ホーム > 特集一覧 > 介護の今 -現場を支えるプロフェッショナルたち-

ここから本文です。

公開日:2023年10月8日 更新日:2023年10月8日

「介護の今」

介護の今 -現場を支えるプロフェッショナルたち-

今はまだ「自分には関係ない」と思っていても、誰もがいつか直面する可能性のある「介護」。
ここでは、要介護・要支援を受けた際に利用できるサービスの一例や、現場で活躍するプロフェッショナルたちを紹介します。

 

現場を支えるプロフェッショナルたち

訪問介護

■自立した生活のお手伝い
訪問介護と聞くと、入浴や排せつの介助といった「身体介護」のイメージが強いかもしれませんが、それだけではありません。一人暮らしや高齢世帯などの場合では、掃除や洗濯、買い物代行などの生活援助も行っています。

■訪問介護の中核を担う
サービス提供責任者の業務は、派遣するヘルパーの調整や、サービスがしっかり提供されているかのチェックなど多岐にわたります。私たち自身が訪問介護に行くこともあるので、マネジメントと現場の両面がある仕事です。

サービス提供責任者・介護福祉士:増田仁美さん
佐々木ケアサービス(株) サービス提供責任者・介護福祉士
増田 仁美(ますだ ひとみ)さん

ロングインタビューを見る

訪問看護

■医療と介護の融合
日ごろの入浴や食事介助などの身体介護のほかに、体温や脈を測り、体の状態に異変がないかをチェックすることが私たちの仕事です。また、主治医の指示に基づいて点滴や痰たんの吸引など、状態に応じた医療的なケアもします。

■チームとなって支えていく
「歩けるようになりたい」「健康状態を維持していきたい」など、目標は人によって様々です。ご本人の希望を可能な限りかなえていくために、主治医やホームヘルパーなど、様々な職種と連携しながら寄り添っています。

訪問看護認定看護師:羽田雅代さん
かもめ訪問看護ステーション  訪問看護認定看護師
羽田 雅代(はだ まさよ)さん

ロングインタビューを見る

 

訪問リハビリテーション

■「動作」のエキスパート
ご本人のリハビリだけでなく、介助をする周りの方に対して、負担が少ない体の使い方の助言などをしています。生活の中でどのように体を使うと、ご本人も周りの方も楽に、安全に過ごせるかをいつも考えています。

■「できること」に着目する
私たちは皆さんの「できること」を見つけるプロです。自分の体が上手く動かないと気持ちが落ち込んでしまいがちですが、できる部分を少しずつでも伸ばせるよう、サポートしていきます。


理学療法士:大池義明さん
慈英会病院 理学療法士・認定訪問療法士
大池 義明(おおち よしあき)さん

ロングインタビューを見る

通所介護・リハビリテーション

■通所施設は大きく分けて2種類
通所施設には、日常介護がメインのデイサービスと、リハビリや医療ケアをメインとしたデイケアがあります。私たちデイケアには医師や理学療法士などの専門職が常駐して、生活介護に加えて、個々に合わせた機能回復訓練を行っています。

■介護負担の軽減にも
施設に通所するメリットは、介護をしている方にもあります。お仕事などで介護が難しかったとしても、日中は私たちにお任せいただくことで、介護をする皆様の負担軽減にもつながります。


通所リハビリテーション:木村誠さん
通所リハビリテーション「げんき」「オバマ」「きずな」
統括所長 木村 誠(きむら まこと)さん

ロングインタビューを見る

 

 

 

 

地域包括支援センター千住西 久保谷さん・戸笈さん

高齢者の総合相談窓口

地域包括支援センター千住西 久保谷さん・戸笈さん
センター長 久保谷 美恵子(くぼや みえこ)さん(右)
社会福祉士 戸笈 みどり(とおい みどり)さん(左)

地域包括支援センター(ホウカツ)は、高齢者の医療、看護、介護、介護予防の総合相談窓口です。区内に25カ所あり、介護支援専門員や社会福祉士、保健師、看護師など、さまざまな専門職がいます。私たちはたえず地域の動きをみて、現場に出向き、調整を行う相談援助職です。

舞い込んでくる相談の内容は様々で、「年齢が年齢でちょっと動けなくなってきたから、要介護認定の申請をしたい」「まだまだ元気でいたいから、何か始めたい」と、自身で相談に来る方もいれば、「会話が減った」「出かけなくなった」とご家族から相談がくることもあります。また、「近所で、もの忘れが心配な人がいる。介護サービスを受けたほうが良いんじゃないか」と地域の方から連絡がくるケースもあります。

医療機関での受診がきっかけで相談にのることもあります。かかりつけの先生から「介護申請に必要な意見を書いてあげるから、地域包括支援センターへ行きなさいといわれました」という方もいれば、「患者さんが認知症で、ひとりでの生活が厳しそうだから、ホウカツで介護申請してもらえないか」と先生から連絡が入ることもあります。

 

「自分はこうしたい」をかなえる方法を一緒に考える

ホウカツでは、内容に応じて様々な案内をします。介護認定についていえば、高齢者ご本人が納得したうえで申請することが一番良いと思います。ホウカツまで来ることができない方は、私たちが訪問してご本人を交えて介護の説明をする。そして、どのような暮らしをしたいか、考えを整理していただく。それらをふまえて、自分らしい暮らしを実現するためにどのような方法があるのか、一緒に考えます。そこから、「自分でできること」「家族ができること」「専門家にお願いしたいこと」を整理して、各種専門機関へつなげていくのが私たちの仕事です。

