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公開日:2013年1月23日 更新日:2013年1月23日

~足立大好きインタビュー~ 女優 堀口茉純さん

女優 堀口茉純さん
「面白い文化が千住から生まれた」

江戸文化歴史検定1級を最年少で取得し、「お江戸ル(お江戸のアイドル)」の愛称で活躍している女優の堀口さん。「江戸を語る上で千住は欠かせない」という堀口さんに、足立区についてお話を伺いました。

情熱的な人が好き

堀口さん

「江戸」に興味を持ったのは、もともと時代劇が好きで、小学4年のときに司馬遼太郎先生の本を読んで、沖田総司に初恋をしたのがはじまり。そこから幕末が好きになって、徐々に江戸時代全般、そして歴史全体に興味が広がりましたね。次に徳川14代将軍家茂さんが好きになったんですけど、それをきっかけに他の徳川将軍のことも調べていったら、すっかり徳川ファミリーのファンになってしまいました。それが高じて「TOKUGAWA15(フィフティーン)徳川将軍15人の歴史がDEEPにわかる本」という本を出版しました。イラストも自分で書いています。

ちなみに、今の理想の男性は田沼意次。田沼意次は農村主義を重商主義に切り替えていった先駆的な政治家で好きなんです。今までに無かった発想で幕府の政治を立て直そうとしました。今みたいにネットで検索とかできないし、電話もない時代ですから、連絡を取り合うにしても実際に京都まで行ったりしなくてはいけない。その情熱って凄いなって思うんですね。一人ひとりがこの国のためにどうにかしよう、そういう意志みたいなものを感じて、面白いですね。情熱的な人が好きです。

今の若い世代に顕著なんですけど、一生懸命になるのが格好悪いみたいな風潮があるんですよね。「空気が読める」とかそういうことを気にしてしまう。「空気を読む」って言葉があるから、空気を読まなきゃって思っちゃってるんですよね。どちらかというと、幕末の人は空気を読まないんですよね(笑)。「自分はこう思う」という強い意志で行動していくので、そういうのが格好いいなと。私は時代小説で空気を読まない人の生き様を見てきたので、子どもたちに伝えたいですね、空気が読めないのは格好悪いことじゃないんだよって。

「足立ラブ」で地元に還元したい

堀口さん2

あまり理由まで考えたことはないんですけど「足立ラブ」です。自分の住んでいるところだし、やっぱり好き。商店街もいい雰囲気で下町らしさがまだ残っていますよね。新しいものもミックスしているんですけど、銭湯が多かったりとか、古いものが意外と残っていたりとか、東京なんだけど変わらずにある部分が凄く残っていて、ホッとできる。犯罪などのイメージがありがちだったんですけど、だいぶクリーンになってきて、そういう良さも伝えていきたいですね。

足立区で講座をやることがありますが、受講生の方などは、地元の子だから応援しようって気持ちを持ってくださるんですよね。地元から応援しようみたいなことが凄くあるので、自分も地元に還元したいという気持ちが強くありますし、地元の人と一緒に歴史や文化を楽しんでいきたいという気持ちが強くなりましたね。親くらいの年齢の方たちが受講者層なんですけど、それに混じって小・中学生が受けに来てくださっているので、巻き込んで、年代関係なく歴史を楽しめるようにっていう意識は常に持ってやっています。

現在、浅草寺のすぐ横にある博物館で「浮世絵ナイト」というイベントをさせていただいています。浮世絵をデジタルデータにしたものをスライドに映して部分的に拡大しながら、江戸人たちってこうやって生活していたというのをのぞき見るイベントです。ぜひ千住でもやりたいです。やっぱり足立愛が強いので、足立区で仕事がしたいという気持ちが強いです。

江戸を語る上で千住宿は欠かせない

堀口さん3

江戸を語る上で千住宿は欠かせない、重要な場所だったんです。最後の将軍・徳川慶喜は江戸を去るときに、千住大橋を渡って水戸街道の方に行くにあたり、千住大橋に足をかけたらここから先は江戸じゃないんだと振り返ったというのが歌舞伎の芝居にもなっていたりとか、なんかそういうのを考えながら歩くとまた景色が変わって見えてきますよ。

千住宿は繁華街だったんです。郊外の繁華街なので、結構羽目を外して遊べるというか。酒合戦をやったり、面白い文化が意外と宿場から発祥しています。宿場の女郎さんたちからファッションや文化が生まれたりしていますし、文化人も集います。江戸の中だと馬鹿なことができないけれども、ちょっと外れたところだからこそ酒合戦ができる。郊外で一息つけるみたいなイメージがあったのでしょうね。江戸を語る上では欠かせない場所ですね。

