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公開日:2021年3月30日 更新日:2023年1月5日

【思いやりとおいしいが詰まった「弁当」でほっこり】あだち配食サービス

ペコペコ亭 

山口静江さん、王季帆さん、三宅良一さん、京谷眞鈴さん(左から)

「台風や地震なんかがあると、三宅さん大丈夫かなって心配になります。家族でも、友達でもなく、お店のアルバイトとお客さんの関係だけど」

「配達に来てくれたとき、無事に店まで帰って欲しいなと思って『気をつけてね』って声をかけるんです。特に雨の日なんかはね、大丈夫かなって心配になりますね」

ふとした瞬間、だれかを思う自分がいる。

気づかないけれど、どこかで自分のことを気にかけてくれる人がいる。

もし、互いの思いが見えたとしたら、やさしさと思いやりに世界は包まれているのだろう。

そして、その思いはこの困難を乗り越える力をくれるだろう。

見守りを兼ね、弁当を届ける

「今日のメニューは、ぶりに煮物、ナムル、肉団子の甘酢あん…食べきれないって言われるんですよ、うちの弁当は」。開けっぴろげで、人情深い“千住のお母さん”のイメージを彷彿とさせるのは、千住寿町で人気の弁当屋「ペコペコ亭」社長の山口静江さん。20年以上高齢者へ弁当を配達している。高齢者にバランスの取れた食事を届けながら見守りも行う、「あだち配食サービス」発足からの協力店だ。

配達用の弁当は、お店では売られていない献立だ。ペコペコ亭の配食サービスを利用している高齢者は、約40人。山口さんは、その方々のために特別メニューを作っている。「とにかく、お年寄りが元気になるように考えています。今、野菜が高いけど、そんなの関係なくやっちゃうの」。

お弁当の写真

千住の路地を自転車で

配食サービスの弁当は、4名ほどで配達。なかには、千住にある大学に通う、学生アルバイトもいる。京谷眞鈴さんと台湾留学生の王季帆(ワンチーファン)さんは、東京藝術大学千住キャンパスに通っている。

アルバイトのきっかけは、足立区と東京藝術大学などが主催している、まちなかアートプロジェクト「アートアクセスあだち 音まち千住の縁」(通称:音まち)だった。アートマネジメントを学ぶ彼女たちは、音まち10年の活動の節目を迎える2020年に予定されていた大規模イベントを共に創る、地域の仲間づくりに取り組んでいた。音まちのアートプログラムの一つである、見慣れたまちの風景をたくさんのしゃぼん玉で一変させる「メモリアルリバース・千住」。まちの人々が踊る「しゃボンおどり」という企画に、2012年から参加していた山口さんと出会った。

「アルバイトを探しているって誘われて、即決しました」(京谷さん)。音まちの活動で、千住に馴染んでいた京谷さんだったが、配達先の入り組んだ路地に悪戦苦闘したという。「アルバイトを始めて3、4か月は、当時大学4年生だった帝京科学大学の先輩に付き添ってもらい、道順や配達するお客様のことを教えてもらいました」。

道に迷わないように、決まった時間に弁当を届けられるように、気を付けながら配達する日々を重ねるうちに、お客さんとの間に変化が生まれた。「話しかけにくいな、と思っていたおじいちゃんがある日突然、着ていた服を褒めてくれたんです。そこから毎回、服のことを話題にしてくれるようになって。おもしろいTシャツを見つけて着て行ったら、気づいてもらえなくてがっかりしたこともありました笑」。学生たちが高齢者の心を開いている。その距離が縮まっていくのが何よりうれしいと京谷さんは語る。

京谷さん

異国の祖父母に思いを馳せる

台湾留学生の王季帆さんは、ペコペコ亭が日本に来て初めてのアルバイトだった。弁当の配達を通じて様々な人々と出会ったことで、日本の文化をより深く知ることができたと王さんは話す。「最初はお弁当を渡すだけでしたが、ありがとうねって受け入れてくれるのがうれしくて。やりがいが出てきました」。「どこの国から来たの?」「どこの大学に通っているの?」そんなことを聞いてくれるようにもなった。

時に、チャーミングな一面を見せてくれる地域のおじいちゃん、おばあちゃんと触れ合うたび、台湾にいる祖父母を思い出す。懐かしい感覚に包まれるという。

おしゃべりができるようになったお客さんが入院して、配達がなくなると切なくなる。早く弁当を届けられる日がくるようにと願う。

京谷さんと王さん

コロナ禍の今、弁当でつながる

国分寺市から足立区千住に越してきて6年、「足立区、特に千住は人の関係がいいですね」と語る三宅良一さん(90歳)は、外に出て人と話をするのが大好きという、優しい佇まいの素敵な紳士だ。地域包括支援センターとのつながりがきっかけとなり、知り合いもいなかった土地で、どんどん仲間を作り、地域のボランティア活動などで充実した毎日を送っていた。しかし、新型コロナウイス感染症の拡大とともに、地域活動はすべて中止、仲間との交流は電話だけになった。

そんな三宅さんの楽しみは、月曜から金曜まで頼んでいる「ペコペコ亭」の弁当だ。配達する学生たちとの何気ない会話で元気が出る。高齢者を見守る役割も果たす配食サービスだが、いつも「気をつけて帰ってね」と声をかけ、姿が見えなくなるまで見送る三宅さんもまた、学生たちを温かく見守っている。

「ここのお弁当はね、特別なものが入っているわけじゃないけど、とてもおいしい。友人によく、3年半も同じところから弁当を取っていて飽きないのかと言われるんですよ。でも、飽きないんです。心を込めて作っているのがわかるから」。

配達の様子

配達の様子

家族でも友人でもない 特別なつながり

穴場だと思うまち、住んでよかったと思うまちランキングで人気急上昇中の足立区千住。その魅力は、都心にも県外にもアクセス抜群な立地や、古いものと新しいものが絶妙なバランスで融合している点だけではない。最大の魅力はそこに暮らす「人」にある。

コロナ禍で故郷に帰れない京谷さんや王さんを気遣って、三宅さんは実家のことを聞いてくれるという。「弁当を配達してくれる彼女たちは、かわいい孫のような存在。だから、ご家族が心配されている気持ちがよくわかるんです」と三宅さんは語る。

家族でも友人でもない、お店のアルバイトとお客さんという関係。だがそこには、互いを思いやる数々のストーリーが息づいていた。

 

ふとした瞬間に誰かを思う自分がいる。

どこかで自分のことを気にかけてくれる人がいる。

 

あだちというまちには、底ぢからがある。

ときにやさしく、ときに厳しく。

したたかに長い歴史をつむぎ、

ともに、ちから強く生きてきた。

あだちのまちの仲間たち。

 

だから今、

ふみだそう、新たな一歩を。

ともに乗り越えよう。

ここあだちから。

 

DATA:ペコペコ亭 足立区千住寿町20-5 電話03-3882-0863

地元で人気のあったか弁当(配食サービスは一食650円)

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