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公開日:2023年6月8日 更新日:2023年6月8日
足立区は2013年までに、あらゆる健康対策を総花的(そうばなてき)に進めていましたが、思ったような成果が得られませんでした。そこで足立区が注目したのが、当時、区民一人当たりの医療費が23区で最も高かった「糖尿病」。総花的な健康対策から「糖尿病対策」1本に絞った、新たな健康事業がここからスタートしました ! |
「足立区民の健康寿命は都平均より約2歳短い」。このショッキングなデータが糖尿病対策に舵(かじ)を切ったキッカケです。区の糖尿病対策のポイントは「野菜を食べること」。区民のみなさんに野菜を食べてもらうにはどうしたらよいか…。そうして生まれた事業が「あだちべジタベライフ」です。
「多くの区民のみなさんに野菜を食べてもらうことはもちろん、特に若い世代に手軽に、いつでも野菜を食べてもらうには?」。足立区がたどり着いた答えは、区内の飲食店やスーパー、コンビニなどにご協力いただくことでした ! 「 ちょっと野菜を多めのメニューにする」「サラダを先に提供する」など、それぞれができる「ベジタベ」に取り組んでくださっています。 |
取り組みの結果、事業開始からの10年間で協力店はどんどん増加 ! 現在、827店舗にご協力いただきながら「住んでいるだけで自(おの)ずと健康になれるまちづくり」を推進しています。
取り組みの紹介 |
<べジタベライフ協力店 レストラン「一粒の麦」サービス管理責任者 栗山さん、調理担当 柴川さん> |
事業発足当時からべジタベライフ協力店として運営しています。そのキッカケは、前任の施設長が竹の塚保健センターからお話をもらったことです。お店としてお客様の健康を支えることができるということで、とてもいい企画だと思い乗っかったという感じでした!あとは、当時、お店として宣伝媒体を特に持っていなかったのでべジタベ協力店になることで「お店の宣伝にもなっていいなぁ」という思いもありました。元々、野菜を多く取り入れたものを提供していたので、お店のスタンスに合っていたというのも協力に至った理由の一つです。お店で出しているものを、お客様の健康を支えることに繋げられるという部分もそうですし、それを通してお店のイメージアップにもなるという面が大きかったと思います。
「一粒の麦」は、障がいのある方に就労の機会を提供する就労継続支援B型の店舗でもあります。障がいのある方々、特に一人暮らしの方なんかは「食生活が偏りがちで野菜を摂る機会がない」ということがあるような状況なんですよね。なので、このような施設がべジタベの企画に参加することで、障がいのある方々も「野菜を食べよう」という意識を持つキッカケになれたらいいなという思いも登録当時ありました。
実際、べジタベ協力店として野菜を多く提供することで、店で勤務する訓練生の意識が変化しています。一部の訓練生からは外でもサラダや小鉢の野菜から食べるようになったという話を耳にします。「自分たちがそういうメニューを提供しているから食べてみよう」という思いがあるのかもしれません。
また訓練生は、普段は支えてもらう立場であることが多い中でお客様の健康のお役に立てるということに喜びを感じていると思います。「普段支えられていることが多い自分だけれども、ここでは人の役に立てている!」という自己肯定的な部分ですね。
べジタベ協力店になって今までよりも野菜を多く取り入れた新メニューも出すようになりました。「ベジタブルカレーライス」や「野菜たっぷりピザ」などがそれですが、どれも人気のメニューです!お客様から「具がいっぱい入っていてうれしい!」と言っていただけています。
お店で出しているランチには必ずサラダをつけて、はじめに提供する「ベジ・ファースト」も行っています。葉物の野菜が高騰していて、通常お出ししている葉物中心のサラダをお出しできなかった時期があり、葉物を大根や水菜に変えてお出ししていたのですが、その変化に気が付くお客様がいらっしゃったんです。長くべジタベ協力店としてサラダを最初に出し続けていて、当店で「最初に出てくるのはそれだ!」というところまで定着したから、サラダの具材という小さな変化にも気が付くお客様が出てきたのかなと思います。
べジタベ関連のメニューを始めたからといって、野菜が増えたという感覚やハードルがあがったというイメージはお客様にはないのではないかと思います。元々のメニューに野菜を含め、具がたくさん入っていたので!「提供している料理を通して、あくまで自然に野菜をたくさん食べるようになった」というイメージですね。野菜を食べること、野菜をひと口目から食べることを習慣づけるという狙いから見れば、「自然に」というのは理想的ですよね!
