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公開日:2026年4月3日 更新日:2026年4月3日

酒販売にワケあり

モトハラ 2代目代表取締役社長 関根 豊明さん

自分が幼い頃の千住は、今よりもずっと人との距離が近い街でした。個人商店が立ち並び、商店街のおっちゃん・おばちゃんが子どもたちに気さくに声をかけてくれる。そんな風景が当たり前にありました。

 

「将来、酒屋をやりたい」と地方から修業に来ていた従業員の方々が近くの寮に住んでいたので、店の上にあった自宅で母が作った賄いの朝食などを囲んで一緒に食べることもありました。その温かい情景が私の原風景です。

父が千住で選んだ「商売のかたち」

先代の父は、千葉県市原市の出身ですが、ご縁があって昭和40年代後半に、前オーナーさんから千住元町にある「本原酒店」を譲り受けました。ちなみに、当初の屋号は漢字で「本原」で、読み間違えられることが多かったので、父がカタカナの「モトハラ」に変えたという経緯があります。

 

セールスマンをしていた父は、元々酒屋とは縁がありませんでしたが、とにかく「物を売ること」が大好きでした。当時の酒屋といえば、サザエさんに出てくる三河屋のサブちゃんのように「御用聞き」が主流でした。父が御用聞きをしながらビールや醬油などの注文を受けて配達することで、お客さんを増やしていったという話を聞いています。そのうち、共働き世帯が増えて御用聞きに行っても留守だったりで注文が取れないことが増えてきたんですよね。そこで父は持ち前の営業力を活かし、「飲み屋が多い千住なら、飲食店へお酒を届ける商売に切り替えよう」と決断したのです。

「取り引き先」ではなく「取り組み先」として共に歩む

父の時代、卸先の99%はお客様からの紹介でした。地元の人との繋がりを何より大切にする姿勢は、現在のモトハラの理念である「共成(きょうせい)」に引き継がれています。私たちは、単にお酒を売買するだけの「取り引き先」ではなく、お互いに成長し合える「取り組み先」として、千住の飲食店と共に歩んできました。

モトハラの理念「共成」 社員みんなが見える場所に大きく掲げられている

 

私が父の営む「モトハラ」に入社したのは、2000年です。それまでは修業の一環で、大手ビールメーカーで働いていました。小さいときは家業を継ぐ気はそれほどなかったのですが、父の働く姿を見て、漠然と自分が継いでいくのかなという思いがありました。

 

当時の酒屋は、大手メーカーが作る、誰もが知っているお酒やビールなどを売るのが主流でしたが、私が入社してからは他の酒屋にはない専門性を追求したいと考え、取り扱うお酒の種類を少しずつ増やしてきました。現在ではビール・日本酒はもちろん、焼酎やワイン、クラフトビールなど約3万アイテムを登録しています。

お店の中には多種多様なお酒が並んでいる。店舗に並びきらない分は店舗横の倉庫で保管し、希望されるお客様は倉庫にも案内する

ほぼ毎日足を運ぶという飲食店オーナーにおすすめの日本酒を紹介。倉庫奥の冷蔵ケースにはレアな日本酒も多数並ぶ

 

蔵元を訪ねて酒造りを見せていただいたり、新たに取り引きをお願いしたりと、日本各地の蔵元へ直接足を運ぶようになり、現地で作り手の思いに触れ、顔が見える関係を築けば築くほど、「この素晴らしいお酒を、私たちが責任を持ってお客様に伝えなければならない」という思いが湧いてきたのです。大手メーカーからまとめて仕入れるのと比べると大変さはありますが、“顔の見える商売”をしていきたいという思いでやっています。

 

2019年に代表に就任したとき、日本酒を試飲して、気に入ったお酒を買っていただくという環境を作りたいと思い、角打ちをはじめました。今ではたまに蔵元が来て、お酒のイベントをやることもあります。お酒の魅力を発信したり、お客様に楽しんでいただく場の提供は継続しています。

 

従業員を大事に、気持ちよく働ける環境を整備していると語る関根さん。撮影日も和気あいあいとした雰囲気が流れていた

コロナ禍のピンチを救ってくれた地元の人たち

しかし、代表に就任した翌年にはコロナ禍になって。取り引き先である飲食店が軒並み休業となり、売り上げが7割減少するという厳しい状況になりました。余ってしまった生ビールをどうにかしようと店先で量り売りを始めたところ、家飲みをする人が増えていたので、地元の人が喜んでたくさん買ってくださり助けてもらいました。このことがきっかけとなり、通常の角打ちに加え、生ビールの量り売り『ウチナマ』や、不定期で開催しているガレージセールに繋がりました。

ビールの測り売りを始めた時に地元の人がペットボトルややかんなどを持ってきたことから炭酸飲料を冷たいまま持ち運べるオリジナルグラウラーも制作

 

店舗や店舗の近くでこうした活動を始めたことで、地元に貢献するという楽しさや手ごたえを感じることができましたし、一般の方との繋がりがすごく増えました。地元のお客様の反応を知ることができたのがすごく良かったです。

 

毎週土曜日の角打ちは店からすぐの古民家で。大きな杉玉が目印

数々の日本酒がおちょこサイズでリーズナブルに試し飲みできる。初めて会う人とも酒をはさんでおしゃべりがはずむ

 

日頃から「モトハラに来ると何かワクワクする、美味しい発見があったり、いいものが見つかったり、皆さんにそう思って楽しんでいただける酒屋になりたい」と妻で取締役の美奈子と話をしていましたが、千住の宿場町が開宿400年を迎えたことを記念して、まちを盛り上げようとしていることを知り、ご縁をいただいて2025年11月の「千住酒祭り」開催に繋がっていきました。「千住酒祭り」は全国の蔵元を集めた日本酒の試飲イベントで、モトハラをご存じなかった方々にも「千住にこんな面白い酒屋があるんだ」と知っていただく機会になりました。

 

角打ちやガレージセールで一般のお客様と繋がりが増えたので、イベントには常連さんも来てくれましたし、後日、店舗に足を運んでくれる人も増えました。

 

イベント当日の様子。フラッと立ち寄れて気軽に参加できるイベントになった

作り手の想いを飲み手へと伝える

私たちはただお酒を売るだけでなく、その背景にある物語を伝えていきたい。「このお酒はこんな人が作っている」といったエピソードを飲食店の方に伝え、それがお店を通じて一般のお客様へ届き、ファンが増えていく。「千住酒祭り」では直接作り手さんからお客様にお話しして、飲んでもらう機会ができました。お客様がお酒を知って好きになって楽しんでもらえると、お客様からの発信も増えていくので、今後もいろんな循環を作りたいです。

 

世の中には、まだ知られていない美味しいお酒がたくさんあります。必死に蔵を立て直そうとしている若い作り手さんたちもいます。そんな一生懸命な人たちを、私たちはこれからも応援し続けていきたい。現在の千住は注目の街となり、営業のハードルは昔より高くなっています。それでも、営業で飲食店に足を運べば「息子の同級生がバイトをしていた」なんて偶然もあり、この街ならではの繋がりは今も生きています。

 

千住での商売は楽しいです。「仕事は楽しく」をモットーに、これからも千住の街と、日本のお酒文化を盛り上げる架け橋であり続けたいと思っています。

 

プロフィール:関根 豊明(せきね とよあき)

東京都足立区出身。株式会社モトハラ代表取締役社長。アサヒビール株式会社に入社し、2019年にモトハラを先代から引き継ぐ。千住元町にある店舗で小売業をするほか、配送業も行っている。毎週土曜日に角打ちとウチナマを開催、不定期でガレージセールを行っている。

 

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