「年齢を重ねても元気に過ごしたい」「筋力が低下してきたけれど、寝たきりにならないようにしたい」という相談については、「初めてのフレイル予防教室」「みんなで元気アップ教室」といった運動教室や、地域で行っている自主活動などをご紹介しています。ホウカツでは「介護予防」も大切にしており、「今のうちから元気でいて、健康寿命を伸ばしていく」という取り組みを続けているんです。

「千住かわら版」の画像

地域包括支援センター千住西が2カ月に1回発行する「千住かわら版」。介護予防の講座だけでなく、地域団体の活動紹介などを紹介している。

相談のタイミングは「何かおかしい」と思ったとき

高齢者のちょっとした変化に気づくのは、一番近くにいる家族やお友達です。近くでみている皆さんが、「元気がなくなった」「会話をしなくなった」「出かけなくなった」など、「何かおかしいな」と気づいたときに、相談していただきたいと思っています。「こんなことを相談してもいいのかな」というためらいがあって、相談のタイミングが遅れてしまうことがありますが、気軽にご相談ください。相談することは恥ずかしいことではありません。ぜひ、ためらわずに担当のホウカツへご連絡いただけたらと思います。

地域包括支援センター千住西では、介護について「自分事」として考えていただくために、「晴れ晴れ教室」という独自の介護予防教室を2~3ヶ月に1回開催しており、介護保険の使い方や高齢者施設の種類、認知症にならないための暮らしの工夫などをお伝えしています。この教室で話を聞いて、晴れ晴れした気持ちになってほしいと思い、「晴れ晴れ」という名前をつけました。いままでは60代から70代の方の参加が多かったのですが、最近は80代から90代の方も来てくださっています。

自主グループの活動が大きくなることも

ホウカツ主催で介護予防教室として「ダーツ・倶楽部」という講座を行っていたのですが、その参加者が自主的に動き、ダーツに特化したサークルが4つ立ち上がりました。そして、11月に東京芸術センター21階・天空劇場を貸し切って、「シニア・交流ダーツ大会」を開催することとなりました。なんと、「東京都ダーツ協会」と千住ブロックのホウカツとの共催です。区内の住区センターにも声をかけています。優勝カップをめざして本気で勝ちに行くのも良いですし、初心者向けの体験コーナーで楽しむこともできます。駅前のダーツ場にあるダーツ盤は、自動で得点計算するものがほとんどなのですが、今回使用するダーツ盤は、自分の投げた矢は自分で得点計算するものです。これは、点数を覚えて記録する、脳を活性化するためです。

もともとホウカツが主催のダーツ教室で楽しんでいた人たちが自主的にやるようになって、それがここまで大きくなりました。こういった場が、高齢者の皆さん同士の安否確認にもなるのです。「あれ?今日はあの人来てないけれど、どうしたのかなぁ~?」って。「今度はこれるか、電話してみようよ!」と話し、お互いを支え合っているところをみて、「いくつになっても仲間ってできるんだな」というのを感じました。

自分らしく、いきいきと暮らすために

自分らしく、いきいきと暮らすために介護保険制度は自立支援が基本なので、自分ができることはまず自分でやっていただくのが良いと思います。ホウカツにご相談くだされば、こちらもいろいろな情報を提供しますが、最後どうするかは自分自身で決めていただくよう支援しています。私たちは皆さん自身がどうしたいかを探すお手伝いをしてるんです。

介護保険法のなかには「介護予防に努力する」という主旨の一文があります。なかなか介護予防に関心を持たれていない方が多いのですが、ホウカツが展開している介護予防事業への参加や、自主グループの活動も大いに活用していただきたいと思います。

さまざまな経験を重ねているからこそわかる「暮らしの知恵」「情報の引き出し」を持ち、いざというときに、その「引き出し」から出して、使えるようにしておいてほしい。そして自分の健康を自分で守れるようになってもらいたい、というのが私たちの願いです。

 

 

ページの先頭へ戻る

 

新田楽生苑 居宅介護支援事業所 白井良一さん

相談を受け、介護の全体像を決める専門職

白井良一さん
新田楽生苑 居宅介護支援事業所
管理者 主任介護支援専門員
白井良一(しらい よしかず )さん

ケアマネジャーの正式名称は介護支援専門員といいます。名前の通り介護を支援する専門職で、病院や地域包括支援センター、自治会長さん、あとは困っている本人などから「今こういうことに困っている」という相談を受ける窓口です。お話を伺ったうえで、「じゃあまずはこう対応しましょう」と対策を考えるところから始めていきます。

相談の内容はやはり健康面のことが一番多いですが、最近増えたのが、将来的な生活の不安事の相談です。「本当に家で生活が送れるのか」「どういう介護の施設があるのか」「この施設には入れるのか」といった相談が増えてきている印象があります。

