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公開日:2023年12月25日 更新日:2023年12月25日

区民の芸術祭・あだち区展 ~受賞者たちに聞く~

足立区では毎年、6月下旬に北千住マルイ11階“シアター1010”ギャラリーにおいて「あだち区展」を開催しています。
区展では、足立区の文化発展のため、絵画・彫刻・書道・写真の4分野(※1)について広く区民から作品を募集し、区展大賞をはじめとした各賞を授与しています。

今回は令和5年6月に開催された56回目となる「あだち区展2023」において、区展大賞(※2)の栄誉に輝いた作品と、制作者の皆様のインタビューをお届けします。ぜひ来年はシアター1010・ギャラリーであらたな受賞作品をご覧ください。

  • ※1...少年部門においては図工・美術(平面)、図工・美術(立体)、書道、写真の4部門。
  • ※2...少年部門においては区長賞。なお、写真部門は該当者がいませんでした。

 

毎年、北千住マルイ「シアター1010ギャラリー」で「あだち区展」を開催 

 

 

【絵画部門】足立区展大賞「生きた証」作:松元芙美

足立区展大賞「生きた証」作:松元芙美

兄が生きた証をのこしたかった

鉛筆画を始めて17年になりますが「大賞」は初めてで、すごくうれしいです。選んでくださった選者の皆さまに心から感謝します。これまでも展覧会に出展するために作品を制作し、過去6回受賞したことがありますが、これは展覧会を意識せず、ただ「描く」ためにだけ描いた作品です。モデルは兄。昨年43歳の若さで亡くなりました。

同じ夢を見ていた。仲良し兄妹

松元芙美さん「兄が生きた証をのこしたかった」一昨年(2021年)の6月に、東京で働いていた兄の肺腺癌がわかり、兵庫の実家にいた私が看病のために上京しました。兄はとても忙しい仕事のかたわら小説を書いていまして、私も学生時代は小説を書くのが趣味でしたので、兄とは同じ夢を見ていて仲良しだったんです。

兄とは半年くらいこの足立区で一緒に暮らしましたが、亡くなるときに、「生きた証をのこしたかった」ってつぶやいたんです。兄は写真嫌いで全然写真がなくて。だから絵に描いて残したいと思いました。マイナンバーカードの写真を借りて、兄が勤め先の前で立っている絵を描きました。

兄が闘病中に書いた小説を必ず書籍化するねって約束したので、いつかはと思っていますが、今回大賞をいただいたことで、兄の願いのひとつはかなえてあげられたかなと思います。作品は、廃番になったBBケント紙の手持ちの最後の一枚を、切らずにそのまま使い、高さが1mといつもよりおっきいんです。家に置くと存在感があって、兄の姿をのこせたかな、生きた証がのこせたかな、って感じます。

自分では思ったほど上手く描けなかったなと思っていたので、しばらく放置していましたが、区民事務所で「あだち区展」の赤いチラシを見つけて、近場だから持ち込めるかなと。東京では車がないので自分で作品をもって電車に乗って移動しなくてはならないので。あと事前予約が要らなかったので出しやすかったこともあり、思い切って出品しました。

17年。楽しいから続けてきた

鉛筆画を始めたのは、17年前、兵庫で働いていたころに通ったカルチャーセンターです。坂本七海男先生が講師をされていて、習い始めたころは特に著名ではありませんでしたが、いつの間にか有名になって、パリのルーブル美術館で展示されたり、サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館に収蔵されたりと、すごい方になっていきました。有名になっていく先生に引っ張られて、私もここまで続けてきました。

同じ夢を見ていた。仲良し兄妹高校時代は文芸部、大学時代は文芸学部で小説や挿絵を手がけていましたが、社会に出てからはその情熱を鉛筆画に向けました。題材は色々ですが、動物を描くことが好きです。得意なのは建物。写真を見て描くし、定規を使えるからかな。2、3週間でぱぱっと仕上げるときもありますが、今回の作品は1か月弱かけて描きました。鉛筆画なのでもちろん道具は鉛筆。5Hから10Bくらいまで。全部使うわけではないですが、今回は9Bまで使ったかな。