「一粒の麦」には「野菜たっぷり」というワードを入れたメニューと自然にサラダが出てきちゃうランチメニューが両方あります。普段、野菜を食べることにハードルを感じる方であっても、ランチメニューではサラダがはじめに出てきてしまうので(笑)自然に野菜を食べる仕組みができていますし、「野菜たっぷり」というワードを見て「たまには食べてみようかな」なんて思うことがあるかもしれないですよね!
お店で出しているメニューは全て管理栄養士が中心となって考えています。コロナ禍で厨房が手薄になったことをきっかけに出すことができなくなってしまいましたが、大人気メニューだった「野菜たっぷりパスタ」を提供する際にパスタの量を少し減らして野菜の割合を増やすという案も管理栄養士から出てきた案です。
「野菜たっぷりパスタ」は具のほとんどが野菜なのでカロリーが抑えめなんですよね。ほかのメニューよりもパスタの量が少なく、野菜が多いということはメニューでも示していたので「カロリーは気になるけど、デザートまで食べたいからメインのカロリーを抑えたい!」という女性に人気があったイメージです。そういった部分からも、以前よりも健康を気にする方が増えてきたのかなという印象があります。味もおいしく作っていますし、野菜たっぷりだけどそうは感じさせないボリュームがあるので満足感があるけれど罪悪感が少ないメニュー、として人気が出たのだと思います。
「野菜から食べる」ということは区内に浸透してきていると思います。習慣化してしまえば、むずかしいコトではないですからね!区が様々なところで発信しているので、色々なお店で耳にします。健康意識が高くなっているのではないでしょうか。「野菜たっぷりカレー」については、白米を十五穀米に変えるサービスを行っているのですが、サービスを利用するお客様が多くいらっしゃいます。「同じ量の白米を十五穀米に変えるだけ」なのですが、カロリーが低くなります。それを希望されるお客様が多いということは健康を気遣う意識のある方が多いということかなと思います。
野菜を取り入れることで、栄養面だけでなく料理の彩りも良くなります。見た目からも楽しんでもらえますし、お店のお食事を通してたくさん野菜を食べて健康になってほしいですね。「一粒の麦」では、おいしい野菜のメニューをたくさん提供しています。カレー・パスタ・ピザなどみんなが好きなメニューに野菜を「ちょい増し」!通常提供のナポリタンにも意外と野菜がたっぷり入っているんですよ!自然に野菜がおいしく食べられるので、ぜひ一度食べに来てください!そしてお店のファンになっていただいて、そこから野菜を多く摂って健康になっていただけたら一番嬉しいです!
<地元の青果店との連携>
食育の日(6月19日)に野菜を購入した方に、ベジタベエコバッグをプレゼント! |
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野菜のことを熟知している「八百屋」の店主が講師となり、野菜の選び方教室を開催 |
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<地元のスーパーとの連携>
食育月間に肉野菜弁当を販売 |
スーパーTANAKA旭町本店は、ベジタベライフ協力店として当初からご協力いただいているお店。大学生も買いに来ることから、「がっつりだけど野菜がたっぷり食べられるメニュー」を考案。 |
食育月間には、毎年ベジタベ店とコラボ企画を実施。お店の特徴を生かした野菜料理を競う「ちょいサラグランプリ」や、オリンピック開催に合わせ「世界の野菜料理」を提供するなど、毎年、趣向を凝らしたイベントを行っています。
ちょいサラグランプリ
世界の野菜料理
「あだちべジタベライフ」開始当初の調査*1で、男女別に見ると若い世代の野菜摂取量が少ないことが分かりました。そこで、若い世代の行動様式に合わせて飲食店やスーパー、コンビニなどにもご協力いただいています。
*1...簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)、足立区政に関する世論調査、国民健康保険加入者の特定健康診断結果などから経年推移を分析・比較
18~39歳を対象とした健診では、男性の「1/4」、女性の「1/5」が糖尿病及び糖尿病予備軍という結果があり、若い世代から健康に気を付ける必要があります。
取り組みの紹介 |
セブン&アイグループ*2と連携したこれまでの取り組み |
野菜や関連商品の売り場、客席などにPOPやのぼり旗を設置して啓発 !