状態が悪くなる前に相談を

「介護保険は、高齢になって病気などの症状が重くなってから使うもの」と思っている方は多くいらっしゃると思いますが、実はそうではなくて、体の不調を感じたときに一度相談してみて、必要であれば利用してみる、というのが一番良いのかなと思っています。なぜなら、介護保険の最終目標は、自立することだからです。「自立支援」と法律にも書かれているので、体に少しでも異変・不調があれば、その時点がベストな相談のタイミングだと思います。

ただ、現在の相談を受けている割合を考えると、「退院するから、ケアマネジャーさんを探してください」と病院から言われた方や、「本人がかなり弱ってしまっているから、ケアマネジャーさんが一回見てくれないか」と地域包括支援センターに紹介されて相談を受けることが多いので、重度化防止というよりは、すでに症状が重くなってしまったケースに対応していることの方が多いのが現状です。

本人が「今後どうしたいか」を映し出す鏡

本人が「今後どうしたいか」を映し出す鏡ケアプランとは、本人の意向に基づいて作成するものです。あくまで「何をしたいのか」「どうしたいのか」を基にして、介護サービスの全体像を映し出すものを書面にまとめたものなので、その方が「今後どうしたいか」を映し出す鏡だと思っています。

基本的にはご自宅へ訪問し、ご本人に関する情報収集を最初に行います。その後、計画を立案するためのサービス担当者会議を開催して中身を詰めていきます。作成したプランを本人やご家族様に見ていただいて、内容に問題が無ければ最後に交付します。交付して終わりではなく、月1回自宅へ訪問し、プランの内容が適正であるか確認します(モニタリング)。そこで再度見直しが必要であれば、本人のご意向を伺ったうえで調整します。このサイクルの繰り返しが、ケアプラン作成の流れです。

ケアプラン作成の際は、色々な方のご意見を頂戴します。その中でも一番大事にしているのは、やはり利用者さんのご意向です。「自分がどうしたいか」に加えて、ご家族様がいらっしゃる場合はご家族様のご意向も反映します。ただ、やはりケアプランは本人を写す鏡ですから、「本人が最終的にどうしたいか」というのが一番重要だと思っています。

 

足立区で、次の世代へつなげたい

足立区で介護支援専門員として働いて12年になります。介護支援専門員になるためには、現場の実務経験が必要です。私は専門学校でホームヘルパー一級の資格を取り、卒業してからはデイサービス、訪問入浴、訪問介護と様々な業務を経験してきました。

この仕事の良いところは、横のつながりが多くできることです。横のつながりは、介護の仕事をするうえでの最大の財産だと思っています。医師・介護・看護など、色々な業種の方と関わるにつれて、自分を助けてくださる方もどんどん増えてきました。これは、ケアマネジャーとして働くやりがいにもなっています。

足立区で介護支援専門員の仕事をずっと続けていくことも目標の一つですが、介護支援専門員の育成にも力を入れていきたい。若い方に、介護支援専門員の魅力をどういう形で伝えられるかは模索中ですが、そういう志のある介護支援専門員を増やしたいと思っています。

 

ページの先頭へ戻る

 

足立区介護サービス事業者連絡協議会 鵜沢隆さん

事業者同士で連携して、介護サービスをより良くする

鵜沢隆さん
足立区介護サービス事業者連絡協議会
鵜沢 隆(うざわ りゅう)会長

足立区介護サービス事業者連絡協議会が発足したのは平成13年で、介護保険制度が始まった翌年のことでした。介護サービスを提供する事業者が幅広く加盟しており、その数は450~470にものぼります。区民の皆様に質の高い介護サービスを提供するために、たくさんの事業者が協力しあって運営しています。

この連絡協議会は、介護業界をPRすることや、各団体との窓口になる役割を担っています。介護業界の人材不足は深刻なので、PRは非常に重要です。世間一般には「介護職は大変で、きつい仕事」というイメージを持たれがちなので、そうではなく、「介護は魅力のある職業なんだ」ということを伝えていきたい。そのためには、単発のイベントで介護職の普及啓発をするだけでなく、可能ならば学校教育の場で福祉の教育に関わって介護のことを子どもたちに知ってもらい、将来、介護職を選択肢の一つに考えてもらえるようにしたいと思っています。

 

窓口役で言えば、介護サービス利用者さんの声や業界の現状を行政に伝えたり、医師会や行政と連携する機会があれば、その調整役を担ったります。地域の中で様々な団体と連携することは、介護業界をPRするうえでも、介護業界がより発展していくためにも大事なことなので、この「連携」という点にもかなり力を入れています。

自主的に開催する研修会で、お互いを高め合う

私たちの組織は、居宅介護支援(ケアマネジメント)や訪問介護など、6つの専門部会に分かれており、会員は事業所単位でそれぞれの業種に応じた部会に所属しています。各部会が定期的に研修会等を開いていて、事業者同士の連携強化や、サービスの質を上げるための取り組みを行っています。今年度、私が部会長を務めている居宅介護支援部会では、多職種連携や主に高齢者の終末期を主眼にした意思決定支援のあり方、法改正間近の介護保険制度の勉強をテーマにしました。こういった研修会で私たちの知識やスキルを上げていって、最終的にサービスを利用される皆様に還元していくのが理想ですね。