「江戸」が足立区にとっての財産に

東京はどんどん新しくなっていく街なので、新しい名所はできていくのですけれども、浅草なんかは、歴史遺産を掘り起こして整備して観光地化していくっていう意識が住んでいる方にもあるし、観光客にとってもそこに行けば東京の中で歴史が感じられる場所なんだっていうのがある。千住もそうなればいいなと思います。「千住街の駅」もできたし、地元の方もやっちゃばの方まで頑張って活性化させようとしているので、何かいい形で「江戸」っていうものが足立区にとっての財産になればいいなと思います。やっぱり浅草寺のように拠点があるといいですよね。浅草はスカイツリーができてからも全然違いますし。まちなみにしても昔風な景観を意識してまちづくりをしているので、思わず写真を撮りたくなるというか、東京に居ながらちょっと旅行した気分を味わえるという感じですよね。

自分の言葉で発信していきたい

今、テレビ番組とかで県民性を紹介する番組が多いですよね。他県の人って自分の県を誇らしく語るじゃないですか。私はそういうのを凄くリスペクトしています。東京の人ってあんまりそういうことを言えないみたいな雰囲気がありますよね。でも自分は、東京人として東京のいいところを発信していきたいし、さらに、足立区っていうのはこういうところっていうのを、ずっと住んでる自分の言葉で発信していかないとやっぱりわかってもらえないと思います。それが足立区に対する恩返しであると思います。

綾瀬は新撰組が来ていたまちですよね。綾瀬川で土方歳三さんが釣りをしていたという話を聞くと、まちの見方が全然違っちゃいましたね。綾瀬川というのは江戸の名所で、広重さんの浮世絵にもボケの花とかが描かれている本当に風光明媚で、自然がたくさんあって。ちょっと江戸からすると郊外なんだけれどもきれいで。綾瀬なんて凄く素敵な名前ですしね。ちょっと都会の江戸で暮らしていた人たちが郊外に行って一息つく、そういうのどかな風景だった場所なんですよね。でも今の人たちには全く知られていないので、私が一緒に行って「ここは昔こうだったんですよ」みたいなことを語っていくことが大切なのかなって思っています。

エンターテインメント的に歴史を伝えていきたい

夢はいっぱいあるんですけど、一つは、今の若い世代の方たちが当たり前のように歴史を語るようになってくれたらいいなと思います。アジア圏の留学生と話すと皆、目を輝かせて自分の国の歴史を語るんですね。それがカッコイイなと思ったんです。歴史や文化っていうのは、勉強とか授業としてだけでなく楽しいもの、現代に生きている我々が楽しめるものなんだっていう意味合いで親しんでくれるようになったらいい。そういう活動をしていけたらと思います。着物を着ているのもそうなんですけど、まず私に興味を持っていただいて、何でこの子は歴史のことをやってんのかなって調べて見たら案外面白かった、なんてことでもいいし。これは凄い夢ですけれども、子どもたちが「実は小さいころに堀口さんの活動を見て歴史が好きになったんだ」みたいなことを言っていただけたら最高かなと。

私は本も書いているんですけど、自分で脚本を書いて一人芝居の形式で勝海舟の朗読劇をやったんですね。勝海舟の手記など残っている資料をすべてあたって、彼がしゃべった言葉を拾ってきて、その言葉をそのまましゃべる新しいスタイルの朗読劇です。これだけ歴史が好きな人間が表現する舞台は何かオリジナルがないといけないだろうという思いもありまして。実際にやったら物凄く喜んでいただいて、歴史学者の方々からも、勝海舟ってそんなことを考えていたんだなんて驚かれて。史実がわかっているからこそ表現できることってあるんだなっていう可能性は感じましたね。

千住でやるとすれば千住酒合戦かな。そのときの悲喜こもごもとか、ドンチャン騒ぎみたいなものを再演したい。やっぱり史実に基いてやることで、本当なんだ、こんなことあったんだっていう感動もあるみたいなんです。宿場を核にした話って面白いものができるでしょうね。

足立区にも歴史があって、その歴史が面白くてそれが財産になって、ひょっとしたら人を呼べる価値があるものなんだっていうことを伝えていければいいかなって思いますね。私が表現する歴史っていうのは、歴史学者さんとは違っていて、芸能活動もやっているので、よりポップにエンターテインメント的に歴史を伝えていきたいと思っているんですね。その手段として、女優として、あるいは語り手としてメディアにも積極的に出ていってみたいと思っているので、楽しみにしていただけたらなと思います。

堀口さん4

旧日光街道(宿場町通り)にて

<談2012年9月18日>

ほりぐち・ますみ

江戸文化歴史検定1級を最年少で取得。「お江戸ル(お江戸のアイドル)」の愛称で女優として舞台やテレビに出演。執筆・講演活動にも取り組む。歴史上の人物の史実を踏まえてイラスト化した著書を出版。

著名人が語る!足立大好きインタビュー

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