*2...セブン&アイグループと足立区は区政全般に係る包括連携協定を締結している
健康なカラダは、良い食習慣から。足立区では、保育園や幼稚園の就学前から小・中学生まで、健康になるための合言葉として「ひと口目は野菜から」を徹底しています。給食を通して、大人になっても健康を保てる生活習慣が、子どもたちに身についています。 |
2008年から取り組んでいる区独自の「おいしい給食事業」。天然だしのうまみを活(い)かし、ルーやドレッシングも各学校ですべて手づくり。「おいしく残さず食べる取り組み」で、2008年には年間381tもあった残菜量は、2022年には115tまで減少。もちろん野菜もたくさん食べています。
取り組みの紹介 |
<給食でも、家庭でも「ひと口目は野菜から」>給食時はもちろん、家庭でも「ひと口目は野菜から」の習慣を身に着けてもらえるように「おうちでも ひとくちめはやさいから チャレンジシート」を作成。お子さんだけではなく、家族で「野菜から」を実践! |
給食時のあいさつは「ひと口目は野菜から いただきます」 |
家庭でもひと口目は野菜からチャレンジシート |
各学校で、サラダのトッピングなどを工夫した結果「野菜は苦手だけど、給食でなら食べられる ! 」という子も出てきました。学校と区が、子どもたちに「正しい食習慣とおいしい給食を」と取り組んできた成果が合言葉の定着や近年の残菜率の低下にも繋(つな)がっています。
<足立区立亀田小学校 北川栄養教諭>
足立区の栄養士として働くというのは私の念願だったんです!せっかく栄養士として働くなら給食に対して積極的な取り組みをしている自治体がいいと思っていました。だから、大学生の時に「足立区の給食室」というレシピ本を読んで「ここだ!」と思いました(笑)。地元は千葉の方で全然足立区にゆかりがあるわけじゃないんですけど、東京で働くことになった時の第一志望は迷わず足立区でした!その後、学校栄養士として6年間勤務し、昨年度から栄養教諭になりました。
私が足立区に配属された8年前、「ひと口目は野菜から」という声掛けは既にスタートしていましたが、年々定着度が上がってきているという感覚があります。保育園や幼稚園でも「体験から学ぶ食育」や「野菜からたべよう」という取り組みをやっているので、入学してくる新1年生にも既にそういう意識がついているんです。8年前より今の1年生の方が「習慣になっているな」という実感があります。学校に入る前からの食育の効果ですね!1年生でも習慣が身についているので、上の学年の子どもたちに関しては、もう当たり前に「ひと口目は野菜から」ですよ!野菜が苦手な子どもたちにも「ひと口目は野菜から」食べようという意識が根付いています。サラダや和え物に苦戦している子もいますけれど、みんな意識はあるんです。
子どもたちに野菜を楽しく食べてもらおうとする取り組みは色々ありますが、各校で必ず行っているのが「もりもり給食ウィーク」です。亀田小学校では期間中は毎日野菜を多めにメニューに取り入れて「ひと口目は野菜から」を呼びかけると同時に、クラス単位で目標を決めてそれを達成できたらシールを貼る取り組みをしています!ゲームのようにみんなでやってみよう!という形です。
学校によっては、スープやカレーの中に星形に型抜きしたニンジンを少し入れて「ラッキーニンジン」という企画をやっているところもあります。学校によって取り組み方は様々ですが、給食を通して、野菜に触れたり苦手意識を楽しく克服するための機会を学校が積極的に提供しています。
「野菜が苦手でも学校給食の野菜なら食べられる!」という子どもがたくさんいます!子どもたちも、ドレッシングがおいしいので食べられる!と言ってくれています。給食室で全て手作りなのでそう言ってもらえると嬉しいですね。今日も玉ねぎをミキサーにかけて一からドレッシングを作りました。あとは、トッピングもポイントですかね。カリカリに揚げたお芋を乗せたり、ベーコンやハムを入れたり、チーズを入れてみたり、色々工夫をしているので、そういうことが子どもたちの言葉に繋がっていると思っています。
給食では、サラダだけじゃなくてスープなどにも野菜がしっかり入っているので、子どもたちの野菜に対する抵抗感をなくすきっかけにはなっていると思います。野菜が苦手な子も給食だと「絶対食べない!」というよりは、「みんなも食べているからチャレンジしてみようかな」という気持ちが強く芽生えるようです。給食での体験をきっかけにして、家庭でも野菜を食べてくれるようになると一番いいですよね。