こういった研修会の場で、事業者同士のコミュニケーションをとることができるのも大きいです。特にケアマネジャーは、どうしても利用者さんと1対1の仕事になりがちなので、誰かに相談したいときに活用できる、横のつながりが本当に大事です。コロナ禍ではリモートで研修をやっていた時期もありますが、そういったネットワークを作るために、対面型も大切にしています。もちろんリモートにも便利な部分があるので、それぞれの良さを合わせながら続けていけると良いなと思っています。

仲間の頑張りが刺激に

仲間の頑張りが自分の刺激に

令和4年度実施の「足立区高齢者等実態調査」では、「介護サービスに満足している」と答えた方が約7割いらっしゃいました。私たちとしては、残り3割の部分も改善していきたいと思っていますが、それでも良い評価をいただけたのはうれしいですね。足立区の介護事業者全体の質が良いのだと思います。皆さんの努力の結果ですね。

連絡協議会会長という立場上、色々な介護事業者の方と関わってきましたが、本当に真面目で、真摯にこの仕事に取り組んでいる方が多いです。また、協議会内の様子を見ていると、良い影響を与え合える仲間づくりができていることも高い評価をいただいている要因として大きいと思います。「同じ地域で働き、活動している仲間が、こんなに頑張っているんだ」ということを自分自身への刺激になっているのかなと思っています。

目標は「足立区で介護サービスを利用してよかった」と思ってもらうこと

介護を受けずに済むことに越したことはありませんが、もしも介護を受けることになったとしても、私たちが関わることで、「いい出会いがあったな」と感じていただけて、一緒の時間を過ごさせていただく。それが私たちの役割、目標、使命だと思っています。

それを実現するために重要なことの一つは、「介護職側に、満足して仕事をしてもらうこと」だと思います。介護サービスの質を上げていく取り組みを通して、「足立区で介護の仕事をしてよかった」と感じてもらう。介護の仕事は多種多様にありますけど、「多くの仲間と一緒にこの業界で働けて、大変なことも多いけど、やっぱり楽しい」ということを働く側にも思っていただける足立区にしたいと思っています。

働く側が満足していると、それが利用者さんにも伝わるんです。「まずは自分たちが介護の仕事の魅力に気づいて、それを表現しよう」というところに、私たちの団体が関わっていけたら良いなと思っています。

 

ページの先頭へ戻る

 

佐々木ケアサービス(株) 増田仁美さん

一人ひとりの課題をサポート

増田仁美さん
佐々木ケアサービス(株)
サービス提供責任者・介護福祉士
増田 仁美(ますだ ひとみ)さん

訪問介護で提供するサービスは、直接体に触れて援助する「身体介護」と、日常の家事を援助する「生活援助」に分かれています。

身体介護は例えば食事や入浴の介助で、入浴が難しい場合はお体を拭いたりすることもあります。トイレにお連れする排せつの介助もありますし、難しければベッド上でオムツを交換するということもあります。それから整容といって、爪を切る、歯磨きをするなど身だしなみを整えることもします。車椅子ご利用の方には、ベッドから車椅子に移るときの介助や、通院や買い物に一緒に行く外出支援などが主な内容です。

生活援助は、基本的に洗濯や掃除といった日常の家事のお手伝いです。利用者さんの代わりに買い物に行って、買ってきたものでご飯を作ったり、お薬を受け取りに薬局へ行ったりすることもあります。

本人の状態により、利用方法も様々

本人の状態により、利用方法も様々介護認定の程度に関わらず、訪問介護を利用する方は多くいらっしゃいますが、なかでも生活援助を利用する方は、高齢世帯や独居の方が多い傾向にあります。ひとり暮らしのご高齢で、外出することが難しい、といった方ですね。身体介助の方も独居の方や、高齢世帯でお世話が難しい方がよく利用しています。

身体介助に関しては、ご家族が同居している方にも多くご利用いただいています。普段介護をしているご家族が日中お仕事でいらっしゃらない、ということはよくありますので、日中の数時間お世話をしたり、デイサービスの送迎が来たときにご自宅から送り出すこともあります。

訪問介護は1日1回や週1回だけかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、そういうわけでもないんです。同じお宅にオムツ交換の介助で1日に3回、時間を空けて訪問する方もいれば、朝にお食事を作ったあと、夕方また買い物の代行に行くお宅もあります。ご本人のご希望や必要性に合わせて、訪問介護に入るタイミングも様々です。

訪問介護の中核を担う

人の役に立つ、やりがいのある仕事サービス提供責任者は、派遣するヘルパーさんの調整や、サービスが適正に提供できているかのチェックなど、マネジメントがメインです。入社時点では「初任者研修」という資格しか持っておらず、マネジメントの業務ができなかったので、現場でホームヘルパーの仕事をメインに経験を積んでいました。入社半年くらいで「実務者研修」という資格を取ったことで、それ以降はサービス提供責任者として働いています。サービス提供責任者になってからは訪問介護の現場に行くだけでなく、ヘルパーが訪問した実績の管理をしたり、請求など金銭に関わる業務があったりと、様々な業務を任せていただいています。

人の役に立つ、やりがいのある仕事

もともと介護に興味があったというわけではありませんでしたが、身内に介護が必要な人ができたことがきっかけで興味を持ち、就職活動のときにこの業界も視野に入れるようになっていました。この業界に入ることを決めたのは「仕事をするなら、人の役に立って、感謝してもらえるようなお仕事がしたい」と考えたからでした。福祉の学校に通っていたわけではないこともあり、最初は目の前のことに精いっぱいで、もう何が大変かどうかも分からないぐらいでした。

