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公開日:2026年3月25日 更新日:2026年3月25日

佃煮販売にワケあり

「鮒秋」5代目店主

今井健蔵さん

私が千住で佃煮屋を続けるのにはワケがあります

大正6年に曾祖父が創業した佃煮屋を、5代目として継いでいます。曾祖父は千住にある川魚専門の問屋「鮒与」で働いた後、佃煮屋を開いたと聞いています。2代目は僕の祖父で、娘である僕の母も店を手伝っていました。2代目が亡くなった後は叔父が3代目を継ぎ10年以上店を守ってきましたが2024年亡くなり、母が4代目を継ぎ、私も一緒にやっています。昔は店舗兼自宅だったこともあり、幼いころから店の中でちょろちょろしていて、小学生あたりからは店を手伝っていたので佃煮屋の仕事はなんとなくわかっていたし、この店を大事にしたいという想いが強くありました。僕をかわいがってくれ、面倒もかけた2代目の祖父に対する禊(みそぎ)でもあるし、110年ほど続いた店を簡単に潰したくないという想いが強かったです。

大正時代から変わらぬ趣のある店の前で4代目の母と

佃煮の売り方をアップデート

店を継いだとき、これからの存続に危機感を抱きました。千住は荒川と隅田川に囲まれ、川魚が豊富だったことから佃煮屋は多かったようですが、今やうちの店だけ。今後何十年も続く店にするため生き残りをかけて、新規のお客さんを増やそうと舵を切ることにしました。物価高騰が叫ばれる中、佃煮の値段が上がったらますます売れなくなる。しかし、付加価値をつけることで、多少高くても買ってくれるお客さんが増えるのではと始めたことが3つあります。

まず、量り売りをやめ、真空パックの小分け包装にしました。店でダントツの人気を誇るのが「あさりの佃煮」。1回の仕込みで5kgほどのあさりの佃煮を炊いたら1日寝かせ、翌日は手作業で50gずつ袋詰めして真空にする作業をします。この手作業が本当に大変で、5kgをパッキングするのに4~5時間かかるので「あさり地獄」と呼んでます(笑)。でも、空気に触れるのを防げますし、少量だとちょっとだけ食べてみたいという人でも買いやすいですよね。

鮒秋のイチ押し「うなぎの佃煮」はお茶漬けで食べるのがおススメだそう

2つ目は、ここを佃煮のデパートにしたくて、これまでの30種から50~60種類に増やしたこと。旅先などで出会って気に入った食材があれば佃煮にしたり、佃煮自体を仕入れたりすることもあります。

昔は「すずめ焼き」という小鮒(こぶな)を背開きにして串に刺して焼いたものが千住名物としてよく売られていましたが、今は鮒をさばく人がほとんどいないため扱うのをやめていました。でも僕の代になって復活させました。そういった昔ながらの佃煮もあれば、新たに生み出した「のりぺーにょ(のり×ハラペーニョ)佃煮」のような、今っぽくて洋の食材を取り入れたものもあります。これは冷奴にのせたり、とろたく巻に入れても美味しいんです。佃煮は実は料理にも使えるので、炊き込みご飯やパスタなど使い方もいろいろ提案しています。

5代目として店を継いでから復活させた「すずめ焼き」。小鮒を開いて串にさした姿が古典模様の「ふくらすずめ」に似ていることからそう呼ばれるようになったとか

3つ目は、佃煮の美味しさをより多くの方に知っていただくため、12種類ほどの佃煮を具材として、おにぎりの製造販売を始めたこと。米は宮城県出身の友人の実家から送ってもらい、米を炊く直前に精米するなどこだわっています。今の時代に迎合しない「映えない」おにぎりですが、清潔さとおいしさを第一に作っていて、おにぎりを入り口に佃煮を買いに来てくださるようになったお客様もたくさんいます。

ほかにもネット通販や、SNSで宣伝したり、店舗の照明を明るくするなど工夫を重ね、最近は若い方にも足を運んでいただけるようになりました。海外のお客さんも増えましたね。まだ始めたばかりですが、試行錯誤しながらやっています。

今井さんが誕生させた鮒秋のキャラクター「うな蔵」。イチ押しの商品「うなぎの佃煮」と尊敬する祖父のイメージをかけあわせたそうだが、どことなくご本人に似ているような・・・

まちで飲み歩き、生まれた人とのつながり

このまちで育ち、ずっと千住を見てきました。昔ながらの店や銭湯がある風景も好きだし、おせっかいな人が多いところも好きですね。20年ぐらい千住で飲み歩いているので、知り合いがどんどん増えました。妻とも千住の飲み屋で出会ったんですよ。

行きつけの飲食店の店主が、店のメニューにうちの佃煮を使ってくれることもあるんです。お客さんから「これ、美味しいね」と反応があると、うちの店を紹介してくれます。商品の売り方や経営のことなどをアドバイスしてくれる飲み仲間もいたり、商売がなんとか成り立っているのは千住で出会った人たちのおかげでもあると思います。

僕にとって千住は人とのつながりができ、困った時はお互い助け合えるまち。自分ができる範囲で、まちを良くすることにも関わりたい。また、古い建物がところどころに残るまちの景色も守っていきたいので、自分の店はこのままの店構えを変えずにいくつもりです。

 

 

今井健蔵(いまいけんぞう)

足立区出身。佃煮の製造販売、鰻の蒲焼きの販売をする「鮒秋」5代目店主。店は大正6年に千住で創業。2024年から店を継ぎ、新しいお客さんも来店しやすいようにと工夫を重ねている。2026年より、足立区ふるさと納税返礼品にも登録。

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