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公開日:2020年1月23日 更新日:2023年10月16日

足立区の遺跡と発掘調査

足立区北部には、伊興遺跡や舎人遺跡など多数の遺跡があり、私たち調査員が発掘調査を行っています。発掘調査では、遺跡がある深さまで掘り下げて、遺跡の様子を図面や写真に記録し、主に古墳時代(約1500年前)に足立区の土地に住んでいた人々の生活の痕跡などについて調査しています。

遺跡とは?

私たちが生活する地面の下には、昔の家や井戸の跡[遺構(いこう)]や、土器や石器など昔の人々が使った道具[遺物(いぶつ)]が埋まっています。昔の人々も私たちと同じ地域で生活していたことがわかる場所を遺跡(いせき)と呼んでいます。

「遺跡」には昔の足立区の歴史を知るための情報が多量に詰まっています。そのため、「遺跡」を現状のままで残し、将来まで伝えていくことが非常に大切です。

発掘調査と出土品の保存

遺跡がある地域は現状のままで残しておくことが大切です。しかし、私たちが生活するために、街中では建物の建設や水道の整備などといった工事が行われており、工事の際に地中に埋まっている遺跡が破壊されてしまう場合があります。遺跡が破壊されてしまうと、そこにあった昔の人々の生活を知る手がかりが永久に失われてしまいます。そのため、工事が行われる前に、地中に残されている遺跡を掘り下げて、手がかりを記録しておくことを目的とした発掘調査が行われています。この時に行われた発掘調査の記録のみが遺跡を知る唯一の資料となるため、どのようなものが、どの場所から、どのような状態で出土したかなど、詳細な情報を図面や写真などの形にして記録に残し、保存します。出土したものは、地域の歴史や成り立ちを解明するための遺産であり、「埋蔵文化財」として保存し、後世へ伝えていきます。

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発掘調査の風景

発掘調査の流れ

建物の建設や水道の整備などの工事が行われる前に、工事する場所に遺跡があるかどうか確認をする必要があります。遺跡がある場所は「埋蔵文化財包蔵地」になっていて、遺跡の有無を確認するために調査を行います。

表面を掘る

足立区では1.5mの深さに遺跡があるとされています。そのため、遺跡が確認できるところまで、重機を用いて、表面の土を取り除いていきます。

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重機で少しずつ掘り下げていきます

遺構を見つける

表面の土を取り除いた後、遺構を見つけるためにスコップやジョレンという道具を使って、人の手で少しずつ土を削っていきます。土を削っていくことで、土の色の違いから自然の堆積土と人為的に掘削された遺構かどうかを確認することができます。遺構の時代や種類は、遺構の形や大きさ、土層の違いである程度判断できます。

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手で少しずつ土を取り除きます

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黒い土を取り除きます

遺構を掘る

遺構が見つかった後、徐々に遺構の中の積もった土を取り除くように掘り下げていくことで、多量の土器や石器などが出土します。遺構の形や遺物を傷つけないように慎重に掘り下げていきます。遺物はすぐに取り上げられるのではなく、どの場所に、どのような状態で出土したかを記録した上で取り上げます。

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遺物の周りの土を慎重に取り除きます

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遺物が多量に見つかりました

記録する

遺構の大きさや形、深さ、遺物が出土した位置、遺構の中に積もっていた土の様子などを写真撮影や図を描くことで記録します。この記録が当時の人々の生活を知る上での手がかりとなるため、とても細かな記録をとっていきます。記録作業が終わった後、出土した遺物がどの場所から出てきたのかを記録しながら、取り上げていきます。

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発見した状態の分布図を作成しています

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測量した結果の図面を作成しています

埋め戻し

記録作業と遺物の取り上げが終わった後、掘り下げた遺跡を埋めて調査前の状態に戻し、発掘調査が終わります。

遺物の整理

発掘調査が終わると遺跡を埋め戻してしまうため、調査で見つかった遺構と遺物の記録だけが、その遺跡のことを知ることができる唯一の手がかりになります。その手がかりとなる遺物は復元作業や実測作業などの整理作業を行い、遺物の分析や調査をします。そして、遺物などの埋蔵文化財は国民共通の財産であるため、発掘調査報告書を作成することや遺物を展示することで、調査結果を公表します。

水洗い作業

発掘した遺物は砂や泥が付着しているため、ブラシを使用し遺物を傷つけないように慎重に洗い落としていきます。

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出土遺物を丁寧に洗っています

注記作業

遺物がどの場所から出土したかをはっきりさせておくために、遺物一つ一つに出土した場所を示す番号を書き込んでいきます。破片一つ一つに書き込んでいくため、虫眼鏡などを用いて、細い筆で、とても小さな字を書き込んでいきます。

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細い筆を使い、書き込んでいきます

接合・復元作業

出土した遺物の多くは割れてしまった状態のため、接合し、元の形に復元していきます。色や厚み、割れ口の形などを観察しながら、多量の破片の中から接合できる破片を見つけていきます。また、全ての破片が見つかるわけではないため、破片が欠けている場合には、石膏などを使い、欠けている部分を補いながら復元していきます。

その他

他にも、復元した遺物を観察しながら図に描く実測作業や遺物の写真撮影作業、発掘調査の成果を一つにまとめる報告書作成作業などの作業を行います。

最後に

私たちの足元には、多くの埋蔵文化財が眠っており、足立区の成り立ちを知る上で、必要不可欠なものです。この貴重な文化財を守っていくために、日々発掘調査を行い、保護と記録をしています。展示館では伊興遺跡などで出土した遺物を展示しています。出土した遺物を実際に見て、調べることで、当時の人々の暮らしなどを垣間見ることができるでしょう。

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