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公開日:2016年5月10日 更新日:2025年8月19日
かつて、足立区を中心に栽培されていた、江戸東京伝統野菜の「千住ネギ」。千住ネギ栽培授業は今年度で10年目を迎えました。区内小学校6校の児童が「千住ネギ」の栽培に向け、プランターに種をまきました。使用する種は固定種なので、何世代にもわたって種を取り、栽培し続けることが可能です。ネギ栽培に携わった児童が種を採取し、下級生へ譲り渡していくことで、命をつないでいくことの大切さや、足立区の農業の歴史、食の大切さを学びます。
※一般に市販されている種は「F1」と言われ、一代限りの交配種です。
農業委員会では、農業委員が各学校で直接児童に栽培上のアドバイスを行います。
天正年間(1573年から1593年)に大坂からの入植者が砂村(江東区)で栽培したのが江戸のネギ栽培の始まりです。当時のネギは青い部分を食する葉ネギでしたが、江戸の気候が関西に比べて寒く霜枯れするため、土に埋まっている白い部分を食するようになり、さらに白い部分を長くするため土寄せして、現在の根深ネギの形態になりました。これが隅田川を遡り、江戸北方(足立や葛飾)で栽培され、「千住ネギ」と称されるようになりました。一般に千住ネギは、軟白部分が長くて締まりも良く煮くずれしない、熱を加えると甘みが出ることから、鍋物に好んで使われました。
一方、「千寿葱」と漢字で表記されるネギも存在します。これは、千住にある葱専門の市場で取り引きされる、白ネギのブランドのことです。かつては千住ネギも市場で扱われていましたが、現在は近県で栽培されたネギが取引されています。
区内では、かつて栽培されていた「千住ネギ」の種を入手することは困難です。そのため、平成27年に「国立研究開発法人農業生物資源研究所」のジーンバンクからいただいた固定種「千住一本太」の種を使用しています。固定種なので、生育したネギから種を取り、次年度の作付けに使用できます。
5月から7月にかけて、区内小学校6校の児童が上級生から伝達された種を校内のプランターにまきます。プランターに敷き詰めた土に手で小さな畝(うね)を作り、畝の底に等間隔で1粒ずつ種をまきます。
当日は、千住ネギ栽培に携わる児童に、「江戸東京・伝統野菜研究会」代表・大竹道茂氏より、江戸東京伝統野菜と千住ネギに関する特別授業を実施していただいています。
※授業の様子は、大竹代表のブログをご覧ください。
種まき以降、学校によって生育に差が出ます。一日中、太陽が当たる環境で育った苗は、種まきから1ヶ月半で30センチ程に成長しますが、中にはネギを好む虫に食われて全滅してしまうプランターや、昨今の異常気象によって発芽しないプランターもあります。
ネギをプランターで栽培し続けると、成長を妨げてしまうため、広い場所に植え替える(定植)作業をしなければなりません。9月から10月にかけて、プランターから各学校の畑への定植が行います。プランターと同じように畑にも畝を作るため、各学校には事前に畝を作っていただき、種まきに携わった児童が農業委員の指導のもと、畝の底に割り箸で穴を開け、プランターからネギの苗を1本ずつ取り、開けた穴の中に入れて土を軽く寄せる作業を行います。
「種は匂いがないのに、今はネギの香りがする!収穫が待ち遠しいです!」
「どのくらい大きくなるか成長が楽しみです!」
ネギを長く成長させるには、日常の管理と「土寄せ」という作業が欠かせません。畝の底に植えたネギの苗は、土の下に向かって成長するのではなく、苗の上にそびえる畝の山を切り崩す(土寄せする)ことで、ネギが上に向かって成長していきます。
各学校では、毎日様子を見る当番を決めて、水やりや肥料やりをして成長を見守ります。雑草が生えてくると、作物の成長を鈍らせてしまうため、除草するなどの日常管理が大切です。
2月から3月にかけて、収穫が行われます。収穫の授業を無事に実施できる学校もあれば、定植後、思うようにネギが育たない学校もあります。
収穫授業に続いて、次の時間割のなかで調理実習を行い、試食をする学校もあれば、収穫後各家庭に持ち帰ったりする学校もあります。
「千住ネギは、普通のネギより愛情がこもって甘くて美味しかった!」
「ネギは苦手で食べられなかったが、自分で育てたネギは甘くて美味しかった!」
「楽しかったので、また収穫したり、調理して試食したいです!」
ネギが成長すると、ネギの先端に「ネギ坊主」が咲き、ネギ坊主の中から種がこぼれ落ちてきます。各学校において4月以降に種を採取し、下級生へ伝達します。
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