私が通っていた教室は、絵を描く時も周囲の人とおしゃべりしながらだったんです。それが楽しくて続けてきたんだと思います。もちろん展覧会の前にはそれこそ徹夜して仕上げたこともありますが。

絵を描くことは心を豊かにしてくれる

絵を描くことに限らず、文化活動は生活するうえで、なくても困らないものだと思うのですが、あればきっと心を豊かにしてくれます。仕事とは別に家から外に出ることは地域の活性化にもなりますし、一生続けられる趣味なので、生きがいになります。あだち区展という発表する場があることはうれしいことです。
坂本先生からも、そろそろ教室を作らないと追い出すぞと発破をかけられていることですし(笑)、兄が導いてくれたこの足立区で、これを機に足立区で絵画教室をやれたらいいなと思っています。

絵を描くことは心を豊かにしてくれる

(取材:令和5年9月25日)

 

【彫刻部門】足立区展大賞『「巡生」-2023』作:中村茂幸

足立区展大賞『「巡生」-2023』作:中村茂幸

計算してやるようなもんじゃないです。

この度は、大変名誉な賞を頂戴しましてとてもありがたいです。近藤区長から直に賞状をいただけて、本当にありがとうございます。
素材はステンレススチールです。素材となる板をカットし溶接し、研磨して制作しました。例えばピカピカしてる部分は、球体の曲面をカットしてそれをあわせて溶接して、こういう形にしているんですね。木の幹の様なところは、板を短冊状にカットして溶接して。木のイメージで最初作ったんですよね。鋳造とは違うので、中は空洞です。

田舎への憧憬が着想いまはデータを入れればレーザーでカットできる機械があります。でも、こういう作品はそんな計算してやるようなもんじゃないですから、プラズマ切断機を使い、手でカットして繋げていくわけです。また、あんまり全部キラキラしちゃうと作り物っぽくなってしまうので、わざとある程度、磨かないというか、酸化膜を残したりしています。

作品制作も、集中してやれば一週間から10日程度で出来る物もありますが、仕事の合間に1か月とか2、3か月かけて作って、ある程度おいたりします。時間が経ってくると、また発想も変わってきますので。

位置をほんのちょっとずらすだけでイメージがガラッと変わったりすることも、結構ありますから。また、一度取り付けたものを、一回外して、また付け直したいと思ったりもします。

田舎への憧憬が着想

足立区鹿浜で株式会社ビーファクトリーという会社をやっています。金属材料を用いて造形・加工し、美術館などに展示するアート作品の制作などをする事業で、足立ブランド認定もいただいております。金属加工の設備に関しては色々揃っていますので、この作品も事業の合間を見ながら制作しました。

出身が長野県の安曇野で、田舎への憧憬というのでしょうか。子どもの頃、山の中で遊んでいた頃に感じたことが、ふつふつと出てきたりしまして。そういうところから作品の着想を得ました。

子どもの頃は山の中が自分の遊び場のようでした。毎日カブトムシやクワガタを捕まえにいきました。また黒スズメバチ、田舎では「すがれ」と言うのですが、これを追いかけて、巣を手に入れるんです。秋になるとキノコを採るのが楽しみで、よく山に行きました。今でもたまにキノコ狩りに山に行きます。キノコは結構奥が深いんです。

山では朽ちた木に菌糸が付着して、新たなキノコという生命体が誕生します。SDGsという言葉を最近よく耳にしますが、自然界はそのような言葉はなくとも、常にSDGsなんだと思います。
今回の作品は、朽ちた物から新しい生命体が誕生するという輪廻転生的な思いがあります。

働きながら藝大に7年。

子どもの頃から絵を描いたりとか物を作ったりすることが大好きで、自然と美大を目指すようになりました。高校の頃から生活が厳しかったので、朝は新聞配達をして、放課後はガソリンスタンドでバイトしたりとか。それで土日は自宅の畑仕事をするような生活でした。

働きながら藝大に7年。長野県の高校を卒業した後、上京して働きながら藝大を目指しましたが、そうした状況だったので仕送りも全くなしです。昼間は働いて夜は予備校みたいなところへ行って、4年間浪人生活をしました。