訪問介護のお仕事では、伺ったお宅でそれぞれ環境が異なりますので、そのお宅に合わせたサービスを提供する必要があります。ご本人が過ごしている環境の中でいかに良く過ごしていただくか考える必要があるので、大変ではありますが、そこにやりがいもあり、楽しいところです。一人ひとりの環境を色々な関係者と考えながら向き合って、結果「ありがとう」と言ってもらえたときが、この仕事をやっていてよかったなと思う瞬間ですね。

 

ページの先頭へ戻る

 

かもめ訪問看護ステーション 羽田雅代さん

医療と介護の融合

羽田 雅代さん
かもめ訪問看護ステーション 訪問看護認定看護師
羽田 雅代(はだ まさよ)さん

私たち訪問看護師の仕事は、在宅での健康や薬剤などの管理、生活介護を通して、できる限り本人の自立する力を助けていくことです。看護師は体の調子を診る医療的な視点と、生活を看る介護的な視点の両方で利用者を「みる」ことができるので、その2つを融合させていく仕事になります。

私たちが利用者の皆さんに必要とされるタイミングは、「入院した時に胃ろうや人工呼吸器、人工肛門などの医療ケアが必要になったので、在宅でも管理が必要」「認知症が進んでしまい、様々なところで生活に支障が出て、薬がちゃんと飲めていない」など、病気の進行や治療によって、これまでの生活に変化が起き、医療的な支援が必要になった場合などです。訪問看護師はその方の人生の経験や生活を知り、その方の生活の中に必要な医療ケアを融合させて、その方なりの生活が送れるようにマネジメントしていきます。

訪問看護でケアする内容は利用者によってさまざま。体の状態や本人の希望、家庭の状況は一人ひとり違うので、本人の希望に最大限応えるために、多職種で連携を取りながらサービスを提供します。

 

訪問看護を利用する要介護5のAさん

 

訪問看護を利用する要介護5のAさん。訪問看護を毎日利用している。Aさんは、より当事者目線に立った介護サービスの提供を目指す事業所の理事を務めている。

 

関係者全員で最適なケアをしていく

訪問看護は、かかりつけ医から発行される「訪問看護指示書」がないと開始できません。そこにはその方の病状、処方や医療ケアの内容など治療方針に関することが書かれていて、その指示に則ってサービスを提供していきます。すべての医師が在宅医療、介護の状況を深く理解しているわけではないので、在宅で実施可能な治療の具体的な方法や、訪問看護の介入可能な内容などを提案して、在宅での医療支援がスムーズに進むように私たち看護師から働きかけることもあります。

医師にも協力してもらうことで、在宅支援がスムーズになることは多々あります。今はそのことを理解してくれる医師もとても増えてきたと思っています。医師と看護師との関係は上下の関係と捉えがちですが、医師と看護師は「協働する仲間」として常に連携し、同じ目線で話し合えるような関係なんです。

回り道をしたからこそ、得られたもの

回り道をしたからこそ、得られたもの看護師として今まで何度か就業環境を変えながら、病院や在宅の現場をたくさん経験してきました。そのおかげで、病院の看護で得た経験と知識が在宅の看護でも活かせましたし、逆に病院から患者さんが退院するとき、在宅への移行をスムーズにサポートすることもできました。

今、訪問の仕事をしているのは、若手だったころに訪問看護の楽しさに出会ったからです。その人が過ごすお家に行って、そこのお家での家風というか、空気に自分がまぎれながら、その人が望むオーダーメイドのケアを試行錯誤しながら行っていくことが楽しかったんです。

超高齢社会の今、在宅での医療や看護、介護はかなりクローズアップされています。昔は「訪問看護をやってました」というと、「在宅で何ができるんだ」と馬鹿する医療者もいましたね。そう考えると、今は地域包括ケア推進の中で在宅と病院医療の連携もスムーズになってきましたし、医療従事者の持つ在宅医療と看護に対する価値観はだいぶ変わってきていて、かなり理解が広がってきたな、という実感があります。

 

希望を叶えるためには、サポート側が諦めてはならない

私が仕事をするうえで大切にしているのは、「あきらめないこと」です。利用者さんは様々な思いと希望を持っています。時々「こんなの無理でしょ」とあきらめの言葉を言う方もいらっしゃいます。けれども、本人が望むところまで行かなくても、そこに近づくことのお手伝い、応援はやめない。本人の「生きることのモチベーション」が維持できるように配慮しながら応援を続ける。それでも、落ちこんだり、苦しくなったりしたときは一緒に共感する。その方がリカバリーできるように、人間的な感情と理論的な思考で応援をするのは、私たちならではの仕事、関わり方だなと思っています。

手の届く目標をちょっとずつクリアして、それを本人も「できた!」と喜んで、一緒に成功体験をしていく。それはその人たちの努力の成果なんですけど、そこを一緒に叶えていけることが私たちにとってもすごくうれしいこと。「こういうことができるようになったよ」と言ってもらえることが、この仕事のやりがいというか、醍醐味ですね。

 

 

