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公開日:2026年3月25日 更新日:2026年3月25日

「全国銘酒酒処 成田酒店」店長・角打ち担当
成田夏紀さん

2026年で創業100周年を迎える酒屋を両親と切り盛りしながら、イラストレーターとしても活動しています。
うちの酒屋は現在、父が3代目店主を務めています。ピークの時は千住に80軒以上あったまちの酒屋は、今は13軒に。スーパーなどでお酒を安く買える時代になり、父は酒屋の在り方を探って試行錯誤したようです。全国の珍しいお酒を仕入れてみたり、千住地域の酒屋の仲間と一緒に千住ブランドのお酒をつくってみたり、お客さんを連れて全国各地の酒蔵見学に行ってみたり…。その甲斐あって、贈答用のお酒を見繕って欲しいというお客さんやこだわりのお酒を買いに来てくれるお客さんが増えました。

父が地元の仲間と一緒につくった千住・足立ブランドの酒を中心に集めた棚
父と一緒にお店をやるようになって、お互いお酒の好みが違うのもあって、扱うお酒のバリエーションが増えてきています。自分の舌だけでは判断できないものは親子で相談したり、情報交換したりしています。


旬の地酒の並ぶ冷蔵ケースにテキパキと新しい酒を並べる母

全国の蔵元から集めた日本酒を並べた地酒の部屋を夏紀さんが案内してくれた。友人へのプレゼントに酒を選んでほしいというお客様も少なくないそう
10年前に縁あって、長野県松本市に移住し、さまざまなジャンルの接客業などで経験を積みました。やがてコロナ禍になって父から店をやめようと思うという話があがり、「酒屋でやりたいことがあるので挑戦させてほしい」と言って3年前に実家に戻り、お店を手伝うようになりました。やりたいこととは「角打ち」。松本市ではカフェを併設した書店で働いていたことがあったのですが、お店にはまちの文化が根付き、人が集まって交流が生まれていました。そんなことが角打ちを通して実現できたらいいなと思って、各地の角打ちをめぐって構想を練りました。でも、父の大反対にあい、2025年10月にオープンするまで説得に実に2年かかりました。
父が角打ちに反対していたのは、手間のわりに利益につながらないから。雑多な店先で乾きものを肴に男性が飲んでいる昔ながらのイメージを父は持っていました。でも、私がイメージしていたのは、近年増えているこだわりを持った角打ち。父と私でイメージする角打ちにズレがあったので、実際に私がいいなと感じる酒屋に父を連れて行ったところ、店の内装がおしゃれで、食べ物も充実していて、若いお客さんが多いことに衝撃を受けたようです。
角打ちのイメージを共有できてからは話が早くて、店舗を改装して角打ちをオープンしました。手頃な価格で楽しめてお酒に関する豆知識を伝えられるのも酒屋ならでは。おつまみは私がメインで作っていて、イチオシは「スキレットぼった」。「ぼった」とは、もんじゃ焼きの千住独自の呼び名。我が成田家にはぼった専用の鉄板があって、お正月など人が集まると焼いて食べていました。卵を入れてフワッと仕上げるのが我が家流。



私が店に立つようになって、女性1人のお客さんもかなり増えました。角打ちでは甘酒やりんごジュースも扱っています。改装に合わせてテラス席も作ったのですが、そこには保育園帰りにお子さんと一緒に来てくれる女性のお客さんもいれば、ワンちゃんの散歩中に寄ってくれるお客さんもいます。年齢や性別問わず気軽に人が集える場所にできたらうれしいです。うちの酒屋は「北千住昭和会商店街」に属していますが、店自体はちょっと路地に入った場所にあるので目立たず、以前はこの立地が残念だと感じていました。でも、角打ちをやるようになって、お客さんが人目を気にせずくつろげるので、マイナスがプラスに転じたと感じています。

また、1人で角打ちに来たお客様が手持ち無沙汰になってしまうこともあるかと思って、テーブルには、私が作ったちょっとした読み物「だいたいテキトウ」を置いています。毎号、成田酒店に関わる人を1人取り上げ、その人についての複数の他者からの紹介文を掲載したフリーペーパーです。あえてイラストや写真は入れず、その人がどんな人なのか、読んだ人が想像して楽しめるようにしています。人や文化を繋ぐツールになるといいなと思っています。今年(2026年)は成田酒店100周年なので、記念に1冊の冊子にまとめるのが目標です。


自分でイラストを描きデザインした手ぬぐいも販売している。酒のプレゼントのラッピングにも好評
イラストレーターの仕事は、店の営業の隙間時間や定休日にやっています。お店のPOPやチラシづくりのほか、蔵元からの依頼でラベルやグラスなどをデザインしたこともあって、一見関係ないように見えても、繋がっているなと感じます。


「スタッフのオススメ」POPも夏紀さんの手作り。お店を訪れたときは、父と母と夏紀さん、それぞれ異なるオススメをチェックしてみよう
二足のわらじで忙しくはありますが、ランニングや自転車といった趣味も楽しんでいます。子どもの時によく遊んだ思い出もありますし、広々とした荒川の土手に行くと癒されますね。早朝に荒川土手でランニングしてから1日をスタートさせると気持ちがシャキッとします。自転車で蔵元を見学しに行くイベントを企画したこともあれば、逆に、趣味で知り合った人が角打ちに寄ってくれることもあります。仕事でも趣味でも、いろいろな人と繋がれるのは楽しいです。

千住の商店街がある風景、ご近所さんとの繋がりが密なところが好きですね。幼い頃、迷子になった時に名前を言わなくても「成田さん家の子だね」と、店まで連れて帰ってもらったこともありました。うちの店がある周辺は駅前に比べれば静かですが、炒り豆屋さんなど昔から親しまれているお店だけでなく、新しくできた飲食店や雑貨屋さんもあります。近所のおじいちゃんが、イマドキなコーヒー屋さんでコーヒーを飲んでいるギャップも面白い。こだわりのあるお店が新旧入り混じっているのが最近の千住のおもしろさだと感じています。

北千住駅の西口東口問わず、駅から離れたエリアを「奥千住」と誰かが呼ぶようになり、そこでお店をやっている仲間達と一緒に、地域を盛り上げる活動も始めました。私のお店があるのも北千住の駅から10分ちょっと離れた住宅街。せっかくならと旗振り役を買って出て、私はイラストを描いたり、ウェブサイトを運営したり、仲間の店舗とイベントや角打ちメニューでコラボしたりしています。
100年ほど続く老舗を継ぐということは、まちのハブとして人と人のつなぎ役になる責任もあると思うんです。消防団に長年入団している父にならい、私も消防団に入りました。世代問わず、昔から千住にいる人も、最近千住に来た人もみんなを繋ぐことができる立場でありたいと思っています。人との繋がりを大切にするこのまちの良さを守っていきたいです。

成田夏紀(なりたなつき)
足立区千住出身。美容師として勤務後、「全国銘酒酒処 成田酒店」を営む両親を手伝う。その後、松本に移住してカフェやアウトドアショップなどの接客業を経験、3年前に実家に戻り、本格的に家業の経営に携わる。現在は店長を務め、角打ちを担当している。コロナ禍からイラストレーターとしても活動。趣味はランニング、自転車。
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