業所の利用者が飛び入りでこちらのトランポリンを跳び始めました。これが私たちと障がい者との出会いです。

このとき作業所の職員さんは止めに来ましたが、私たちは「どうぞ、跳んで行ってください」という感じで接しました。この出来事をきっかけに作業所の方から「重度知的障がい者が取り組めるスポーツが少ないけど、トランポリンならできそう。作業所の利用者にトランポリンを教えてもらえないか」という話があって。ごっちゃらあずのメンバーは作業所から提案があったときも、みんな快く「良いよ」と言ってくれて今に至ります。

2.障がい者も指導できる、指導したいという人を育ててほしい

先日、東洋大学の助教授の方がスポーツクラブつばさの様子を見学していきました。その方は障がい者スポーツ、特にトランポリンにスポットをあてて研究したいということで見学に来たそうです。それを聞いて私がその方に伝えたのは、「トランポリン競技経験者は競技スポーツを教えたいという想いがあり、障がい者を教えたいという人はなかなかいない。でも、障がい者を教えることも楽しいんだということを伝えて、障がい者も指導できる、指導したいという人を育ててほしい」とお話ししました。

3.障がいのある方の受け入れに関心がある方へ

参加者の中には、昔は唾を吐いたり奇声を発したりする方がいました。それも今では見られなくなったけど、それはトランポリンが好きだから。好きだから自分を落ち着かせようと努力できるんです。障がい者の人たちがわからない、できないと思ったら大間違いで、それだけは理解してもらいたいです。

今、障がい者と接点がなくて壁を感じている人たちもいっぱいいるかもしれないけど、接するとそういうのはなくなると思う。なので、ボッチャなどのパラスポーツに顔を出してみてほしいです。とにかく壁を作らないで、なんでも入っていくと良いと思います。興味をもっていろんなところにどんどん入っていってほしい。障がい者は素直なので、こちらも素直に目を見て接すれば自然と壁は取れてきます。障がい者と関わればその人たちの素晴らしさがわかる。だから私はこうして続けられています。

参加者:石川航大さん、石川由美さん(母)

参加者:石川航大さん、石川由美さん(母)

余暇時間に楽しみを

学校終わりの余暇に楽しみを持たせてあげたくて入会しました。どうしても親が付きっきりになってしまうし、だらだら過ごすのを変えたいと。
入会後、トランポリンを好きになって毎週楽しそうに笑顔で参加しています。また、体幹がしっかりしたし、「火曜日はトランポリンだからこの日は頑張るんだ」とか、曜日感覚が身についたと感じます。
そして、いろんな先生から教わりますが、トランポリンというテーマは同じなので、先生によって教え方が違っても言葉が入りやすく、コミュニケーションの幅が広がったと思います。
それから、いろんな見方があるけど、どうしても障がいのある子どもと親では狭い世界に入ってしまいがち。世界に私とこの子しかいないと思ってしまうくらい追い詰められることが必ず1度はあります。このトランポリン教室では親同士でも話せるので、情報交換や気分転換にもなると思っています(母・由美さん)。

 

伊興彰風(いこうしょうふう) クラブ

  • 主な活動場所:伊興中学校
  • お問合せ先:090-3098-7885

保護者主体で運営するフライングディスク※団体。会員数16人。年齢を問わず知的障がいのある方が所属。
※...円盤を投げてゴールに入った回数(アキュラシー)や飛距離(ディスタンス)を競うスポーツ

 

伊興彰風クラブ 代表 赤松佳枝さん

伊興彰風クラブ 代表 赤松佳枝さん

1.親は親なりにできることを

設立は21年前。通っていた中学校の特別支援学級の先生がフライングディスクをしていて、「高校に行ったら体を動かす機会が少なくなるので余暇時間に体を動かせるように」、というところから始まりました。当初は支援学級の卒業生や保護者、恩師がメンバーで、それからは紹介や先生の転任先の学校からなど、輪が広がっていきました。
4年くらい前からは、保護者主体で活動しています。親は素人ですが、数名の親が審判の資格を取り、大会運営や東京都のフライングディスク協会の手伝いなど、親は親なりにできることをやっています。

2.誰でもできるスポーツ

「10枚のうち何枚ゴールに入ったか」「どれだけ遠くに飛ばせるか」。フライングディスクはルールが単純なので、知的障がい者にも取り組みやすいスポーツだと思います。どんなに障がいの程度が重くても、耳や目が見えなくてもできる。手からディスクが離れればそれで競技として成り立つので、誰でも長く続けられます。この団体を立ち上げてくれた先生は、「このスポーツはほかのスポーツと違い、年齢を重ねても取り組みやすいスポーツなので、自分はこれを中学校時代から経験させたい」という想いがある先生でした。