ページの先頭へ戻る

 

慈英会病院 大池義明さん

リハビリだけでなく、周囲の環境も整える

大池 義明さん
慈英会病院 理学療法士・認定訪問療法士
大池 義明(おおち よしあき)さん

身体機能の不調がある方たちに対して、ご自宅に伺ってリハビリで身体機能の維持・回復をはかることが訪問リハビリの大きな役割の一つです。それだけではなく、ご家族やヘルパー、看護師といった職種の方たちに「普段皆さんが関わるときにこういう事をすると、もっとこの能力が上がってきますよ」「体に負担なく生活できますよ」といったアドバイスをすることも、私たちの大事な仕事です。制度上、訪問できる回数には限りがあるので、普段から関わる方にリハビリの視点を持って支援していただく事も大切にしています。

 

それから、家の中に段差があったり、手すりがなかったりなどの環境を整えるために、福祉用具や住宅改修の提案もしています。また、よくある事ですが、加齢などで背が縮んでしまい、今まで使っていた椅子に座ると足が床につかなくて姿勢が安定しないなどの場面に遭遇するときがあります。このような場合は100円ショップで購入できるものや身近にあるものを利用して生活できるような工夫を助言させていただくこともありますね。

「できること」を見つけるプロ

今までできていたことができない、ということが起きてしまうと誰しも気持ちが落ち込んでしまうことが多いです。1つできないことがあると、気持ちの中では自分は何もできないと感じてしまう方もいらっしゃる為、リハビリではその人ができる事を探して、伝えるように心がけています。例えば料理であれば、全部はできなくても、「切ることだったらできる」とか、「こういう姿勢であれば味見もやりやすい」とか、その方なりのできることを一緒に探していけるところが、「動作」という部分を見るエキスパートである私たちに必要とされていることだと思いますね。

リハビリでどこまで回復するかはご本人の状態によります。完全に元通りというのは難しいことも多いです。私たち専門職から見た到達目標とご本人の到達目標がズレてしまうこともあります。そこは日々リハビリをする中で経過を見て、少しずつすり合わせていって、お互い納得のいく到達点を見出していくことも、私たちの仕事の大事なことだと思っています。

要介護5のKさん。週に3回、訪問リハビリを利用している。

 

要介護5のKさん。週に3回、訪問リハビリを利用している。

 

少しでも自己肯定感を上げていく

利用者さんと関わるときは、「目を見て笑顔で話すこと」と「なんでも相談してもらえるようにすること」を大切にしています。私が聞いて、それを誰かに伝えることも出来るので「リハビリに関わること以外でも、何かつらいことや聞いてほしいことがあったら、その場ですぐに言ってくださいね」ということを利用者さんには話しています。リハビリの人だから体のことだけ、ということにはしないようにしています。

できていたことができなくなってしまって、自己肯定感が下がってしまっていることも多く、ご家族からも「あれができなくなった、これができなくなった」と言われることが非常に多いです。なので、できることに目を向けて、オーバーなぐらいに褒めることを意識しています。

 

思いを強く持ち続ければ、良くなるケースもある

思いを強く持ち続ければ、良くなるケースもある本人の頑張りや周囲の支えが実り、体の状態が良くなった方もいらっしゃいます。実際に私が知る中では、寝たきりで動けなかった方が、支えれば短い距離であれば歩けるようになった、というケースがあります。その方やご家族の目標は、「娘さんの結婚式でヴァージンロードをエスコートする」ということでした。発症したときは、「もう歩くことはできない」と、主治医の先生に言われたみたいなんです。ところが、リハビリを始めてみると、体を動かす機能や筋力が残っていることが分かりました。ご本人の気持ちの強さやご家族の協力もあり、発症から5年ほど経って、支えがあれば何とか歩けるところまでたどり着くことができました。その方がヴァージンロードをエスコートしているとき、実は私が後ろで支えていたんですが、ちょっと泣いてしまいましたね。

これだけに限らずですが、「こういうことができるようになった」とか「来てくれてありがとう」と笑顔で言ってもらえると、私も元気が出てきますし、一番力になるんです。それがやっぱりこの仕事のやりがいですね。

 

 

 

ページの先頭へ戻る

 

通所リハビリテーション「げんき」「オバマ」「きずな」 木村誠さん

通所施設でも、種類により目的が異なる

木村 誠さん
通所リハビリテーション「げんき」「オバマ」「きずな」
統括所長 木村 誠(きむら まこと)さん

通所系のサービスは、大きく分けるとデイサービスとデイケアの2つに分かれています。そのほかにも重度の方向けの施設もありますが、大枠はこの2種類です。

デイサービスには、医師や理学療法士といった専門職は常駐しておらず、介護福祉士が主体になって動いています。入浴・食事・排せつなどのサービスのほかに、アクティビティサービスといって、例えばゲーム感覚で体を動かしながらADL(食事や入浴、更衣などの日常生活動作のこと)を維持していくのがデイサービスですね。レクリエーション要素も多いので、近場にみんなで遠足に行く、といったことをしている施設もあります。ただこの辺りのレクリエーション要素は、コロナ禍で変わっている部分もあるかもしれません。

