ホーム > 区政情報 > 広報・報道 > シティプロモーション > ワケあり区、足立区。 > 足立区のワケありな人々 > 【インタビュー】島川一樹さん
ここから本文です。
公開日:2026年4月3日 更新日:2026年4月3日

株式会社明珠 代表取締役 島川 一樹さん

古民家をリノベーションしたカフェや飲食店など、8店舗を千住で経営しています。
私が幼いころ、祖父と母が長崎で水墨画の画廊をやっていて、その影響で古物をたくさん見ていたので自然と古いものが好きになりました。古いものをごみと感じる人もいるかもしれませんが、私はそこに価値を見出します。修繕して綺麗にすれば価値の高いものに変わりますし、「古い」と「汚い」は違います。
自分が幼い頃の千住は、今よりもずっと人との距離が近い街でした。個人商店が立ち並び、商店街のおっちゃん・おばちゃんが子どもたちに気さくに声をかけてくれる。そんな風景が当たり前にありました。
カフェを始めたい人向けのスクールの講師を定期的にやっているのですが、生徒さんたちは「古民家ならすぐに飲食店が営業できる」と思いがちです。しかし、「そのままではお店として稼働できないよ」と話しています。建物が傾いていたら、鉄骨を入れて躯体から直します。耐震補強もそう。立派な梁が出てきたとしても、そのままでは汚いのでやすりをかけて、その後にオイルを塗る。時間もお金もかかるので、その過程まで楽しめる人でないとできません。

アンティークのドアを購入してトイレ扉に。使いたい建具にあわせて扉の開口部サイズを造り変えることも多い

アンティークの傘立て兼ハンガーなどお店の雰囲気に合わせて家具をセレクト
私がお店を作るときは良いところだけ残して、あとは全部新しく作り直します。業者さんに頼みますが、任せきりにはせず、時々顔を出しながら、壁やカウンターの色など1つずつ、サンプルを見ながら相談する。リノベーションした後も、定期的に壁や天井をペンキで塗るなどメンテナンスを続けています。好きなんですよ、空間を作るのが。逆に料理やサービスはスタッフに任せています。お店の雰囲気が好きな子たちが集まり、この空間に合う料理やサービスを提案してくれています。

スタッフが考案した生ハムのチーズリゾットは人気のメニュー

季節ごとに変わるスイーツを目当てに通うお客様も多い

スタッフとは常にコミュニケーションを密にとっている
高校生のとき、両親と長崎から千住に越してきて、自分が飲食店を始めたのは、まだ23歳だった1997年、初めて手掛けたのが千住ほんちょう商店街のソウルバー「コズミックソウル」でした。弟と2人、右も左も分からず、お金もなくてお酒を6本しか置けなかった。ソウルバーなのにレコードが3枚しかなく、「こんなので看板出すなよ。酒もないのによくやるな」と文句を言って帰ったお客さんが、翌日、お酒やレコードを持って来てくれました。そういうお客さんに助けられて、きちんとやりたいと思うようになり、1日1枚レコードを買うことに決め、1年後には何とか形になりました。東京の人は冷たいのかなと思っていましたが、逆に千住は地方よりあったかく、閉鎖的でもなかった。宿場町だった特性なのか、外から来た人を受け入れる土壌があると思います。

初めての店を手がけた1997年当時から千住の人の温かさを感じたと語る島川さん
「コズミックソウル」が軌道に乗り始め、次に居酒屋をやりたいと思っていたとき、北千住駅を出てすぐの飲み横から1本入った路地にある「萌蔵」(和食店)の建物と偶然出会いました。本当に何もない裏路地にあった蔵(倉庫)がたまたま空いて、家賃も安かったので、古いものが好きな母が中心となって店を始めました。

今ではリノベーションされた飲食店が立ち並ぶ裏路地。右側が「わかば堂」その奥に行列ができているのは「あさり食堂」

入口に蔵の扉の他、床屋や酒蔵などから集めた瓦、建具等をふんだんに使ってリノベーションされた「萌蔵」
その後、運命の糸にたぐり寄せられるように、何もなかったこの裏路地に「あさり食堂」、「わかば堂」、「南蛮渡来」と次々とお店をオープンしました。5店舗目の空き物件の話があったとき、「この裏通りに年間10万人呼びたい」という目標を立てました。それまで手掛けてきた和食、カフェ、立ち飲みとは客層が異なる業態にしたいと思い、思い切ってアパートだった2階を改装して、アメリカンアンティークのハンバーガー屋「ボッサバーガー」を始めたんです。カフェやハンバーガーが若い世代の間で話題となったことで、週末にはこの裏通りに多くの人が足を運ぶようになり、まるで一つの街のようになって2019年ごろ、目標の10万人を突破することができました。弟と始めた「コズミックソウル」は東日本大震災の影響などで2014年にやむを得ず閉店しましたが、2025年末、この裏路地にパンとワインとレコードが楽しめる2代目「バーコズミックソウル」を開店させました。

「南蛮渡来」

「ボッサバーガー」

「バーコズミックソウル」
駅からちょっと怪しげな飲み屋街を通って、この裏路地にたどり着く。そのプロセス自体がストーリーになる。きれいなだけの街より多少の違和感がある方が印象に残りますから。千住は、ストーリーがある街だと思います。
目の前のやりたいことを一つずつやりきって最後に「やってよかった」と思える人生を生きたいと思っています。誰かに言われてやるのではなく、自分の好きなことをやる。たとえ失敗しても、やりきれば納得できますから。
お店は「セレクトショップ」だと思っています。食器、インテリア、施工業者、そして働く人、全てが私のセレクト。それらが組み合わさって一つの空間になります。最近はマッチングアプリで知り合ったカップルが初めて会う店に選んでくれることも多いようです。気取りすぎず、かといってチェーン店でもない。ちょうどいい空間のようです。
今の時代、効率ばかり求められますが、手をかけ、お金も時間もかけて古民家をリノベーションし、あえて不便さや非日常を楽しむことを大切にしたい。昔の電話や待ち合わせには物語がありましたよね。空き家の活用はもっとやった方がいいと思います。新しいビルを建てるのではなく、古いものをいかに残し活かすか。それが千住の街の「色」だし「個性」。千住にはポテンシャルがある。これからもこの街で「物語」をつくっていきたいですね。

プロフィール:島川 一樹 (しまかわ かずき)
長崎県出身。株式会社明珠代表取締役。1997年より千住の古民家をリノベーションして飲食店を次々開店。千住に点在する古民家カフェの先駆者。現在、千住に8店舗、柏に1店舗飲食店などを経営。
<千住にある店舗>
Café’わかば堂 北千住:足立区千住1-31-8
あさり食堂:足立区千住1-34-8
萌蔵:足立区千住1-34-10
ボッサバーガー:足立区千住1-33-4 2F
南蛮渡来:足立区千住1-32-2
カフェ寛味堂:足立区千住4-21-4
わかば堂製作所:足立区千住4-18-9 ファラオ千住103号
バーコズミックソウル:足立区千住1-33-4
関連リンク
お問い合わせ