運よく藝大の彫刻科に入学できて、それからも働きながら、院を含めて都合7年間在籍しました。

彫刻をやろうと思ったのは、ちょっと僕は天邪鬼なところがあって、みんなが行くこと、やるようなところはやりたくないなって思ったんですね。高校時代の美術部の友だちとかは、みんな絵とかデザインとか平面的な方を目指していたので。それと中学時代にサクサク彫れる軽石みたいな教材があってですね、それで彫刻を作る授業が非常に楽しかったというのがとても心にあって、彫刻に進んでみようなかと思ったんです。

 

作品に自分をさらけ出す。

学生時代から足立区に住んで40年以上になります。足立区の旧まちづくり公社が彫刻のコンペをしていたので、そこに応募して、展示していただいた作品も2点ほどあります。
そういう関係もあって、区展にはやっぱり参加しなきゃっていう気持ちで、結構昔から出品しています。
区展もある意味、ある程度ステップアップしていく必要を感じはしますよね。もっとPRとかして、実力ある彫刻家もきっと足立区にいると思われますけど、そういう人たちにも認知してもらい、出品してもらうことをやっていった方がいいのかなと思います。

作品に自分をさらけ出す。

日頃色々と制約がいっぱいある中で人間、生きてるじゃないですか。そういうのをとっぱらって、自分の感じたことや思いをストレートに表現できる。それが、なんといっても作品制作の魅力です。自分を、自分の生き方をさらけ出す。その作品に対して、一人でも共感してくれる人がいたら嬉しいです。そういう作品を展示できるのが区展の場だと思いますね。皆さんもぜひ出品して、大勢の方に見に来ていただいて、盛り上げていきたいですね。

今回、自分でも楽しくできたので、このステンレス素材の金属の特性を生かして、もっとチャレンジしてみたいです。ステンレスの素材自体にそんなに歴史があるわけではないですが、色々な表現の可能性がありそうです。今回の作品がきっかけになって、これからまたもっとさらに面白い作品ができたらいいなと思います。

(取材:令和5年9月28日)

 

【図工美術(平面)】足立区長賞「止まる馬」作:和田晄咲 花畑小学校4年生

足立区長賞「止まる馬」 作:和田晄咲 花畑小学校4年生

友達が好きな動物を描いた

図工の授業が大好きだからこの絵は授業で、「いろいろな模様の動物」をテーマに、描きました。まず下に色を塗ります。それからマジックでいろんな模様を描いて、その次にパステルで絵を描きました。馬を描こうと思ったのは、何を描こうか考えているとき、友だちの顔が思い浮かんで、その子が好きな動物が馬だったからです。それで、馬を描くことにしました。ただ、走っている馬を描くのはちょっと難しくて。最初に描き出したのが止まっている馬なので、タイトルも「止まる馬」にしました。馬の見本が無いので、想像で馬の形を描いていくことが、難しかったです。
一番苦労したのは、色を重ねていくところです。お馬さんを描いて、そのあとに背景を描いたんですが、描くときに色を重ねたりして、工夫してがんばりました。

図工の授業が大好きだから

あまり家でおえかきはしません。普通に紙に描く絵は、あまり好きじゃないです。三人きょうだいで、妹にぬりえを手伝ってって言われるから、描くのはそのときくらいです。だから絵は、図工の時間くらい。音楽の時間も好きだけど、図工の時間がやっぱり一番楽しい。図工の先生が好きで、授業が好きだから。図工の時間に描く絵が楽しい。だから、がんばって描きました。
図工の授業では工作とか、いろいろとやってきたけど、この絵を描いたことが今まで一番楽しかった。いま授業では、版画を作っています。文字でも絵でもないものを描いて、彫刻刀を使って、彫り終わったところです。
体を動かすことも好きです。今年から、トランポリンを始めました。弟が先に習い始めて、一緒にやらせてもらってます。跳ねるとすごい高さになりますけど、それも楽しいです。

