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公開日:2021年10月19日 更新日:2021年10月19日
前編では、中小企業においてもパワハラ対策が義務化(令和4年4月から)されることや、企業が行うべきパワハラ防止対策について述べました。
後編では、実際にどのような行動や言動がパワハラと見なされ、それを防止するにはどうしたらよいかについて解説します。
「パワハラ防止法」ではパワハラについて、「1. 優越的な関係を背景とした言動」であって、「2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」により、「3. 労働者の就業環境が害されるもの」を要件とし、3点の要件を全て満たすもの、と定義しています。
厚生労働省の指針では、パワハラと見なされる行動について以下の1.~6.のタイプに分類し、その具体的例を記載しています(令和2年1月15日厚生労働省告示第5号:https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000584512.pdf)。
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具体例 |
1. 身体的な攻撃(暴行・傷害) |
・殴打、足蹴りを行うこと。 相手に物を投げつけること。 |
2. 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言) |
・人格を否定するような言動を行うこと。 ・長時間にわたる威圧的に、または他の労働者の前などで厳しい叱責を繰り返し行うこと。 ・ 相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を複数の労働者送信すること。 |
3. 人間関係からの切り離し |
・自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりすること。 ・一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること。 |
4. 過大な要求 |
・長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下で勤務に直接関係のない作業を命ずること。 ・新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責すること。 ・ 労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること。 |
5. 過小な要求 |
・管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせることや、気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えないこと。 |
6. 個の侵害 (私的なことに過度に立ち入ること) |
・労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりすること。 ・労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、本人の了解を得ずに他の労働者に暴露すること。 |
もし職場でパワハラが発生するとどうなるでしょうか?
直接の被害者だけでなく周囲の者も動揺して集中力を失い、モチベーションやモラルの低下を招きます。被害者の休職・辞職だけでなく優秀な人材も流出し、生産性の低下を招きます。
また、職場には民事上の責任も発生します。安全配慮義務違反に基づく損害賠償や裁判沙汰へと発展する可能性があり、会社の内外における信用の失墜をもたらします。
1 経営トップの取り組み
まず、経営トップが基本方針として「パワハラをなくす」と宣言し、強いメッセージを発信することが大切です。特に中小企業ではトップダウンで実行する方法が効果的です。
2 ボトムアップの取り組み
次に、社内にハラスメント対策の推進役や推進チームを作ります。そして経営者の方針と支援のもとで、管理職を中心とした研修や社員同士のワークショップなど、定期的な社内啓発活動を実行していきます。
3 組織文化、業務の見直し
社内研修や啓発活動のプロセスにおいて、会社内にパワハラを生みやすい風土や空気があるか確認しましょう。同時に、業務の内容や量、目標の設定などにおいて無理がないかも、チェックします。
【パワハラが起こりやすい組織の例】
ハラスメント対策は、「リスク回避」という受動的な理由だけで行うのものではありません。
生産性の高い組織を作るための投資と考え、戦略的かつ積極的に取り組むことが大切です。それにより個々の社員の能力が最大限に引き出され、生産性が向上します。人材確保、女性の活躍、ダイバーシティ推進、企業イメージのアップ等々、さまざまな経営上の利点が得られるのです。
(マッチングクリエイター 大﨑)
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