給食を通して、栄養バランスもそうですし「ひと口目は野菜から」という習慣作りもそうですけれど、健康的な食事を学んでほしいと思っています。小学生ではまだ自分で食事を選ぶ機会は少ないと思いますが、中学生くらいになると機会が増えてきますよね。そういう年齢になった時、自分の健康を考えて食事を選べる子に育ってほしいので、保育園や幼稚園から小学生、中学生まで継続して取り組んでいく中で学んでいってもらえればと思っています。
そのためにも、学校生活の原動力になるような、ちょっと憂鬱な日も給食があるから学校に行こうと思ってもらえるよう、「おいしい給食」を提供していきたいんです。そして思い出した時に、給食って大事だったんだなって気が付いてもらいたい!おいしい給食をいっぱい食べて、ゆくゆくは自分の健康を自分で考えられる人になってほしいですね。
足立の給食はおいしいといわれる秘訣は何かと聞かれることがあります。手づくりのドレッシングの話もしましたが、お味噌汁に使う出汁なんかも給食室で一からとっているんです。そういう部分がおいしい給食の秘訣で、すごいコトだなと思っています。
たまに子どもたちから「今日の味噌汁の出汁おいしい」なんて言われることもあります。給食を通して、味覚が鋭くなってますよね!そういう部分から食に興味を持ってもらうことも大事なことです。その役割を給食が担う!というのもすごい話だと思うんです。おいしい給食を提供している自治体だからこそですね。
学校ごとに栄養士がいるので、それぞれの特色が給食に出てきます。亀田小学校では、「かめっこ丼」というオリジナルメニューを出しています。私が配属になった8年前にはもうあったメニューですが、今でも大人気です。かめっこ丼は中華丼のエビとイカを抜いてその代わりにニラやベーコンなどを入れたどんぶりです。アレルギーの食材が何も入っていないのでどの子どもたちもみんなで同じものを食べることができます。人気があるので、年度当初や夏休み明け初日に出すことが多いですね!
亀田小学校人気メニューはカレー、唐揚げ、かめっこ丼です。これらのメニューと肩を並べるくらい人気なのが「カリカリポテトサラダ」です。このラインナップにサラダが入るのはすごいコトなんじゃないでしょうか!
「カリカリポテトサラダ」はその名の通りカリカリに揚げたお芋を乗せたサラダです。子どもたちにとってカリカリに揚げたお芋はちょっと特別みたいですね!中には、「普段は野菜食べられないけど、揚げたお芋が一緒なら食べられる!」という子もいるんですよ!「カリカリポテトサラダ」を出した日は食缶が空っぽですし、教室でおかわり争奪戦をしてたりします(笑)。そういう好きなメニューからでいいので、野菜が苦手な子には頑張ってほしいなと思います。
私はまだ配属されて8年ですが、それまでにいらっしゃったたくさんの先輩栄養士さんや区の人たちが子どもたちのために考えてきた成果が今の残菜率の数字や「ひと口目は野菜から」食べることの定着に繋がってきているのだと思います。月に1回、学校栄養士が集まって情報交換をする機会を区が作ってくれています。メニューの高め合い、じゃないですけど、互いに切磋琢磨しつつ支え合ってきたというのが大きいと思います。私たち栄養士もそうですが、保護者、学校、区が一緒になって子どもたちのことを考えているからこそできているのがおいしい給食事業や足立の食育ですね。
来週も、子どもたちにグリンピースのさやを剥いてもらってそのグリンピースを使った給食を出します。楽しい体験、おいしかったという記憶を通して、食に興味を持って野菜をどんどん好きになっていってもらえたらと思います。
区民のみなさんと一歩ずつ進めてきた「あだちべジタベライフ」の10年間。その成果は数字に表れ、各方面からの評価もいただきました。でもここで歩みを止めてはいけません。区民、お店、企業、団体、そして行政が一体となってこそ、目標が達成できます。さあ、次のステージも Let’s ベジタベ ! |
この10年間、区民のみなさん、野菜を提供するお店や事業者の方々と、本当に様々な取り組みを行ってきました。私たちが立てた夢のような目標も、10年間の取り組み内容や成果をみれば、いつか必ず達成できると信じています。これからも、オールあだちで取り組んでいきましょう ! |
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