賞をもらってびっくり

絵を習ったことはないし、いままで賞をもらったこともないので、この絵で区長賞をもらって、驚いています。区長さんから賞状をもらった時も、うれしかったし、私の絵なんだってびっくりもしました。
学校から手紙が届いて、区長賞に選ばれたって教えてもらってから、北千住の区展の会場に、家族みんなで見に行きました。絵の前に立って写真を撮って。ご褒美に本を買ってもらいました。また別の日におばあちゃんも見に行ってくれました。
会場では、他の子たちの作品も見ました。みんな上手で、木の枝とかを使っている立体の作品があって、そういうのがすごいなって思いました。

賞をもらってびっくり

(取材:令和5年9月26日)

【図工美術(立体)】足立区長賞「おもしろ筆」作:松下果永 新田小学校6年生

足立区長賞「おもしろ筆」 作:松下果永 新田小学校6年生

ラップや糸から筆を作る

墨がたれちゃったので、ぽんって筆を置いた図工の授業で作った作品です。図工の先生が紙紐、アルミホイルやラップ、針金や割り箸など、色々な材料をいっぱい用意してくれて、糸だけでも、たくさん種類がありました。その中で自分が使いたいものを取っていき、筆を組み立てていく授業でした。とりあえず、作ってみてっていう感じだったので、パッと素材を手に取って、「これができるじゃん!」と思い浮かんだものを、どんどん作っていきました。
筆先の部分は糸とかリボンを束ねたり、アルミホイルを丸めて、トゲトゲにしたりして、作りました。あと布を丸くして筆先にしたけど、ラップを巻いたほうが綺麗になる気がしたので、作ってみました。
アルミホイルの筆は、一度描いた後に、墨をぬぐったらもう一回形を変えることができます。一回描いた後も違う形の線をかけるから、良くできたなと思っています。それぞれの筆は、持ちやすいように割りばしやスプーンで柄を工夫したりしました。筆は何本も作って、全部で6、7本は作りました。ある程度、こういう感じがいいなと思い浮かんだものは、作れたと思います。それから、作った筆に墨をつけて、紙にポンポンと描いていきました。

墨がたれちゃったので、ぽんって筆を置いた

見に行けなかったのが残念筆を作ったら、墨や、墨を水で薄めたもので絵を描きます。墨だけなので、水墨画に近い絵になりました。何を描くかは決まってなかったので、最初にちっちゃい紙に試し描きをして、どんな線が描けるかを確認したら、描きたいものを描いていきました。本当の筆みたいに一本の線だけを描けるような筆を作った人たちは、文字とかも書いてました。
最初、真ん中に円を描くつもりはなかったけど、紙に墨がたれちゃって。もう迷っちゃうから、そこに、筆をぽんって置いて、ここにもあった方がいいかなって思うところに、筆で付け加えていきました。全部で3枚くらい描いたなかで、この作品が一番よかったです。
授業では本当はもっと大きくて長い半紙に描いてたので、掛け軸みたいな作品になってます。区展に出すために、決められた大きさの紙にもう一度描こうということになって、これを描いたんです。授業で描いた掛け軸のほうは家に飾ってあります。

 

見に行けなかったのが残念

学校から手紙をもらうまで、受賞したことを知りませんでした。本当は北千住の会場に区展を見に行きたかったのですが、その週はすごく忙しかったので、見に行けなくて残念です。私の中三になる兄も区展で足立アート賞を貰ったことがあります。そのときは会場まで見に行って、賞札が貼ってある作品の前で、いっぱい写真をとりました。
体を動かすのが好きで、ダンスを習っています。通っていた幼稚園の課外活動で年少、4歳のころに始めました。小学生になってもその教室に通い続けています。今はジャズダンスと、インド・フィルムっていうインド舞踊とジャズダンスを融合させた、教室のオリジナルダンスを習っています。
図工以外の科目だと、音楽、体育が好きです。体育は、球技よりも陸上競技が好きなので、中学校に進学したら陸上部もいいかなと思い、どの部活に入るか悩んでいます。

(取材:令和5年10月3日)

 

