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公開日:2023年3月22日 更新日:2023年3月22日

江戸時代の獅子舞を若い世代につなぐ

花畑大鷲神社獅子舞保存会

藤田さんと濵中さん

花畑大鷲神社獅子舞の獅子と保存会相談役の藤田倉夫さん(右)、会員で大鷲神社権禰宜の濵中貴文さん(左)

始まりは江戸時代

テープレコーダーから流れる笛の音に合わせて舞ってみた。どうしてもうまくいかない。やはり人でなければうまくいかないのだ。人手不足解消の試みはうまくいかなかった。

 

花畑大鷲神社(はなはたおおとりじんじゃ)の獅子舞は、江戸時代の元禄期から伝わると言われる獅子舞で、「雨乞(あまごい)」「五穀豊穣(ごこくほうじょう)」「悪疫退散(あくえきたいさん)」「天下泰平(てんかたいへい)」を祈って舞われる。一人で一頭の獅子となり、三頭で舞う「天下一角兵衛流(てんかいちかくべいりゅう)」の舞である。「足立区指定無形文化財(民族芸能)」でもある。

 

大鷲神社に奉納するが、神社の獅子舞ではなく、この地域「鷲宿」の村に伝わる獅子舞で、伝授は全て「口伝」のため記録や文書が存在せず正確な系譜をたどることが困難である。

 

毎年7月の奉納の日には、福寿院から出発して、鷲宿集落内(現在の花畑六・七丁目周辺)を広く回り、大鷲神社に奉納している。奉納の舞は三頭で舞うが、笛方は数人。その舞台は大鷲神社の境内で、広さは三間四方、四隅に花笠をかぶった子どもが立ち、その中で舞う。

 

舞に使う獅子は通常「足立区立郷土博物館」に保存してあるが、現在改修工事中のため、大鷲神社の神輿蔵に保存されている。

大鷲神社の獅子

大鷲神社の神輿蔵の鷲宿獅子3頭

存続の危機

この獅子舞には、鷲宿村内の長男しか継げず、養子もダメ、女性もダメという昔からの「決まりごと」があり、いっときそれを継ぐ人が危機的に少なくなってしまった。

 

少ない人数で舞うために、笛方をテープレコーダーでやってみたのだが、うまくいかなかった。“舞”と“笛”はその「間」が大切で、笛方は舞を見て吹き、舞手はその笛に合わせて舞う。その生きたやり取りが大切なのだ。どうしても「人」でなければそのやり取りができないのだ。

 

獅子舞を次の世代につなぐためには後継者を増やすことが急務だった。

1935年頃の写真

1935年(昭和10年)頃の写真

危機を乗り超えるために

スタートは1979年(昭和54年)。「花畑大鷲神社獅子舞保存会」を設立し、組織的な活動を始めた。

 

笛が最優先という考えから、大先輩の師匠連に伝授をお願いし、舞手も笛が吹けるようにあらためて笛の練習から初めた。また口伝では継承が難しいと考え、10年近くの年月をかけて「笛曲譜(笛方の楽譜)」も作成した。

 

大きなチャレンジは、今までの鷲宿の長男しか継げない「決まりごと」を思い切ってなくしたこと。鷲宿以外の地域に住む人、女性にまで獅子舞参加の輪を広げていった。

 

また、子ども会と連携して、練習や奉納を見学してもらうなど、小・中・高校生の参加を募ってきた。

 

さらに、以前は神社に奉納する時にだけ舞っていたが、要請されれば学校の周年行事や地域のお祭りなどでも、舞う時間を短くするなどの工夫をして舞うようにした。少しでも多くに人にこの獅子舞のすばらしさを知ってもらいたいという強い思いからだ。

大鷲神社

獅子舞が奉納される大鷲神社

小学生から88歳まで

「決まりごと」を撤廃したことで、今では鷲宿以外の人や女性も舞う。また、小・中・高校生の参加を受け入れたことにより、兄弟あるいは親子で、なかには祖父・親・子と三世代にわたって活動する人もいる。「獅子をやってるんだ」と胸を張って学校の仲間に自慢する子どもたちもいる。

 

小学生は笛を担当しているが、本当はかっこいい獅子をやりたい。しかし、舞は難しく、5年から10年やらないと一人前になれないため、ともかく一緒に、楽しく練習し、地道に長く続けてもらえる工夫をしている。

 

また中学生や高校生は部活動などがあり、なかなか練習に参加できないが、大人になっても活動を続けてもらえるように、回数が少なくてもできる範囲で活動してもらっている。

 

その結果、現在保存会には最高齢の88歳を筆頭に、40名以上が所属。7月の奉納に備え、6月ごろから練習を始めている。練習の時には、いつも20名程が集まっている。

さらなる困難も

しかし、会員に20歳代、30歳代の人が少ないのが悩みである。仕事の関係や、街から外へ出て行ってしまっているということが大きい。

 

また、ここ数年は「新型コロナウイルス」の関係で、3年間活動を停止しているので、もう一度盛り上げられるのか心配でもある。

 

もう一つ、獅子の衣装や獅子頭の保存が大きな課題になっている。特に獅子頭に使う軍鶏(しゃも)の仲間の『羽』が手に入りにくくなっていて、手に入ったとしても高額になってしまう点だ。

 

さらには、その羽を使って修理したり、新たに作ってくれる職人さんが非常に少なくなっている。最近の修理でもやっと見つけて頼み込んで手入れしてもらった。

 

人手不足、新型コロナウイルス、金銭面、解決しなければならない課題は多い。

軍鶏の羽があしらわれた獅子

希少な軍鶏(しゃも)の羽があしらわれた獅子

未来にタスキをつなぐ

保存会のはっぴ

「獅子」の文字と誇りを背負う保存会のはっぴ

新たな困難がある中でも、メンバーは今後の活動について前向きに語る。

 

「他の地域に住んでいるが、子どものころから笛や太鼓の音が耳についてどうしてもやりたかったから、今参加できていることがとてもうれしく、私のような人を増やしたい」「奉納の時以外でも、学校や地域で舞うことを増やしてきたが、今後はもっと積極的に外へ出ていきたい」「街の区画整理が進み、新しい人がたくさん入ってきているので、そういう人たちも巻き込んでいけば若手が増えると思う」「金銭的な面でも補助金なども活用して何とかしていきたい」

 

思いのいくつかは叶い、これまでの努力も実りつつある。その証拠に会員には小・中・高校生が参加するなど、確実に若い世代へと“たすき”はつながっている。

 

「この活動をしていても報酬などはないが、この獅子舞は長い間、地域の人が受け継いできたもの。それを次の世代へきちんとつなげるのは今の我々の役目。だから外への発信を増やしていくことにも力を入れ、『本当に好きだからやる』。そういう人を増やしていきたい」と鈴木友行会長は話してくれた。 

藤田さんと濵中さん

藤田相談役(右)、大鷲神社権禰宜の濵中さん(左)

DATA

足立区 生涯学習支援室 地域文化課 文化団体支援係

TEL:03-3880-5986

 

 

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