デイケアは医師の診断書に基づいて個別の機能回復訓練を行う施設なので、リハビリがメインです。施設には医師が専従でいて、理学療法士や言語聴覚士、作業療法士といった専門職がいるので、ここがデイサービスとの大きな違いですね。ただ、デイケアもデイサービスも、入浴・食事・排せつといった生活上のお世話をしているので、簡単に言えば、レクリエーション要素が多く、介護の軽減を図っていくのがデイサービス、リハビリに特化しているのがデイケアだと思います。

介護者の負担軽減に

1日のうちの少なくとも6、7時間近くを施設で過ごすことになるので、介護を抱えているご家族の介護の軽減になるのが通所のメリットです。訪問系のサービスですと、長時間サービスを受けることはなかなかできませんが、通所だと、食事も入浴も排せつ介助もしてくれて、丸一日見てくれる。デイケアであれば、なおかつリハビリもしてくれる。夕方まで私たちにお任せいただいて、ご自宅に帰ってあとは寝るだけ、となれば、ご家族にとってはかなり楽になると思います。脳梗塞で後遺症を残してしまい、ご家族に介護で迷惑かけることを申し訳なく感じている方もいらっしゃいますし、仕事を抱えながら介護をやっている方もいらっしゃいます。様々なケースがありますが、一時的に在宅で見てもらうよりは、一日施設で過ごしていただく方が、周囲の方の介護の負担がかなり少なくなると思いますね。

本人の「孤独感」の軽減にも有効

本人の「孤独感」の軽減にも有効

通所することのご本人のメリットは、集団で過ごすので、人とのコミュニケーションを取ることができることだと思います。デイケアやデイサービスの中で気の合う方がいればお友達もできますし、人と触れ合うことで刺激を受けることもできます。自宅に一人で過ごして誰とも話す機会が無いとなると、認知症の症状があればどんどん進んでしまいますし、話し相手がいないことで孤独感を持ってしまうかもしれません。「絶対私は通所には行かない」という人以外は、人から外的な刺激を受けることができるので、通所施設へ通うことを私はお勧めしますね。

激務だからこそ、感謝の言葉がうれしい

激務だからこそ、感謝の言葉がうれしいこの仕事をやっていて良かったなと思ったのは、ありきたりではありますが、やはり「ありがとう」という言葉をかけていただけたときですね。私たちの業界はとにかく激務で、ずっと現場を走り回っているような仕事です。昔、入所施設で夜勤をやっていたときは特に余裕がありませんでした。昼夜問わず、何かあればひっきりなしにコールが鳴って対応に追われます。利用者さんの中には、手をあげる方もいらっしゃることがあるので、現場にいたときはメガネが4本折れてしまったこともあります。やっぱりそういったことが続くと、心にゆとりがなくなってきてしまうときがあるんです。でも、ふとした瞬間に笑顔で「ありがとうね」と言ってもらえると救われるし、やっぱり余裕がないときに優しい言葉をかけていただけると、ほっとしますよね。
利用者さんには一人ひとり歴史があって、生活歴もみんなそれぞれです。家族の背景も違うので、同じ利用者は絶対いません。本当に一人ひとりの尊厳を大事にしていかないといけないな、というのは日々意識しています。

 

 

ページの先頭へ戻る

 

足立区医師会 山本亘さん

介護の入り口の一つとしての医師

山本 亘 副会長
足立区医師会 山本 亘(やまもと わたる)副会長
(千住中央診療所 院長)

介護サービスを利用したいときや介護について知りたいときには、すでに利用している知り合いから聞いたり、かかりつけ医のところで相談したりしてスタートします。そのなかでも、医師に相談している割合は多いと思います。皆、相談の仕方が分からないから、まずかかりつけ医に相談しているのだと思います。

介護サービス利用の相談であれば、手続きの説明などもあるので「地域包括支援センター」を案内することもありますが、介護認定取得の手前の相談は、医療機関の方が多いかもしれません。「歩きづらくなっている」とか「認知症も含めて生活しづらくなっている」ということは、ずっと診察をしてきたからこそ分かることです。

診察する中では、「本人は自覚していないが、生活が成り立っていない」というケースもあります。自分で動ける方であれば何とかなりますが、動けなくなってきている方には介護サービスの利用を勧める場合もあります。

こうした気付きは、身体を診るだけでなく、生活の部分をどれだけ引き出せるかにかかってきます。例えば、かかりつけ薬局があれば、訪問の薬剤師に家の状況を見に行ってもらい、「このままではまずい」となると、介護サービスの方に切り替えていく方法をとります。

医療と介護で区民の生活を守る

私たち医師は直接介護サービスを提供する側ではありません。その方に対して、どういう介護の仕方が良いのかなどを伝える立場にいると思っています。介護認定を取るために、必ず主治医の意見書が必要な理由はそこにあります。地域包括支援センターに相談したからすぐに介護サービスを利用できるわけではありません。地域包括支援センターに相談があった場合にも、かかりつけ医がいる場合には、まずかかりつけ医に相談するように案内しています。

もう一つ忘れてはならないのは、「介護サービスはすべて無料で利用できる」というイメージを持っている方が多いということです。通常、本人負担があるので、そのことも知っておいてもらいたい。経済的なこともある程度、考えておく必要があるんです。