【書道部門(一般)】足立区展大賞『和歌 小式部内侍』作:永田耀香

足立区展大賞『和歌 小式部内侍』 作:永田耀香

仮名は流麗な線が魅力

和歌、百人一首を題材にした崩し字の作品です。和歌の中でも、皆さんに馴染みのある歌を題材にと考えて、百人一首から選びました。仮名作品が好きで、大字と細字をコラボさせて作り上げたのですが、変体仮名を多く取り入れました。仮名と崩し字の流麗な線に魅力を感じています。紙面の余白や潤渇(じゅんかつ)*1の美、また文字の疎や密の工夫が面白いです。
この作品には五首書きましたが、それぞれの歌は好みというより、作品として完成させたときに、文字のバランスがよいものをピックアップしたものです。左に大きく書き上げたのが小式部内侍*2の歌「大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみもみず 天橋立」ですね。

 

*1墨の滲み(潤筆)と擦れ(渇筆)のこと。
*2平安時代の女流歌人で女房三十六歌仙の一人。父は橘道貞、母は和泉式部。

まさに「一心不乱」

まさに「一心不乱」出身は福岡ですが、小学生のころ、父の仕事の関係で足立区に越してきました。書道を始めたのも小学生の頃です。それからしばらくブランクがあったのですが、40代後半に一念発起し、書道の師範学校で免許を取得しました。
書道教室を開こうかどうかを悩んでいたのですが、師範学校の同期に運勢を見る人がいまして。その方の言葉に背中を押されて、平成27年4月、卒業と同時に開塾しました。
デジタルなフォントの文字と手書きの文字では全然味が違います。教室を主宰していて、多くの人に文字を書いてほしい、どうやったら書いてもらえるかといつも考えてます。現代では手書きの文字を書く機会が減ってるからこそ、継承していってほしい。だから、年賀状講座なども私の教室では開催しています。
区展には10年ほど前から出品しています。題材は古典からも現代文からも様々です。作品作りは構想を練って、2~3週間くらいかけて、練習用紙に何度か書いてみます。そして、自分の中で納得がいきましたら、2、3枚清書して終わらせます。美しい線を引くためにまさに「一心不乱」で、書いている最中に、他事を考えることはありません。
題材選び、構想を経て、実際に思う通りの作品に仕上がった時の満足感は、なんとも言えません。また、文房四宝というのですが、筆、硯、墨、紙にこだわり、作品を完成させるのも書道ならではの喜びだと感じています。

いい字があると取り込みたい

区展大賞をいただけましたことは大変名誉なことで、この上ない喜びです。いつも以上に緊張と感動がありました。
仮名作品が書道部門の大賞を受賞したのは、久しぶりだと思います。仮名は漢字より後にできたものでもありますし、やはり漢字のほうが目立ちます。しかし、仮名には漢字にはない良さがあり、仮名には仮名の美しさがあります。仮名を書くと仮名が好きになり、仮名のもつ、美しさが分かると思います。逆に、書かないと仮名はわかりにくいかもしれません。

いい字があると取り込みたい

今回の作品では変体仮名で書きましたが、今はもうお店の屋号くらいでしか見なくなりました。蕎麦屋の「そ」などは、街中でも結構目にしますね。変体仮名は、平安時代から令和の世に生きている、歴史を感じる素晴らしい文字だと思います。
私はいつも字に興味を持ち、アンテナをはって、いい字があると取り込みたいと考えています。街中でも、お店の看板や、お品書きなど、感心するものは多くありますね。
区展は書道一般部門の出品数がまだまだ少ないと思います。広く区民の方に区展の開催をお知らせして、気軽に書に親しんでいただけたらと思います。これからも、一人でも多くの人に書の魅力を伝えていきたいです。

(取材:令和5年9月28日)

 

【書道部門(少年)】足立区長賞「無我夢中」作:今谷紗季 

足立区長賞「無我夢中」 作:今谷紗季

何度も書き直しました

何度も書き直しました四字熟語「無我夢中」の字を行書体で書きました。作品にする文字は、毎年何にしようかなと悩んでいるのですが、今年は自分で探しました。インターネットで四字熟語を探しているときに見つけたのがこの字です。言葉の意味も字形も、かっこよく見えたので先生に相談したら、よいのではと言ってもらえたので、この字に決めました。
作品は普段通っている書道教室で書き上げます。通常のお稽古の日以外に土日にも教室に通い、集中して、何枚も何枚も書いていきます。
通常のお稽古の際は、半紙と呼ばれるサイズを使いますが、出展する作品は半切というサイズの紙なので縦が135cmあります。床に紙を敷いて、1文字書いては体をずらして、また1文字と書いていきます。
四文字書き上げるのに、5分から10分くらい。私は結構時間を長くとるほうだと思います。最後に全体のバランスを見て、この字が小さかったなと思えば、次は大きく書くようにして。特に、無我夢中の無の字がどうしても小さくなってしまい、何度も書き直しました。

