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公開日:2023年6月27日 更新日:2023年6月29日

マッチングクリエイターが発信する役立つ企業経営情報(7月)

経営者・管理職の方へ「今時の若者」取説書

 最近、よく経営者や管理職の方から、「最近の若者が何を考えているか理解できない」という悩みをお聞きします。「ちょっと厳しく叱っただけですぐ辞める」「根性がない」、さらには「パワハラと言われるのではないかと思うと、怖くて叱れない。」という声もあります。実はこの「今時の若者」の悩みの歴史は古く、紀元前 2000 年頃のヒッタイト王国の粘土板や、古代ギリシアの哲学者プラトンの著作にも同じような記述があります。現代の中高年の方々も、自身が社会に出たばかりの時は、「新人類」と揶揄された経験がおありでしょう。

 どうやら「今時の若者」に関する不満は、時代に関係なく年長者側の問題と捉える事ができそうです。「なぜ、いつの時代も大人は若者の悪口を言いたがるのか」については、今回は言及しません。代わりに、「どのように若者に接するべきか」に対する回答例を一つ、ご紹介しましょう。

1.「今時の若者」への接し方

 以下の格言は第二次大戦前のものである歴史的に有名な人物(日本人)によるものです。

やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。

話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。

やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。

 

 この言葉は、私たちが抱くひと昔前(特に戦前)のリーダーのイメージとは異なります。「叱る」「怒鳴る」「体罰を下す」という軍国主義的スパルタ教育は、ここでは推奨されていません。また、指導者側に相手の成長段階に応じた対処を求めているところは、非常に現代的な印象を与えます。

 実はこの格言ですが、戦後アメリカの行動科学の研究成果と一致しているところが多いのです。その成果とはSL理論(状況対応型リーダーシップ)と呼ばれているもので、1977年に行動科学者であるポール・ハーシーと組織心理学者のケネス・ブランチャードによって、提唱されました。

「優れたリーダーとは何か?」という研究はそれまでも数多行われてきました。多くの定義が生まれていますが、現在では「唯一の普遍的なリーダーシップや資質は存在しない」という考え方が主流となっています。リーダー個人の資質ではなく、状況に応じて役割を柔軟に変えていくことが大事であるという考え方で、SL理論もその一つです。その考えに基づいて、現代のSL理論と戦前の格言を比較してみましょう。そして、そこから現代の若者に対するリーダーの(つまり経営者や管理職)の在り方を探ってみたいと思います。

2.SL理論について

 SL理論では部下の成熟度を4段階に分け、それぞれに対応する上司のリーダーシップを定義しています。

 

部下の成熟度1

経験が少なく自己決定できない

→教示型リーダーシップ

部下の成熟度2

仕事に慣れてきたが動機付けが低い

→説得型リーダーシップ

部下の成熟度3

仕事の能力はあるが動機が安定しない

→参加型リーダーシップ

部下の成熟度4

動機も能力も高く業務は自立して行う

→委任型リーダーシップ

 

 またそれらのリーダーシップの内容は、次の表の通りです。

1.教示型リーダーシップ

部下に具体的な指示命令を与え、仕事の達成までの進捗を細かく管理

2.説得型リーダーシップ

指示命令とともに部下の意見やアイデアを引き出すために援助も行う

3.参加型リーダーシップ

意思決定は部下が行い、リーダーは部下が目標を達成するまでのプロセスを援助する

4,委任型リーダーシップ

進捗状況の報告は受けるが、リーダーは意思決定と問題解決の責任を部下に任せる

 

3.戦前の格言との比較

 SL理論で定義されているリーダーシップと、戦前の格言を対応させてみました。

1.教示型リーダーシップ

やってみせ、言って聞かせてさせてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。

2.説得型リーダーシップ

話し合い、耳を傾け、承認し

3,参加型リーダーシップ

任せてやらねば、人は育たず。

4.委任型リーダーシップ

やっている姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。

 

 両者の対応のさせ方についてはいろいろな意見があると思いますが、「1.教示的リーダーシップ」と「4.委任型リーダーシップ」については、概ね賛成を得られるものと思います。また、格言が、SL理論のリーダーシップをより具体化的な手段で表わしているようにも見えます。

4.結論

 SL理論に基づけば、部下の成熟度に合わせた適切なアプローチを行うことで、モチベーションを高め成長を促すことができます。部下の成熟度が増せば、上司の業務負担は適切に部下に配分され、上司は組織マネジメントに注力できます。組織は効率的に運営され、成績も上がるでしょう。

 もし、「部下との関係がうまく行っていない」と感じたら、相手を非難するのではなく対応方法を変える事で、解決することができるかも知れません。戦前の格言と、30年前のSL理論とがこれだけ一致しているならば、今我々の目の前にいる若者たちにも有効な手段と言えるではないでしょうか?

(マッチングクリエイター 大﨑)

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