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公開日:2021年5月7日 更新日:2021年5月7日

「足立区パートナーシップ・ファミリーシップ制度」表紙画像

パートナーシップ・ファミリーシップ制度

 

足立区では「足立区パートナーシップ・ファミリーシップの宣誓の取扱いに関する要綱」を制定し、4月1日から施行しました。戸籍上同一の性の方、戸籍上の性に関わらず、自らが認識する性が同一の方などが、パートナーシップ・ファミリーシップを宣誓された際、区はその宣誓を受領したことを証明します。

性の多様性に対する理解など、一人ひとりが尊重される社会の形成に向けた取り組みとして開始した本制度。今回、パートナーシップ宣誓第一号のお2人にお話を伺いました。

足立区パートナーシップ・ファミリーシップ制度

 

【宣誓第一号のお2人】

長村(ながむら)さん:子育てをしてる、またはしたいLGBTQ※をサポートする「一般社団法人こどまっぷ」共同代表。多様な街、新宿2丁目で子どもから大人まで誰でも来ることができるお店「足湯cafe&barどん浴」など、複数店舗を経営。セクシュアルマイノリティの人を中心とした居場所づくりを行っている。

茂田(もだ)さん:「一般社団法人こどまっぷ」メンバー。「違い」をテーマにした絵本「あおいらくだ」の著者。

 

※…Lesbian(レズビアン:女性同性愛者)・Gay(ゲイ:男性同性愛者)・Bisexual(バイセクシュアル:両性愛者)・Transgender(トランスジェンダー:生まれたときに割り当てられた性別と、自分の認識している性別が一致していない人)・Questioning(クエスチョニング:自分自身のセクシュアリティを決められない・決めない・分からない人)の頭文字。近年は、LGBTという枠に当てはめるのではなく、より広く人々の「性的指向」(Sexual Orientation)と「性自認」(Gender Identity)に着目し、その頭文字をとり、SOGI(ソギ・ソジ)と呼ぶ動きも出ています。

「足立レインボー映画祭」チラシ

足立レインボー映画祭

長村さん、茂田さんのお2人が「公益信託あだちまちづくりトラスト」を活用し、LGBTQに関連した映画祭を開催!

【日時】2021年6月19日 (土曜日)、正午~午後7時
【会場】東京芸術センター21階 天空劇場(足立区千住1丁目4-1)
【申込】「足立レインボー映画祭」専用サイトよりお申し込み下さい。

※先着順。すでに受け付け中のため満席の場合あり。あらかじめご了承ください。

 

パートナーシップ・ファミリーシップ制度が足立区にできたこと、実際に申請をして思ったことについて

- 「諦めなくていいんだ」と思えた

足立区役所で記念写真
パートナーシップ宣誓第一号の長村さん(左)と茂田さん(右)

 

長村さん:
私は足立区出身なのですが、地元には下町の昔ながらの気質というか、「何かあれば近所の人がみんな知っている」みたいなものもありますし、正直、差別的な発言をされても黙って飲み込んだり、逆に、存在自体ないものとして見なかったことにされたりというような空気感は少なからずあると感じていました。そういうものなのだと、自分自身でもいつの間にか諦めていました。私が子どものころに比べると、新しい建物や学校ができたり、街がきれいになったり、いろいろ変わっている地元も見てきたんですけど、人の意識ってそんなに簡単には変わらないと思います。

でも、今回の制度ができて、「ああ、諦めなくていいんだ」と思えたのです。区が寄り添ってくれる、配慮してくれるということに、とても感謝しています。そういう意味では、足立区(地元)を誇りに思う感情が生まれたというのが、今回感じたことのひとつです。

個人的なことでは、結婚式もしていたので、親や身近な友人たちには、私たちの関係性というのは明らかだったんですけれど、区に公式に認められるというのは全然違うものなのだなというのは、パートナーシップ宣誓をしてとても感じていますし、区が変わるということは、そこに住んでいる人たちの意識が変わっていくことへの希望だなって思っています。

 

茂田さん:
ファミリーシップ制度(都内初)も同時にできたということは嬉しいことだなと思います。もともとのきっかけは差別的な発言があったことでしたが、そこからすごく早く対応していただいて。「皆にとって住みやすい街にしていきたい」という姿勢を感じました。区のLGBTQの意見交換会にも参加したのですが、区長や職員の方の意欲ですとか、エネルギーを感じましたし、そういったところでは「寄り添い」というものも感じました。行政の人と話をすることって実はあまり無いじゃないですか。それこそ住民票を取りに行くとか、何か手続きをするときしかない。でも、今回のことで区役所って身近なものなのだなっていうのをすごく感じましたね。

 

今後どのように発展していってほしいと思っていますか?

