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公開日:2021年12月22日 更新日:2023年8月18日

【町工場×デザインでつくる暮らしの道具】 

足立道具店 市橋 樹人(いちはし みきと)さん

市橋さん

ほぼ何でも足立でつくれる

「足立道具店は製品はもちろん、パッケージから何から何までぜんぶ足立でつくってるんです」。足立区には町工場が多い。しかも、種類の多さ、多種多様な加工技術を持つ町工場があるのが足立区の特徴だという。「足立区のものづくりってすごいなあ、足立で何でもつくれるんなだあっていうのを、モノを通して伝えていけたらいいなって」。足立道具店で製品化したモノはまだ少ないが、「家の中のものは、ほぼ何でも足立区でつくれる」と、市橋さんは誇らしげに話す。市橋さんは、足立道具店を運営するデザイン会社「カブ・デザイン」の社員だ。

カブ・デザインは、足立区の金属加工の町工場、福澤製作所の2階にある。主に立体物の、プロダクトデザインを手がけてきた代表の齋藤善子さんが古くから仕事を依頼してきた町工場で、家族ぐるみでおつきあいがあったことがきっかけでここに事務所を借りた。

 

齋藤さん・市橋さん・齊藤さん

福澤製作所2階にあるカブ・デザインのオフィスで。左が代表の齋藤善子さん。右はスタッフの齊藤幾子さん

「ものづくりが好きで、職人さんと、福澤さんと仕事したくて」、十数年前、齋藤さんがドア用フックをデザインしたのが原点だという。家の中に置くものは、「ごく小さな違いで部屋の雰囲気ががらりと変わる」と齋藤さん。「福澤さんが端面(レーザーカットした面)まで丁寧に磨いてくれて」このデザインは成立しているのだそうだ。

フック フック

ブランド価値を上げるデザイン

そこまで磨かなくても、というところまでしっかりと磨いてくれる。ほんの小さな傷があっても「これは商品として出せない」と言って聞かない。クオリティへのこだわりは徹底している。

「逆にそれが信頼になる。やっててうれしいというか、楽しいというか」と市橋さん。自分たちが生み出すものに情熱を持っている人と仕事をしたいという気持ちは、仕事を重ねるほどに、ますます強くなって来る。妥協を許さないから時間もかかり、つまり、コストもかかる。「だからこそ、高くても欲しいと思ってもらえるものにしなくてはいけない。ブランド価値を上げるデザインが必要だと思っています」。今は、足立道具店のアートディレクターは市橋さんだ。商品開発から情報発信まですべてが、市橋さんにゆだねられている。

カラビナ

足立道具店の人気商品カラビナ。シンプルなデザインが魅力。パッケージも含め足立区の町工場で製作されている

スタンド

葉書や手紙、本などをたてる道具Aスタンド。つやを消しながらも金属の素材感を感じさせる機能美に足立の町工場×デザインの力を見ることができる

市橋さんの入社は4年前。通っていたデザイン専門学校の非常勤講師だった齋藤さんの声がけで、半年ほどインターンを経験。そのまま働くことに。市橋さんを迎えて齋藤さんは、若い世代に思いをつないでいきたいという気持ちが高まり、「足立道具店」に本腰を入れることに。足立暮らしが長くなり、いつのころからか、ディスられがちな「足立」をカッコよくしたいという気持ちが、齋藤さんの中にはあったのだという。

足立区がひとつの大きな工場

市橋さんは、インターンのころから、いろいろな足立の町工場の職人さんによくしてもらったという。そのころは完全に外部の人間だったのに、デザイン合宿をやりたいと言えば食堂一室を3日も貸してくれた町工場もあった。「足立区の職人さんは人情に篤いというか、やさしい人が多くて」。

それに対して自分ができることといえば「デザインをプラスしたモノをつくって(製品化して)見せること」しかない。「たくさんの工場を訪れましたが、工場を見てると楽しいんです。この工場でつくられているこの部品がないとこのスマホは、あるいはこの冷蔵庫はできない。でも、ふだんの暮らしの中ではそれは見えない。その見えない部分を製品にして見せることで、職人の技術が伝わっていくのではないか」。そう思って、足立道具店に取り組んでいる。「本当によくしてもらっているので、この人たちじゃなければ、足立道具店にこれほど熱が入ってなかったかもしれないです(笑)」。

市橋さんと職人さん

福澤製作所の職人さんと製品の相談をする市橋さん

「足立区がひとつの大きな工場」。

そんな感覚で足立道具店は動いているという。区内の町工場を、モノが、人が、移動しながら、少しずつ製品がつくりあげられていく。たとえば、足立の樹脂加工の町工場「岩城工業」さんで形が出来上がったカラビナに「刻印」を押すため、同じく足立の「坂本技研」さんのところに入れておいてください、と依頼し、夕方、市橋さんが「坂本技研」さんのところに自転車で取りに行く。「そういうローカルな動きしてますね(笑)」。

市橋さん

福澤製作所の前で

つながりを見える化する

本業のデザインを手がけながら、足立道具店は今はむしろ投資、地固めの時期だという。市橋さんが入社後、「足立道具店」のホームページも立ち上げ、いろいろな町工場と組み、一つひとつ企画・デザインし、製品化し、まだ少ないけれども販売してくれる店やオンラインストアを探し販路を広げつつある。継続して販売してくれているオンラインストアでは、定番商品となり、リピートしてくださるようになるお客さまも少なくないという。モノづくりに「デザイン」の力が加わることで、人の心が動き、モノが売れ、技術が継承されていく。

「歩みは亀のようにゆっくり」だというが、ひとつひとつ、新しい製品をつくる毎に、新しい発信をするたびに、新しい知識を取り込み、大変だが自身の中に厚みが増してくるのを感じている。現在は金属や樹脂の製品が多いが、「革製品や布製品などもつくりたい」と市橋さんの夢はふくらむ。

もうひとつ、市橋さんが仕事をするときに大事にしていることがある。それは「楽しくなきゃいけない」ということ。「自分が面白くないと、面白いものはできないですから」。最終的に自分たちが欲しいと思える、納得できるものでなければいけないと思う。そのため、2人はよくしゃべる。「歳の差はありますが、とにかく喧々諤々(ルビ:けんけんがくがく)、議論を重ね、話しながらつくりあげていきます」(齋藤さん)。

製品が少しずつ増え、このごろチームで動く機会が増えてきた。もともと足立区の町工場は相互につながっているが、それが製品の形で「見える」ようにしたのが足立道具店ともいえる。「足立道具店の製品を見た区外の人が『足立区でこんなこともできるんだ。それなら足立でつくってみようかな』と思ってもらえたらいいなと思います」。

市橋さん

5つの質問

1.出生地/伊勢原市
2.足立区歴/4年
3.足立区に来た理由/就職
4.足立区の好きなもの、こと、人/工場が多いところとその職人さん
5.あなたにとって足立区とは/生み出す拠点

DATA
足立道具店
https://adachidoug-ten.tokyo.jp/
神楽坂のAKOMEYA TOKYO in la kagū、KiKi北千住、オンラインストアでも購入できる

株式会社カブ・デザイン(KaB DESIGN INC. )
足立区栗原1-24-17福澤製作所2階
03-5831-5861
https://kab-design.jp/

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