ホーム > 文化・スポーツ > 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会 > オランダ連携プロジェクト > 足立区「GAME CHANGER」にインタビュー第一弾
ここから本文です。
公開日:2021年11月19日 更新日:2022年2月16日
第1回目は長谷川勝美副区長にオランダ連携プロジェクト立ち上げの頃の話や、リオパラリンピック卓球金メダリストとのラリー対決、今後のオランダ連携プロジェクトについてお話をお聞きしました。
2013年に東京2020大会の開催が決定し、足立区でも海外の選手団の練習会場への立候補や、事前合宿の誘致を模索していましたが、なかなかうまくいっていませんでした。そんなとき、日本スポーツ振興センター(JSC)からオランダがオリンピックの開催都市である東京で、「パラスポーツで社会を変える」をキーワードに地域の課題をパラスポーツを活用して解決していくプロジェクトを実施すると聞いたんです。足立区にも、障がいのある方がたくさんいらっしゃるので「パラスポーツ社会を変える」という言葉にとても魅力を感じました。「ぜひ!足立区でそのプロジェクトをやりたい!」と思いオランダ連携プロジェクトへの立候補を決めました。
オランダ連携プロジェクトには、足立区を含めて10団体が立候補しました。私は、当時政策経営部長として、足立総合スポーツセンターでオランダオリンピック委員会・スポーツ連合(NOC*NSF)の皆さんに足立区のこれまでの障がい者スポーツの取り組みなどをプレゼンしました。結果がでるまでは、とてもドキドキで、「だめだったら、私のせいかな、責任感じちゃうな…」と思っていました。
結果は皆さんご存知のとおり、足立区、江戸川区、西東京市がオランダ連携プロジェクトの参加自治体に決まりました。選ばれたときは本当にうれしかったですね。足立区にとって東京2020大会のレガシーになればと期待していました。
オランダ連携プロジェクトでは、地域スポーツミーティング(※1)に参加したことが印象に残っています。ミーティングには、区民のパラアスリート、スポーツ推進委員、障がい者施設の職員等、普段一緒に話をあまりしない人たちが1グループに10人程度集まってディスカションするのですが、参加者の立場によって様々な意見が飛び交い、新しい気づきがたくさんありました。例えば、障がい者施設の職員さんは「作業所に来る障がい者の皆さんに対しては福祉的な面でサポートすることしか見ていなかった」、「障がいのある方がスポーツをするという発想は全くなかった」と話していました。また、スポーツ推進委員さんは、「障がい者向けのスポーツに対してどのように関わっていけばよいのかわからない」と言っていました。
これに対し、パラアスリートは「皆さんが思っている以上に私たち結構スポーツできるんです!」、「例えば視覚障がいがあり、社会との関りが少ない人がいたら教えてください。視覚障がいがあっても楽しめるサウンドテーブルテニスを紹介しますから!」と障がい者とスポーツの関係について、新たな視点を提示してくれました。
地域スポーツミーティングを通して普段、意見交換をしない人たちがディスカッションすることで新しい気づきがあり、この気づきこそがオランダのスポーツ・サービスポイント(SSP)(※2)を参考に2020年9月立ち上げた「あだちスポーツコンシェルジュ」の原点だと思いましたね。地域スポーツミーティングをできたことが、オランダ連携プロジェクトの資産の1つだと言えますね。
(※1)地域スポーツミーティングとは、区内を6ブロックの地域に分け、各地域のスポーツ関係者(スポーツ推進委員や施設の指定管理者、総合型地域クラブスタッフ、障がい者アスリート、障がい者施設職員、医療関係者など)が集まり、障がいのある方への運動・スポーツ推進を議論する会議
(※2)スポーツサービスポイント(SSP)とは、障がい者がスポーツをしやすい環境をつくるためにオランダが取り入れている仕組みのことです。障がいのある方がスポーツをやりたいと思ったときに、その方にあったスポーツ施設、団体を紹介する相談窓口です。
地域スポーツミーティングの様子
2017年のオランダとの交流では、当時パラリンピックを2連覇していたケリー・ファン・ゾン選手(パラ卓球、女子クラス7【立位】)と卓球のラリーをしました。実は、私は長年卓球をやっていまして、パラリンピックのチャンピオンがどんなボールを打ってくるのか本当にワクワクしていましたね。実際にラリーをしてみると、ボールを通してケリー選手も卓球が大好きなんだなと強く感じました。本気の「バックハンド」はさすがに打ち返すことが難しかったです。
一緒にいた中学生の生徒に「バックハンドを教えてあげてくれないか」と頼んだところケリー選手は、「ちょっとだけだよ」と立ち上がり、45分間くらいずーっとバックハンドの指導をしてたんですよ。全然ちょっとじゃないんですよ。私とのラリーは、疲れたといって座っていたのに!(笑)。指導する姿を見て、ケリー選手はやっぱり卓球が大好きで、同じように卓球が大好きな子どもを教えることはもっと好きなんだろうなと思いましたね。オランダからの長時間の移動で疲れている中でも、熱心に指導しているケリー選手の姿に心を打たれました。障がいの有無に関わらず、スポーツを通して同じレベルでコミュニケーションがとれる。スポーツの魅力を改めて感じました。
ケリー選手とラリーをする長谷川副区長(左)
「パラスポーツで社会を変える」っていうのはまさにこのプロジェクトのテーマですね。オランダでは、様々な個性のある人たちが社会の中で同じように生きていける1つのツールが「パラスポーツ」なのかなと思います。オランダ連携プロジェクトを通じて、足立区が共生社会の実現に向けて一歩踏み出したんだとこれからも言えるように様々な課題に対して取り組んでいきたいと思います。
2022年3月31日をもって、オランダ連携プロジェクトは終了しますが、オランダとの交流は今後も続けていきたいと考えています。特に足立区では、オランダ連携プロジェクトが縁で「スペシャルクライフコート」が2020年11月1日に足立総合スポーツセンターにオープンしました。このコートの開設をきっかけにさらにオランダ皆さんや、地域の皆さんとの交流を広げていきたいと思っています。
スペシャルクライフコート
こちらの記事も読まれています
お問い合わせ
このページに知りたい情報がない場合は