あだち広報テキスト版2022年(令和4年)7月10日第1883号6・7面

区民の声と50年
世論調査で足立区を振り返る

昭和47年に始まった「足立区政に関する世論調査」。区民の皆様の声に支えられて、足立区は大きく変化してきました。今号では、世論調査で取り上げられた質問が映し出す当時の足立区を振り返ります。
※グラフは表示単位未満を四捨五入し、端数調整をしていないため、合計などが一致しない場合があります。
問い合わせ先=区政情報係 電話番号03-3880-5830


第51回目の世論調査を8月に実施します!

【今回から、オンライン回答がスタート!】
●区内在住の18歳以上の方3,000人(無作為抽出)が対象
●7月下旬に協力依頼のハガキ、8月中旬に調査書類を送付
●紙かオンライン、いずれかの回答方法を選択できます
お手元に調査書類が届いた方は、ぜひ調査にご協力ください!


第1回から16回(昭和47年から62年〈1972年から1987年〉)
区民ニーズの上位は当時は常に下水道整備

第1回世論調査の「これからの区の発展のために、もっとも力を入れてほしいこと」の回答で1位だったのは「下水道の整備」。当時の区内整備状況は千住や小台、宮城地域のみ、区全体では10パーセントほどでした。その後、昭和62年の第16回まで常に上位3位以内に入っており、強い区民要望があったことがうかがえます。

(グラフ)下水道整備率
「下水道課」が誕生(昭和50年度)(約19パーセント)
「街路下水道課」に改称(平成8年度)(約99パーセント)
区の組織から「下水道課」の文字が無くなる(平成12年度)(100パーセント)
(写真説明)
地中に設置された下水道管(昭和47年撮影)

第1回 足立区政に関する世論調査(昭和47年〈1972年〉)
【当時の質問】
これからの区の発展のために、もっとも力を入れてほしいとお考えのことを選んでください。(回答は2つまで)
下水道の整備:31.3パーセント(第16回までずっと3位以内)
公害防止:21.8パーセント
通学路、ガードレールの設置:21.0パーセント
老人施設の充実:18.8パーセント
道路、河川の整備:18.6パーセント
公園、児童遊園の整備:16.7パーセント
開発や再開発による整備:12.3パーセント

【下水道課に6年間在籍】
都市建設部長 犬童 尚(いぬどうたかし)さん
現場監督が主な仕事だった犬童さんに、当時の整備状況や今後の課題を伺いました。

◆白く剥げたヘルメットは勲章
私が在籍していた平成2年ごろ、区の土木事業の中でもメイン事業(当時、下水道工事は東京都からの受託事業だった)は下水道整備で、課は60人ほどの大所帯でした。1人で現場を4・5カ所持つなど「やれるだけやる」という時代でした。職員は若くて馬力のある20から30代がほとんど。主な仕事は現場回りで、整備状況の確認です。直径60センチメートルを超える下水道管の検査は、職員自ら入って目視で確認をしていたんですよ。狭いので、ほふく前進したりして。下水道課職員のヘルメットは、みんなてっぺんだけ剥げて白くなっていましたね(笑)。

(写真説明)
水路を調査する職員(平成19年撮影)
(ヘルメットのてっぺんが剥げている様子)

◆下水道で大雨や台風の水害が減った
複数の町会にまたがるような大規模な工事のときは、地域一帯で何十本も一気に下水道管を入れるんです。区民の方から騒音や通行妨害などの苦情もありました。たまに「家に帰れないんだけど…」という苦情もあったりして。でも、当時はそれ以上に喜びの声のほうが大きかったように感じます。
下水道というと、水洗トイレの印象が強いかもしれませんが、それ以上に大きなメリットは、雨水が下水に流れてすぐに水が引くようになったこと。下水道整備は、水害対策の側面もあるんです。

◆チーム一丸で取り組みます
現在、区の整備率は概成(がいせい)100パーセント(下水道整備率が99.5パーセント以上の状態)。今後は維持していくことが課題ですね。すでに千住地域では、東京都による老朽化した下水道管の入れ替え工事が始まっています。今は都市整備全般を管理監督する立場になりましたが、これまでの経験を活かして、都市建設部の職場をまとめ、足立区をより安全で快適なまちにしていきたいです。


第9回(昭和55年〈1980年〉)
国が進めた、新生活運動

新生活運動とは、「戦後の混乱期を乗り越え、合理性、快適性を追求した新しい生活を築き、住みよい豊かな町を創ること」を目的とした運動のこと。現在も続いている「花いっぱいコンクール」や「紙門松の配布」は、この新生活運動がきっかけで始まりました。町会・自治会に関わっていた人ほど新生活運動の認知度が高く、ご近所づきあいの中で情報を得ていたことがうかがえます。

【当時の質問】
町会・自治会参加状況と新生活運動認知度

町会・自治会によく参加
新生活運動を知っている:54パーセント

町会・自治会に時々参加
新生活運動を知っている:46パーセント

町会・自治会にたまに参加
新生活運動を知っている:41パーセント

町会・自治会に全然参加しない
新生活運動を知っている:32パーセント

町会・自治会に加入していない
新生活運動を知っている:25パーセント

(写真説明)
紙門松


第10回(昭和56年〈1981年〉)
少年犯罪は8分の1に減少(昭和56年から令和元年)

当時は、少年犯罪が深刻な問題になっていました。昭和56年の検挙補導件数は2,527件で、令和元年の303件と比べても、相当多かったことが分かります。第11回以降も数年にわたり「青少年の健全育成」について質問しており、原因を探り、解決策を見出そうとしていたことがうかがえます。

【当時の質問】
最近青少年の非行が大きな社会問題になっています。このような青少年の非行が激増している最大の原因はなんだと思いますか。(回答は1つだけ)

家庭のしつけが不十分:57.7パーセント
子どもを取り巻く社会環境の悪化:27.6パーセント
知育偏重の学校教育の欠陥:8.1パーセント
その他・わからない:6.6パーセント

現在区では、「こども支援センターげんき」で子育てやしつけ、教育に関する相談に対応し、家庭・学校への支援などを実施しています!


