ホーム > 区政情報 > 広報・報道 > シティプロモーション > あだちから新聞 > あだちから新聞Vol.3 > 【あだちから新聞インタビュー】「地域の縁側を作りたい」喜田家 社長 田口恵美子さん

ここから本文です。

公開日:2023年3月27日 更新日:2023年3月27日

地域の縁側を作りたい

有限会社 喜田家 社長 田口恵美子さん

喜田屋 社長 田口恵美子さん

和菓子はみんなが笑顔になれるもの

「和菓子って、地域の縁側だと思うの。おかずでも洋菓子でもない。そこにあることで小さな子どもからお年寄りまでみんなが笑顔になれるっていうものだから」。

 

1955年に千住元町で創業。老舗和菓子店「喜田家」の2代目社長として30年以上会社を牽引する田口恵美子さんは明るく語ってくれた。

 

千住最中、東京一〇一〇(イチマルイチマル)など、自身が生まれ育った「千住」を名前に取り入れたお菓子も多く、地元への愛着を感じる。その地元愛によって地域からの提案は積極的に受け、形にしてきた。近年では、千住の古民家カフェにどら焼きの生地を卸したり、地元・東京未来大学の学生とともに商品開発を行うなど、軽快なフットワークで地元ともコラボしている。声には勢いがあり、取材中も話は途切れることなく続き、次々とアイデアが飛び出してくる。とにかく“パワフル”だ。

「この元気なまま、100歳まで生きたいなって思っているの」。

田口社長

常に笑顔で様々な話題を楽しそうに話してくれる。サービス精神の塊だ

前向きに、アグレッシブに

「10歳から父を手伝ってきて、ずっとバタバタ忙しくやってきた。高度経済成長期を生きてきたので、がんばればなんとかなると考えてしまうところがあって」。

 

1992年の社長就任以降、そのアグレッシブな姿勢を貫いてきた。現在多くの買い物客が訪れる人気店「北千住マルイ店」や「アリオ西新井店」を中心とした区内店舗を9店舗に拡大。さらに青山、日本橋、上野や東京スカイツリータウンなど区外への出店にも積極的だ。

 

「私、本質的には商売で成功したいって思ってないんですよ。本当はもっと地味なタイプの頭なの。でもいろいろな話があったら前向きに乗ってきただけなのよ。右脳派だから」。

 

この30年の間には、区外でも、看板商品のどら焼きにこだわった上野マルイ店など成功もあるが、多くの失敗もしてきたという。

 

「お菓子は売れているのにお金があんまり残らない。それが“喜田家の七不思議”と街の噂です」と豪快に笑う。

 

社長という立場上、様々な話を持ち掛けられた際、危ないからやめた方がいいと考えることもあるのだが、最終的にはそれを超えて「やってみよう」という選択をすることが多いという。そうした前向きさと行動力が、区内外の多くの人に認知される「人気の老舗和菓子店」という地位を築いてきた。

喜田屋本店の様子

喜田家本店の様子。明るい店内にはたくさんの和菓子と笑顔があふれている

喜田屋本店の様子

工場内の様子

本社の工場内の様子。多くの職人がテキパキと働く

1606

創業からこだわり続けている看板商品のどら焼き 「六どら」小倉

一方、これまで社長として数々の決断をしてきた田口さんは“占い大好き人間”だという。だが、占いの結果によって決断や行動を決めるわけではないと話す。

 

「この年齢でも(占いが)大好き。でも占いの通りに行動することは全然なくて。自分が大体『こう決めた』ってことを『大丈夫』って思える“後付け”をしたくて。要するにこっちではもう心は決まっちゃっているのね」。

やりたいことは盛りだくさん

今もいくつかの新しいプロジェクトが動き始めている。例えば千住には農業がない。それならと地方の農作物とコラボして新しい千住名物を生み出す企画を進めている。

 

また、国内だけでなく海外にも目を向ける。ロンドンには喜田家と提携する工場があり、ドイツやスペインへどら焼きを卸しているのだが、海外に店舗を持ちたいという気持ちはずっとある。コロナや円安といった社会状況に阻まれているものの、いつかは実現したいと話す。

 

こういった企画に積極的に取り組めているのも、先代である田口さんの父が職人を大事にし、理解を得てきたからだ。

 

「たとえ和菓子の売れ行きが悪くても、やせ我慢して職人には給料を払い、職人が育つような環境を作ったと苦労話を聞いています」。和菓子は日本の伝統文化。それを残す使命が自分にはあるという強い意志があったという。

 

職人が誇りを持ち幸せに働けるようにしたいとの思いは、もちろん田口さんも継承している。現在従業員数は128名。田口さんを信頼し、20年以上苦楽を共にする職人も多い。工場内でも明るい雰囲気が漂うのが印象的だ。

田口さんと職人

職人一人ひとりと積極的にコミュニケーションをとることを忘れない

田口さんと職人

今後5年先を見据えて、後継者の育成にも着手している。

 

本社の工場長を務めていた19年目の職人、中西浩樹さん(39歳)は、現在「社長代理」として活躍中だ。20歳の時から喜田家で働きその真面目さを高く評価している。「中西さんはシャカリキになってがんばれる人」と田口さんは言う。

 

田口さん自身が「社長やる?」と声をかけ、就任が決まったそう。当時は突然言われ、中西さんは戸惑い絶句していたというが、社長代理3年目となる今では立派に勤めを果たしている。

 

「母性愛が強すぎる」故につい「何かしてあげなきゃ」と動いてしまうとのことだが、状況を見つつ、将来の社長を的確に導いているようだった。

今後はもっと、地元をワクワクドキドキさせたい

田口さんに今後の展望についてお聞きすると、話してくれたのはやはり地元愛だった。

 

「少しエネルギーを外に使いすぎたかなって。これからはもっと地元をワクワクドキドキさせたいって思うんですよ」。今後はこれまで以上に区や千住に目を向けていくという。

 

千住の古民家をリノベーションして、いつもチンチングラグラお湯が沸いているカフェをやりたい。実は思いを寄せている古民家もすでにある。おいしい日本茶と和菓子が食べられて人が集まる小さな地域の縁側を作りたいという。

 

「人と人を笑顔でつなぐ“コミュニケーションツール”にもなるのが和菓子」。そんな思いから発案した、田口さんの夢の一つだ。

 

「私がしっかりしてられるのは、あと1,500日くらいだからね」。

今年で76歳を迎える田口さんは、パワー全開で今日も走り続ける。

田口さん

DATA

有限会社 喜田家

足立区千住緑町1-24-20

TEL:03-3881-3303

ホームぺージ:https://kitaya.info/

 

 

こちらの記事も読まれています

 

お問い合わせ

シティプロモーション課
電話番号:03-3880-5803
ファクス:03-3880-5610
Eメール:city-pro@city.adachi.tokyo.jp

all