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公開日:2018年6月7日 更新日:2020年8月4日

【匠の伝承】この仕事は、手の感覚だけが頼りです

江戸指物岡一夫

釘をほとんど使わないで作る江戸指物一筋50年の飯岡一夫さんの技を支えているのは、自身の手の感覚です。

時代を越えていける確かな腕がある

今世の中にはたくさん物が溢れているでしょ。せっかくいい職人がいて、すばらしい商品があるのに、値段が安いとかそんなことで物の価値が決まっているような風潮がある。手間がかかるぶん値段の高い指物がなかなか評価されない時代になってしまった。うちも祖父のころは、家具や小物なども作っていたけれど、結局方向転換せざる得なくなって、私は神具一筋ですよ。

いい物をいいと感じることができる世の中であってほしいとは思うけれど、どんな時代であっても自分には腕がある。お客さんにどんな注文をもらっても自分ならできると思っている。要はね、納得してもらえる商品を自分が作れるかってことが大事なんです。


社の前に向き合うと感じる重厚さ。「人が手を合わせるものだから、手は抜けない」


洗練されたラインは飯岡さんに調整された鉋(かんな)で生みだす。

“紙一枚”の世界に魅せられて

こうね、木を手に持った瞬間に手が覚えるんですよ。指物は小さなパーツをホゾと呼ばれる凹凸で組んでいくものだから、個々のパーツが正確にきっちり作られていないとダメなんです。ちょっとでも削りすぎたら最後、木は元に戻りませんからね。ミリだとか言っている場合じゃない、板と板の隙間なんてせいぜい紙一枚程度です。その微妙なさじ加減を自分の手の感覚だけで調整していく。だから同じ工程は全部いっぺんにやっちゃうね。一晩寝たら感覚がズレてしまうくらい繊細な技なんです。

物を作ることがとにかく好きな子どもでした。小学校の時に工作の宿題で、家の模型を作って持ってったら先生が「子どもの作品とは思えない」って信じてくれないの。先生、家まで見に来ましたからね。私は自慢の道具を見せて先生を納得させましたよ。親父?親父はおかしかったみたいで、ただ笑ってたな。

仕事がね、すごく好きなんです。だから苦しいとか嫌だとか思ったことないですね。
(文:吉川麻子影:蓑輪政之)

江戸指物とは

指物とは、釘を使わずに木と木を組み合わせて作る家具・調度品をいいます。朝廷用や茶道用として発展した京指物に対して、武家・商人や江戸歌舞伎役者たちに使用された江戸指物。木目をいかし、きゃしゃな直線美を表現することが粋とされました。

 


飯岡一夫さん

1944年荒川区生まれ。祖父の代から江戸指物を営む家に生まれ、10歳のころから仕事を覚える。特に父親の代から手掛けはじめた社や鳥居などの神具が得意。近年の住宅事情に合わせ、小さな社を安置する厨子も多数手掛けている。

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