第42回から50回(平成25年から令和3年〈2013年から2021年〉)
順位が示す、今後の区政運営

近年の強い要望は「防災(災害)対策」です。平成23年の東日本大震災や令和元年の台風第19号のほか、全国的に頻発する自然災害に対する不安からと考えられます。また、令和2年の調査では「情報提供」が4位に。多くの方が新型コロナウイルス感染症の関連情報を求めていたことがうかがえます。

回答の分析
「今後の区の取り組みで重要なもの」と回答された各年度の上位5位までをまとめました。

平成25年
1位 防災  2位 治安  3位 交通対策  4位 高齢者  5位 保健衛生
26年
1位 防災  2位 治安/交通対策(同率2位) 4位 資源環境  5位 高齢者
27年
1位 高齢者  2位 治安  3位 資源環境  4位 防災/交通対策(同率4位)  
28年
1位 防災  2位 治安/交通対策(同率2位) 4位 資源環境  5位 高齢者
29年
1位 防災  2位 資源環境  3位 交通対策  4位 治安  5位 子育て
30年
1位 防災  2位 資源環境  3位 交通対策  4位 治安  5位 高齢者
令和元年
1位 治安  2位 防災  3位 資源環境  4位 交通対策  5位 子育て
2年
1位 防災/治安(同率1位) 3位 資源環境  4位 情報提供  5位 交通対策
3年
1位 治安  2位 交通対策  3位 資源環境  4位 防災  5位 高齢者



第38回から50回(平成21年から令和3年〈2009年から2021年〉)
誇りが持てるまち「あだち」をめざして

【足立区に住んで60年以上】
栗原在住
有野 芳邦(ありのよしくに)さん 昭子(あきこ)さん
今年90歳を迎えた芳邦さん。昭和30年代以降のまちの移り変わりを奥様と共にお話しいただきました。

◆当時は、何もなかった西新井駅周辺
足立区に引っ越してきたのは、昭和30年代の初めです。その前は杉並区に住んでいましたが、布団屋を営んでいた叔父に、「足立区はこれから伸びる。西新井という駅に商店街があるから、その様子を見てきなさい」とすすめられたのがきっかけで住み始めました。初めて降りたときは、あまりにも何もなかったから衝撃を受けました。駅前にはポツンと自転車屋が。浅草から電車で来ましたが、どんどん田んぼが増えてきて、「降りる駅を間違えたんじゃないか」と思うほどでしたね。
◆人もまちも活気があふれていた
昭和32年に、関原商店街で布団屋を始めました。当時は高度経済成長期で、人口がどんどん増えている時代。とにかく物がよく売れました。店では布団のほか「蚊帳(かや)」も売っていましたが、当時は下水道が未整備で蚊がかなり多かったので、布団以上に売れました。1日に数十張りも売れたこともありましたね。
昭和36年に栗原に越してきたんですが、周りは田んぼ。のどかな田舎でした。大雨が降ると、西新井駅の東口あたりは、腰ぐらいまで水が上がることもありました。環状七号線ができたのは住み始めたあとです。当時は「なんでこんな広い道路が必要なの?」なんて声もありましたけどね(笑)。

(写真説明)
梅田一丁目9番19号付近。千住新橋北詰から続いていた商店街(昭和39年撮影)

◆足立区に住んで良かった
布団屋が大きくなってきて、その後不動産業と洋品スーパーの事業を起こしました。当時は、肌着がよく売れましたね。運良く、時代の波に乗れました。そして本当に多くの方々に支えていただきました。みんな、うちの屋号の山一(やまいち)さん、って呼んでくれて。あだちの人は人情がありますね。時代だけでなく、人に恵まれました。最初は「エラいところに来てしまった」と思いましたが、足立区に越してきて、本当に良かったと思っています。

あだち広報4月10日号「区制90周年記念特集」の感想を区に寄せていただいたことが、今回の取材のきっかけとなりました。


ハエ・カ撲滅隊!?
当時は下水道の不備やゴミ処理の不完全などにより、ハエやカが多く発生し、衛生上の問題となっていました。そのため、用水の消毒など、「ハエ・カ撲滅の町会活動」が地域で一斉に行われていました。
(写真説明)
橋戸稲荷神社での様子(昭和39年撮影)


第38回から50回 足立区政に関する世論調査(平成21年から令和3年〈2009年から2021年〉)

【質問継続中】
あなたの足立区に対する気持ちとして、以下の項目にどの程度あてはまりますか。
平成21年(2009年)
愛着を持っている:67.0パーセント
誇りを持っている:34.8パーセント

令和3年(2021年)
愛着を持っている:73.3パーセント
誇りを持っている:45.6パーセント


愛着7割、誇り5割

昭和50年代の調査から「愛着を持っていますか」という質問を続けており、いずれの年も70パーセント前後で推移しています。また、平成21年に開始した「足立区に誇りを持っていますか」という質問では、当初は34.8パーセントでしたが、近年は40から50パーセントで推移しており、およそ2人に1人が「誇りを持っている」と答えています。
今後も、「足立区が好きだ」「このまちに住んで良かった」と思えるまちをめざして、区民の皆様と一歩ずつ歩んでいきます。