自分が納得する字を書くのって難しい

書道は小学校低学年くらいから始めました。先に兄が書道教室に通っていたため、それで私も一緒に通うことに。兄はもう辞めてしまいましたが、入れ替わりに弟が習い始めました。書道は書いてるときが楽しいし、それに、上手く書けたときはすごく嬉しいです。そしてなによりも、字を書くことそのものに集中できることが魅力です。しかし、自分が納得する字を書くのはすごく難しくて、この一筆が、あと何ミリかだけでも上だったらなと惜しむことがあります。満足できる作品ができたときはとても嬉しくて、書道をやっててよかったなって、一番思う瞬間です。
私の中学校に書道部は無いのですが、書道の授業でたまに書くことがあります。やっぱり、うまいねって褒められます。書道以外には、体を動かすことも好きなので、中学ではバレー部に所属していました。今は三年生になったので引退しましたが、個人的な活動だと、小学校低学年からチアダンスを習っていて、今も続けています。また、足立区のジュニアリーダーの活動にも参加しています。
将来、やりたいことはまだ見つけられていませんが、教室の先生がすごく魅力的な字をいつも書いてくれるので、そんな字が自分でかけるようになりたいです。

崩し字の作品にも挑戦

崩し字の作品にも挑戦

区展は毎年出していましたが、区長賞をいただいたのは今回が初めてです。正直、会場に飾られている自分の作品を見るまでは、信じられない感じでした。いままでの区展でも、賞をいただいたことはありますが、区長賞をいただけたので、足立区長から直接賞状を貰えたのが、嬉しかったです。
区展の会場で、他の子たちの作品も見ましたが、みんなすごく太く書けているし、線がとてもきれいであったりとか、人によってそれぞれ違う良さがあっていいなと思いました。
今、中三なので高校受験のため、塾に通っています。古文や歴史は書道の題材にされることがあるけど、実はあまり得意ではありません。来年、高校生になっても書道は続けたいです。今は、仮名とか、崩した字を書くのがあんまり得意ではないと感じているので、それも上手くなりたいと思っています。
来年、高校生になっても足立区展に出品したいと思っています。そのときは高校生なので一般の部に出品することになりますので、今後は、やはり先生のような綺麗な崩し字の作品にも挑戦して、出展したいなと思います。

(取材:令和5年9月28日)

 

【写真部門】足立区展大賞「朝霧煙る棚田」作:栗田洋子

足立区展大賞「朝霧煙る棚田」 作:栗田洋子

これはチャンスあるかもって。

この写真は新潟県十日町市の星峠という有名な写真スポットです。目的は、雲海と日の出を狙って。前日から夫と姪の三人で松之山温泉に泊まっていました。
6月の梅雨の時期、前日にすごく雨が降っていて、雲海を撮るのに良い条件と本で読んでいたので、これはチャンスあるかもって思って。日の出が午前4時30分。4時にアラームをセットし、就寝しました。12時、2時と途中で目が覚めてしまい、そのあとすっかり寝込んでしまいました。
4時30分になってワッと目が覚め、もう無理かなとも思いましたが、一緒に行くはずだった姪を起こす時間がもったいないので、一人で車で飛び出しました。でも、星峠の山に入ろうとしたとき、霧がもう出ていたんです。そこからさらに15分くらい車で登らなければならなく、撮影スポットに到着したら、やっぱり雲海はもう消えた後で、太陽の光線も高くなっていました。
がっかりと思ったけど、まだ霧があった。霧も10分ぐらいで消えちゃうんです。それで、2台のカメラに一つは望遠レンズ、一つは標準レンズをつけて撮りました。雲海と日の出は撮れなかったけど、霧でいいんじゃないと。
ものすごい興奮しました。気候が条件的に偶然合った。こういう場面を想像していたのが撮れてとても嬉しいです。構図はマネできますが、この決定的瞬間を撮り逃さなかった事が、ほんとうに、まさにラッキーでした。

