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公開日:2021年12月22日 更新日:2023年8月18日

【初めての人にも優しい同人誌専門印刷所】

しまや出版 代表取締役 小早川 真樹(こはやかわ まさき)さん

小早川さん

サラリーマン、突然の社長就任

14年前、転機は突然訪れた。サラリーマンとして仕事をしていた小早川真樹さんに届いたのは、印刷会社の社長である義理の父が亡くなったという知らせ。

「この会社をつぶしてはいけない」

白羽の矢が立ったのが、大手企業からベンチャー企業まで幅広い経験がある小早川さんだった。実家は自営業。若いころから「いつの日か、一国一城の主になりたい」という思いがあった。全く想定していなかった未知の業種だったが、チャンスととらえ、社長就任を決意した。

株式会社しまや出版は、今年で創業53年を迎える老舗印刷会社。個人の自費出版印刷物、主に同人誌の印刷を主力業務としていた。

「自分は印刷のことはわからない。同人誌業界のことも知らない…」。

右も左もわからない中で、小早川“新”社長の挑戦が始まった。

小早川さん

印刷所

しまや出版の印刷所。様々な機械が所せましと並ぶ

活用したのは“無知なりの強み”

当時の同人誌印刷業界は、コミケ(コミックマーケット)が広く一般に認知されたことで、新規企業が次々と参入を始めていた時期だった。そのため、老舗のしまや出版は、業界で名前は知られていたものの、売り上げは低迷していた。

「しまや出版に関わる以上、会社を潰してはいけない」。そのためには、より多くの方に会社を知ってもらい、印刷依頼も増やさなければならない。しかし、一体どうしたら…。

考え抜いた末に思いついたのは「無知なりの強みを活かす」ことだった。

就任当時は、印刷依頼を行う手続きに難しさを感じただけでなく、自社ホームページや資料のわかりづらさも感じていた。「まず、自分がわかるように作ろう。自分がわかれば、たとえ同人誌の素人さんでもわかるはず」。無知であることを逆手に取り、わかりやすさを重視した。

社猫
まず、自社ホームページや資料を作り直した。特にホームページ上では、「はじめての同人誌」という漫画を掲載。初心者には複雑な、原稿作成の方法や入稿、印刷について、だれもが親しみやすい漫画にすることで、万人が読みやすく、理解しやすくなるよう工夫した。

また、実際に印刷依頼があった際の対応も、より手厚いものにした。同人誌の作成にあたり、原稿作成のアドバイスや疑問への回答など、初心者の依頼に寄り添った対応を心掛けた。他社と比較しても、ここまで細やかに対応するのは珍しい。現在、問い合わせは1日30から50件に上るが、この1件1件に丁寧に回答しているという。

そして会社のコンセプトも決めた。題して「初めての人“にも”優しい同人誌専門印刷所」。社長就任1年目のことだった。

「初心者を相手にしても利益は薄い。やめた方がいい」。そう他社から言われることもあった。しかし、「周りのみんながそう考えているなら、ブルーオーシャン(未開市場)だ」と感じた。

狙い通り、売り上げは徐々に向上し始めた。

工場前
しまや出版の工場前。自社キャラクターが並ぶ

宝物を作って宝物を納品する

同人誌は、個人が趣味で創る作品のため、原稿に不備があることが多いという。しまや出版では、不備のある原稿の顧客には1件1件電話連絡を行っている。

たくさんの時間と手間かかる作業だが、完成時のクオリティの向上、そしてお客様が考えるイメージにできる限り近づけるためだ。心を込めて作成した原稿だからこそ、ミスがあってはいけない。

「お客様から預かった原稿を印刷・製本して『宝物』に変えて納品する」と社長は語る。しまや出版がお客様のことを考え、真摯に向き合っているからこその言葉だ。
 
小早川さんと社員さん

社員とのコミュニケーションも多い

顧客からのお礼の言葉

しまや出版では出来上がった本を納品した際、本を個人が販売するイベント(コミックマーケットなど)で、お客様に直接挨拶に行くことも多い。注文を頂いたお礼と共に納品した本の感想を聞くのだが、逆にお礼を言われるのだそう。

「こんなにきれいに印刷してくれたありがとう」
「○○さんにはとても丁寧にしていただきありがとう」

その言葉に大きなうれしさを感じ、社員は率先してイベントのあいさつに行きたがるという。宝物を作る想いで丁寧に製造しているからこそ、その想いがお客様にも伝わっているのだ。「同人誌の作品作りに共感できる社員が多い。現場がしっかりとしたものを納品しているからですね」と社長は胸を張る。

作業の様子

作業の様子
一冊一冊心を込めて作業を行う。1階と2階の半分が工場で、デザインから印刷、製本まで一貫生産で本が出来上がる

アイデアを形にする推進力

近年の取り組みとして、自社出版物や自社製品も増えている。きっかけは、「社名に出版と付くのに出版社ではないという後ろめたさ」だったという。そしてお客様の依頼で本を作るだけではなく、自社製品を創りたいという想いだった。

初めて出版したのは町工場の本。「同人誌印刷会社の社長なのにコミケに出たことがないのがコンプレックスだった」と、社長個人でコミケに参加したときに作成したのが「町工場の同人誌」だった。この同人誌の評判が良かったことから「あだち工場男子」という写真集を出版。足立区の町工場に勤務する若者を取り上げたこの本は、NHKをはじめ民法各局、新聞や雑誌などにも多数取り上げられて大きな話題となった。

そして、しまや出版の特徴として外せないのは、13年前に野良猫2匹を保護して「社猫」とし、2匹の所属先として立ち上げた「癒し課」だ。

癒し課

打合せスペースのある「癒し課」
この「癒し課」は、8匹が所属する大所帯となり、近年テレビ・雑誌・新聞等に多数取り上げられて話題となっている。この「癒し課」発足10周年を記念して制作・出版されたのが「わたしたち『癒し課』に配属されました」だ。癒し課に所属した全猫が登場するフォトブックは、大きな話題となっている。

小早川さん
癒し課メンバーとの日々の面談も大事な業務

また、オリジナルのカードゲームの制作も行った。
遊びながらビジネスに必要な知識が学べる「社長!横文字で言うのは止めてください!」や、カードを使って相手を褒めまくるコミュニケーションゲームの「ほめじょーず」はテレビ・ラジオなどの様々なメディアに紹介された。お客様を満足させる「技術力」だけではなく、アイデアを形にする「推進力」も持ち合わせていることがわかる。

出版本
しまや出版の自社製品。ユニークな発想で話題になっている(写真提供:小早川真樹さん)

お客様に対する真摯な姿勢と豊富なアイデアで成長する「しまや出版」から今後も目が離せない。

社猫
かつて保護された野良猫は、今では立派な“社猫”だ
 小早川さん

5つの質問

1.出生地/千葉県鋸南町
2.足立区歴/14年(在勤)
3.足立区に来た理由/転職(社長就任)がきっかけ
4.足立区の好きなもの、こと、人/ 経営者の方や足立ブランドでお世話になっている方
5.あなたにとって足立区とは
 経営者として育ててもらった「恩返しの街」

DATA
株式会社しまや出版
足立区宮城2-10-12
03-5959-4320

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