- 制度があるだけでは意味がない。間違えながらでも理解をし合えたら

茂田さん:
今回こうした制度ができたことは喜ばしいことなのですが、まだ初めの一歩に過ぎないと思っています。制度があるだけでは意味がない。制度ができたこと自体を知らない人もいると思うので、地域の方の理解を深めていく必要があると思います。また、今回の制度は現段階では同性に限っているというところもあり、そういう意味では「Xジェンダー」という、ご自身が男でも女でもなく性別が曖昧であったり、定めなかったり、ときによって感じる性別が違うという方もいらっしゃる中で、制度に含められなかった人もいます。ですので、できればもっと多くの方々が使える制度になれば良いなと思う部分もあります。

また、LGBTQに対して、抵抗がある方、気持ち悪いという感情を抱く方もいるのかもしれません。そればっかりはパッと思ってしまう、身についたもので仕方がないのかなと思っています。でも、それを口に出すかどうか、批判するかどうかは別の話です。そこで拳を握ってわざわざ殴るのか、そうじゃないのか。一緒に生きていくというのは、私たち自身も考えていかなければいけないことでもありますが、そのために人と対話をしていくことが大事だと思っています。

その中で大切なのは、「間違いを恐れないこと」。間違えてしまうことを怖がって話をしなくなってしまう。それが一番良くないと思っています。当事者の私たちでもよく間違えるんですよ。それで傷ついたって言われることもありますし。でも、怖がって対話をしないと何も始まらない。間違えるのが怖いから話しづらくなるのではなく、間違えながらでも学びながら理解をし合えたら良いなと思います。だから、この制度がその対話のきっかけになれば良いなとも思っています。

 

パートナーシップ・ファミリーシップ受領証明カード見本

長村さん:
「差別的なことを言ってもいい」という空気感があるのは良くないです。「普通じゃない」と思っていると差別的な発言が出てきます。今は、マジョリティとマイノリティという価値観がシフトチェンジしていくときだと思うんですよね。こういう制度ができると、今までマジョリティだった「普通」だと思っていた人たちが、「普通じゃない人たち」に支配されていくように感じるのだと思うのです。でも、そうじゃなくて、誰かが誰かの場所を奪うという話でもなく、「誰もが」幸せになるための一歩なのだと思っています。

パートナーシップ・ファミリーシップ制度は特にですが、当事者でも利用することに対して抵抗のある方もいると思います。そもそも宣誓書を提出するということは、区役所にカミングアウトしに行くようなものなので。「宣誓して何になるの?」って思う方もいると思いますし、「別れるときどうするの?」という声も聞きます。でもまずは、いつでも利用できるんだっていうこと、「選べる」ということが大事。私たちが感じた様に、区が応援しているよっていうことを感じてほしいと思っています。

すべてが新たにスタートしていることなので、これから進展していってほしいなと思います。

 

 

様々な活動や情報発信を行っているお2人の原動力やめざすもの

- 「居場所づくり」は「場所」だけじゃなくて「心のよりどころ」をつくること

パートナーシップ宣誓第一号のお2人

長村さん:
私は「居場所づくり」のために新宿2丁目で「LGBTフレンドリー※」の飲食店を10年以上やっています。本来飲食店は自分がLGBTQでも、そうでなくても誰でも食べに行ける場所であるはずです。でもあえて「LGBTフレンドリー」という必要があるのは、例えば同性同士のカップルが出かけたときに、人の視線が気になって、デートも堂々とできなかったり、「友達なの?」って聞かれたら「友達です」って、思わず噓をついてしまって、もやもやとした思いを抱く様なことがあったりするからです。安心して自分でいられる場所として「LGBTフレンドリー」というものが必要なのです。本当は、そういうことも言わなくて済むような状態が一番フレンドリーな場所で、フラットに、意識をしなくていい場所ですよね。人が安心して安全にいられる場所、そういう「場所」をつくりたいんです。ファミリーシップ制度も、例えば自分の子どもが産まれたときに、後ろめたさを感じないような社会でいられるにはどうすれば良いだろうという想いがあって、制度を広めたくて様々な活動を始めました。