3.大事なのは続けること

きっかけはなんでもいいので、まずは仲間を作って、続けてください。続ければその先に得るものがある。まずは一緒に歩める仲間がいるのが大事だと思います。
保護者主体になって、最初は「何ができるのか」と思ったけど、今までの経験を見様見真似でやって。時にはほかの団体の指導者の方が気にかけて投げ方の助言をしてくれたり、イベントに行かせてもらったり。周りの助けがあるのもこつこつ続けてきたから。今年度、保護者主体になってから初めて全国大会の予選を迎え、数名の参加者が代表に選ばれました。親だけでも全国大会にも出られることが分かって、一度は解散の話が出たこともあったけど、続けてきて良かったと思えます。

参加者:松﨑 大喜さん

参加者:松﨑 大喜さん

ディスクを投げるのも、友だちと話すのも楽しい

21年前に団体ができたときから参加しています。月2回活動していて、ディスクを投げたり友だちと話したりするのがすごく楽しいです。平成26年には、飛距離を競う「ディスタンス」という種目で全国大会に出場して、長崎県に行ったこともあります。

 

スマイル・メイツ

スマイル・メイツ

  • 主な活動場所:勤労福祉会館(綾瀬プルミエ内)
  • お問合せ先:https://smilemates.ioc.link/
    ※問い合わせフォームあり

保護者が運営するダンス団体。会員数26人。年齢を問わず発達・聴覚・知的・内部障がいのある方などが所属。

 

スマイル・メイツ 代表 長谷川美和さん

1.いろんな方に支えられています

元々は小学校の支援学級のお母さんたちが立ち上げた団体が転身して「スマイル・メイツ」ができました。“みんな笑顔で楽しく活動できるように”という願いが込められています。 保護者が中心となって活動している団体ですが、大学生が先生として協力してくれています。これも、保護者が大学に直接交渉してくれて、大学生との関係はもう10年以上続いています。今年からはほかの区のダンススクールの先生も協力してくれていて、本格的な練習を行うことで良い動きができるようになっていると感じます。こうしてメンバーが楽しんで参加できるのも、いろんな方の支えがあってこそだと思っています。

2.「よく来たね」と気軽に声をかけてくれる人の存在

私の子どもも入会していて、ダンス発表のためにダンスの練習をして、人前で舞台に立ってやるということに、本人は喜びを感じているようです。これはほかのメンバーも同じで、ただやるだけでなく目標に向かってやろうねという気持ちで取り組んでいると思います。
入会後の変化として、うちの子は協調性がすごく出たかなと思います。わがままな側面があったのですが、みんなの中でいると泣かないでなんとかやっていこうと思えるのかもしれません。それに、親が言うと納得しないことでも、他の親御さんから諭されると落ち着くことがあります。学校の先生とも違っていて、気軽に「よく来たね」と声をかけてくれる人がいるのは良いことだと思っています。

3.子どもたちの笑顔のために

サークル的な団体なので、場所や人の確保などいろいろ苦労があります。でも、私が楽しむのはもちろんですが、子どもたちの笑顔のためにという気持ちがまずあります。子どもたちが笑顔で余暇時間を過ごしている姿を見るというのが一番の喜びになります。
これをやったからこの子がすごく変わったかといえば、必ずしもそういうわけではない。でも、社会性や協調性といった大事なことを学んでいってほしい、そういったことを感じられる場だと思います。スマイル・メイツのような学校や職場以外の場は、障がいのある子にとってはすごく大事だし守りたいと思う。これから、障がいの特性に合わせて何か思いついてやってもらえる団体が増えると良いなと思います。

参加者:沖花広幸さん

リーダーとしての責任を

スマイル・メイツには中学2年生の時に入ったので、もう16年くらいダンスを続けています。4歳のときに有名アーティストのダンスを見て衝撃を受けてダンスに興味を持ちました。元々子どものお世話をするのが大好きだったので、スマイル・メイツに入ってみようかなと思い、入会しました。
前は学校に行くだけであまり楽しいと思えることがなかったですが、ダンスが始まってからは友だちができたので良かったです。先生やお母さんたちとも喋る機会もあるので、コミュニケーションを取れる機会が増えました。僕にとって大事な場所になっています。
リーダーの1人になった今、先生がいないときにどうするかを考えるようになりました。自主練で何をするのか、みんなができるものを頭の中で考えて指示しています。それをしないとリーダーじゃないかなと思って。責任感を持って自ら引っ張って取り組んでいます。

 

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