もしかして、『私って上手なのかしら』なんて勘違いして。

もしかして、『私って上手なのかしら』なんて勘違いして。62歳を機にそれまでやってた商売をやめたんですね。62歳で仕事引退はまだ若いと思ってるんです。自営業で経理やってたから、頭の中は動いてるんですけれども、やめるとなると「どうしよう」ってちょっと怖くなったんです。学校に通って、医療事務の実務検定合格証を持っていたんですが、年齢で雇ってもらえなかった。じゃ、何しようと。そんなときに見たのが、広報に載っていた花火の写真でした。あらおもしろそうって。
仕事先が本郷だったので、秋葉原が近く、石丸電気とか、そういうところに行ってカメラを見ていたので。ちっちゃなコンパクトカメラも、4、5台買って、機種、メーカーを楽しみながら撮っていました。
2011年です。なでしこジャパンが優勝した年です。本郷に当時、サッカーミュージアムがあったんです。私、なにげなく自転車で通りかかって。常にカメラを持ってたから、その行列、女子ワールドカップ初優勝のトロフィー一般公開日のものでしたが、それを撮って、文京区の観光写真に応募したんです。そうしたら賞に入ったんですね。それをきっかけに、趣味は趣味なんだけど、もしかして、『私って上手なのかしら』なんて勘違いして。それで足立区にも写真教室があることを知り、通い始めました。当時はたくさん会員のいる教室で、ほとんど男性でしたが、すごく勉強になりました。去年、教室は退会してしまいましたが、あれからもう10年以上、あだち区展には出品しています。

あえて早朝に行くことで、印象に残る写真が撮れました。

当初は、フィルムカメラですね。当然、記念写真を撮るぐらいです。私が興味持つようになったころには、すでにデジタルカメラ。いまはキャノンのミラーレスです。標準レンズをよく使います。
花火の写真も撮りに行きました。とても技術が必要で、花火は諦めましたけど、隅田川の屋形船、それの航跡も撮りにいきました。それも大変でしたね。
主人と旅行に出かけながら、旅先でよく撮って帰ります。国内も海外も、旅行しては撮って帰ります。また、作品展を見に行ったとき、いい場所があるんだなとメモしてきます。能登の白米千枚田、千葉の大山千枚田など、棚田もいろいろ行きました。
今回はあえて早朝に行くことで、印象に残る写真が撮れました。日中だとどうしても印象に残らない写真になってしまう。それは自分だけで絵葉書的に撮っておけばいいってよく先生に言われるんです。絵葉書だねって言われる。綺麗でいいですね、で。それはそれでいいと思うんです。もちろん、日中に撮影して、素晴らしい写真を撮られる方も多くいらっしゃいます。
先生に教えて頂いたのは、写真は基本「光と影」。曇日でも影はある。基本を大切に心がけて撮るように...ということです。
海外旅行で撮影していて、私もたくさん絵葉書的な写真を撮りました(笑)。感じたことは、写真には物語が必要ではないかということ。人の後ろ姿が入っていると、写真に物語が生まれます。

これからも撮り続けたいと思います。

好きだから撮り続けるって本当なんですよ。どの荷物を忘れてもカメラ2台は、車の後ろに入ってます。望遠レンズはあんまり出る場面はないですが、持っていきます。これから、10月には紅葉を撮りにいきます。

これからも撮り続けたいと思います。

今回、区展大賞をいただけて率直に嬉しいです。うれしくて、また意欲がわくんです。
表彰式の時は、とてもあがってしまい、もうわからなくなっちゃいました(笑)。
あだち区展はとても良い企画で、それぞれの人が観に行く機会を与えて頂いていますし、出品もしたくなる気持にさせてくれる場所であると思います。
スマホもよく撮れる様になりましたし、手軽に、これからも撮り続けたいと思います。

(取材:令和5年9月27日)

 

あだち区展2023

 

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