今回の制度ができても、なかなかすぐに人の意識が変わるのは難しいと思いますが、徐々に変えていけたら良いなって。そのためにどうしたら良いかと言うと、繰り返しになりますが、まずはそういう人たちがいるんだよって可視化されることが大事で、それを認めてくれる人が増えたら、関係性にいちいち嘘をつかなくて良くなるシーンが増えていくと思うのです。そうすれば少しずつ「LGBTフレンドリー」な「居場所」が増えていくんじゃないかなと思うのです。

※…LGBTなどの人々に対して温かく開かれた状態

 

茂田さん:
原動力という意味では、私はできることはやれば良いといつも思っています。自分ができることがあれば、誰かの困っていることを少しでも解決できれば、自分の時間や力で解決できるのであれば、やりたい。何かにすごく怒っているという訳ではなくて、「ハッピーな人が多い方が良いよね」っていう単純な発想です。「居場所づくり」の「居場所」って地域にある「場所」だけじゃなくて、「心のよりどころ」のことでもあって、それってすごく大事だと思うんですよね。人って居場所が無くなってしまうと、生きていけなくなってしまう。だから、それが作り出せたり、広げられたりするようなチャンスがあるんだったら何でもやりたいなって思っています。

 

当事者や家族、地域の方へ

- セクシュアリティは人の一面であり、「違い」こそ個性の源

茂田さん:
企業の方には、例えば自分の働く場所にLGBTQの人がいることを前提に、本当に働きやすい職場になっているのかということは考えてほしい。それを考えることは、結果的に皆が働きやすい職場につながると思うのです。お手洗いの問題なんかもよく言われますけど、男性・女性とわかれているトイレを使うのに抵抗のある人がいるかもしれないですし、使いたいトイレが今使っているトイレと違うかもしれない。あとは「お茶くみは女性に任せている」という様なことがないか、「男女の雇用に本当に差がないか」とか、そういう所も含めて、皆にとって本当に働きやすい職場になっているのかは、もう一度考えてほしいなと思っています。

人って、本当は皆違うと思うんですけど、不安なので、一緒にしたがるところがあると思うのです。生きていくのに安心感というのは大事だと思いますが、根本的に人は皆違うので、居心地の悪さとか、「違うこと」への不安はどうしてもあると思います。だけど「違う」ことに勇気を持ってほしい。例えば家族でも、知っているつもりになっていたり、「違い」があっても見て見ぬふりをして、いつの間にかコミュニケ―ションをとらなくなってしまったりということもあると思います。でも実は「違い」こそ個性の源だと思うのです。LGBTQであることも違いのひとつです。それがその人にとっては大切な一面だからこそ配慮が必要でもあるのですが、「違う」ことに対して勇気を持つということは生きるうえで重要なことだと思います。

 

長村さん:
LGBTQの問題に限らず、男だから・女だからと普通に使う人が多いと思います。どこで誰がどんな気持ちでいるかなんて絶対分からない。男とか女とかそういう所からやめることが本当に大事だと思うんですよね。

それと、LGBTQの人がいるかどうかは探さないでほしい。私たちはこうやって顔を出して取材などで受け答えもしますけど、それを皆さんに強いているわけではないですから。もちろんパートナーシップ制度も使いたいと思えば、使えばいいし、そうでなければ、それでいいし、それぞれが違うスタンスで良いと思います。カミングアウトするもしないも、個人の自由だから。もし何か生きづらい、話がしてみたいと思うことがあるのであれば、制度を使ったり、区の相談窓口やLGBTフレンドリーのお店などを利用したりしてほしいと思っています。

もし、学生の方で読んでいる方がいたら。例えば、周りから差別的なことを言われることがあっても、自分のことはそういう風に思わないでほしいなって思います。セクシュアリティは個人のただの一面ですから。それに住んでいる地域だけが、学校だけがすべてではないので。友達や同じ当事者の仲間がいなかったり、一人で抱えていたりすることがあれば、いろんな所にアクセスして相談してほしいと思います。

同じ人はいないから、皆どこかしらに人とは違うところがあるはずです。自分がほかの人と同じだと思っている所も、人と違って生きづらいって思っている所もあるはずです。だから、これはLGBTQだけの問題ではなくて「私たち」の問題なのです。

 

 

レインボーハート

 

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