その方の身体機能を良くするのは「医療」の専門ですが、生活機能を良くするのは「介護」の専門です。以前は医師が生活機能まで見ていましたが、介護制度が始まったことで役割分担ができるようになりました。

介護がうまくいかない方は、身体的治療もうまくいきません。だから生活支援が大事なのです。「医療」と「介護」はどちらも欠けてはなりません。「医療と介護の連携」というと別々の物のように聞こえますが、そうではなくて、同じものだと思います。「区民の生活を守る」というゴールに向けて、「医療」として身体を良くすることだけではなく、「介護」で生活を良くしていくという、2つが嚙み合うことが重要です。

お互いの知識を高めるために始めた研修会

お互いの知識を高めるために始めた研修会我々がめざすゴールは、その方が上手く生活できて、そこに住んでいられることです。そのためには、医療側と介護側、それぞれがどのように協力できるかをお互いに指摘し合うことができなければなりません。指摘し合うには皆が勉強して同じレベルにいなければならない、ということで始まったのが、医療・介護スキルアップ研修です。

スキルアップ研修の取り組みは、2018年度から始まりました。コロナの感染拡大で一時休止していましたが、昨年再開して、今年も実施することが決まっています。

まず始めに「多職種連携研修会」が2015年からスタートして、全体会という形で各地区から代表の方々が医師会に集まり、皆で勉強をしていました。当初はスキルアップというよりも、皆で話し合える場を設けるという意味合いが強かったですね。この研修会がベースとなり、今度は勉強して、少しでも知識を合わせていこうと、2つ目の「医療・介護スキルアップ研修」がスタートしました。そして、医師も在宅医療をやらないと介護のことが見えてこないので、都で実施されていた、在宅医療を始めたい医師向けの「在宅医療塾」を3つ目として足立区でも始めました。

ここで足りなかったのが、「区民と多職種が一緒になる研修会」です。これがないと区民を置き去りにしてしまうということになり、2019年に梅田地区をモデルとして、半年間かけて研修会を行いました。

 

在宅医療を広げるために

私が医師会の在宅医療関係に関わり始めたのは2014年ごろからです。診療所の院長になったのは2007年からで、当初は診療だけで良いと思っていましたが、在宅医療が必要な患者さんがだんだん増えてきたので、在宅医療に取り組み始めました。

足立区医師会の会員約680名のうち、実際に在宅医療をやっているのは50に満たないと思います。医師会会員のうち、区内在住は約30%ということもあり、なかなか増えていきません。休日在宅当番医制度を立ち上げて休日だけでもフォローすることで、平日に在宅をやってくれるところが増えてくれるのではないかと期待しています。

在宅医療をやろうとすると、1人主治医の場合、24時間・365日いつでも対応できるように携帯電話を気にしていなければなりません。私は在宅医療の連携として梅田病院にフォローしてもらう場合もありますが、そういったフォローの体制が全くない診療所は大変です。そうなると、介護との連携だけではなく医療機関同士の連携も大事になってきます。

在宅医療を取り扱う医療機関をどうやって増やしていくかですが、夜間や休日に医師が足立区内にいないと対応が難しいので、何らかの仕組みが必要です。休日在宅当番医制度を立ち上げた理由もその一つです。

私が在宅医療に取り組んでいるのは、今まで診てきた患者さんが在宅医療を必要としているからです。診てきた患者さんに対しての責任があり、この地域を支えているのは私の医療もあるという自負もあります。

同じ方向を見据え、連携できる拠点に

「すこやかプラザ あだち」のオープンには大きな意義があります。医師や介護従事者などが個別に話し合う分には良いのですが、団体同士が話し合いの場を持つと、立場が食い違うことが発生します。そのようなときに同じ立場で話し合うフィールドがあれば、必ず目線は同じになります。皆がすこやかプラザのフィールド上で話し合うのであれば、考えることは「区民のため」となります。そういう場所を区がつくったということが重要で、公設ということで皆がそのフィールドに入ることができるようになりました。いろんな立場の人たちがいろんな言葉で話し合う場所ができたことは、非常に大事なことだと思います。

また、医師会や薬剤師会などそれぞれの団体が、区と個別に話し合える場所にもなると良いと思っています。例えば医師会であれば、休日診療やワクチン事業で区と協力することがあり、その時に話し合う場として活用すればよいのです。ほかにも、薬剤師会や居宅部会などの団体同士が話し合える場所にもなれば、案件によってどのように連携すれば良いか、各団体や区がそれぞれ考えられると良いと思います。そうなると、さらに広く話し合える場になり、皆がいろいろなサポートをできるようになることで、結果として区民の皆さんのためにもつながっていきます。

これから、医療も介護もサポートする側の人が減っていきます。そういった状況が見える場所となればなお良くて、その場所で話し合いができれば、改善策を考えることもできます。すこやかプラザあだちが「必要なもの」「必要でないもの」を整理できる場所であってほしいし、問題点や課題を早く見つけて、それに対処できる場所になることを期待しています。区民を第一に考える支援チームが、より連携しやすくなる場になることを期待しています。


「すこやかプラザ あだち」の完成イメージ

 

ページの先頭へ戻る

 

  • PICK UP! あだちの【魅力】や【お役立ち情報】をわかりやすくお届け
 

こちらの記事も読まれています

 
  • イベント・お出かけ
pickup