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更新日:2012年7月25日

~足立大好きインタビュー~ アーティスト 大巻伸嗣さん

アーティスト 大巻伸嗣さん
「足立区のもつかけがえのない力」

足立区は『和』の力を持っている

大巻伸嗣さん

僕は、人はひとりでは絶対に生きていけないと思います。今は、「ひとりでもいいよ」って思っちゃう人がいっぱいいると思うんですけどそれは幻想で、人間は共同体で生きて行くものだと思います。それがなくなってきているので、社会にひずみが出てきているのではないでしょうか。

足立区が持っている力というのは、今、多くのまちから無くなってしまった人間の『和』の力。コネクションの力、コミュニケーション能力と言い換えてもいいかもしれません。

原宿で僕がアート活動を行ったら無視されると思います。変な人だ、関わりたくないと。だけどここは、関わらなきゃいけない場所なんですよ。ここにはもともとコミュニティがあって、人が何かしたら、それに対して気をつけてくれるし、気を使ってくれる。普通に話しかけてくれる。近くのパン屋さんでは、来るおばあちゃんに、「ちょっと待ってなさいよ、後で持って行ってあげるわよ」なんて話している。え~、そんなことまでしてくれるの?ということがたくさんある。普通に人との関係を大切にしてらっしゃるなと思う。いつの間にか僕らも、お世話になっちゃってるんですけど(笑)。このまちは、ごくあたり前に、助け合って生きているなと思います。

2008年の横浜トリエンナーレ出展作品は、足立にアトリエを構えて、ここで最初に生まれた作品だったんですね。横浜に持っていく作品をテストしたのもここで、近くにある保育園の子たちが通ってくる瞬間にシャボン玉を飛ばしてみたりして、人がどう反応するのかを見た。子どもたちはもちろんだけど、おばちゃんが「何やってんの?楽しそうね」と立ち止まってくれ、自転車で通りがかったおじさんが「お~何か懐かしいなあ」って、そうやって会話が生まれていく。犬がシャボン玉をパクパク食べようとしたり。想像以上に人が集まって来たのがとても面白かった。そういう風に、人としゃべりながら、アートを創っていく。アートというのは黙りこくってみる眺めるものではなくて、本来、会話を生むものだと思うんです。

人のいる風景を探して足立に来た

区内のアトリエにて

以前は新御徒町にアトリエがあったのですが、工場街で夜は誰もいないまちでした。下町で人情味もあるまちだったけど、人が生活していないので、昼は活動しているが、夜はもぬけの殻になるまちだったんです。その静かな夜のまちのなかで、僕らだけが活動していた。当時僕は、美術館というハコの中に美術品を作ってきたのですが、いつのころからかハコの外の人間の世界を切り取って作品を創りたいと思うようになっていました。人の動きが風景になっていく作品をつくるきっかけというのがありまして。

僕らが生きていく情景を、どうやってアートとして伝えていくか、もっと言うと、人間とはどういうものなのか、どうやって存在しているのか、もう一度見直したいなと思ったのです。

だから、人を見ながら創りたいと考えるようになって、人のいるまちを探していたのです。都内外のいろんな場所を見ました。それこそ何十カ所も。でも、面白いなと思えた場所はなかった。足立区でここ(現アトリエ)に出会って、昼も夜も人が歩いているという風景がすごく気に入ったんです。それでいて、東京の中心部から離れていない。それから故郷の長良川に似た土手があることも。

このまちは、「濁りがない」と感じます。それにまちが、リラックスしている。程よく気を使ってくれ、程よく無視してくれる。いいまちだよと話す機会が増え、アーティスト仲間がアトリエを構えるようになって、僕にとってますますかけがえのない場所になってきています。

少し雑多であることがいい

このまちのことはみんなに知ってほしいと思うけど、ここが荒らされなきゃいいなとも、いつも思っています。

この千住の商店街を、夕方子どもたちがラクロス持って、くっちゃべりながら歩いていく。それが夕日に輝いている姿が絵になっていて、ああいいなあと。そしてそのまま、風呂屋に入っていくんですよ。商店街に2軒ありますからね、風呂屋が。また風呂の中でみんなでしゃべってるんだろうなと思う。その空気を感じるだけでも幸せです。みんなが安心して、おしゃべりして、歩いて、生きていけるまち。ほかにないですよ、なかなか。

道が狭くてもいい。人が安心して歩けるじゃないですか。(学園通りは)車が我慢して、遠慮して、通ってるんです。その感じが自然とキープできてるところはなかなかないです。商店街は人が集まる場所で、まちの脊髄。あそこに行けば誰かに会える、と思える場所。みんなできれいにしようという意識があって、商店は、自分の店の前に落ちているゴミを拾う。僕はあそこが大好きです。最高にいいんです。角の肉屋の肉はおいしいんです。総菜屋もいっぱいあって、八百屋が何軒もあって大きなスーパーができない。少しの雑多な感じが、全部がきれいになっていないところが、人が居やすい。人間味がありますね。あそこには、色がある。

もしあそこをきれいに整備したりして、バスを通したりしたら、必ず、汚いまちになっちゃいます。おばあちゃんは危なくて出て来れなくなって引きこもり、商店で買物しなくなり、そうすると、ゴミだらけのまちになると思います。僕が商店街にこだわるのは、多くのまちがどんどん「無責任」になってきているからです。きれいなビルが建つ代わりに、まちに対して責任を持たなくなり、住民がまちに対して「意識のない」まちが増えているんです。川辺をきれいに工事してコンクリートで固めて土や草がなくなると、ザリガニやフナがいなくなるのとおんなじです。一見きれいだけど、水辺のさまざまな生物たちが棲めない、そんなまちが増えてるんです。

足立でのアートの可能性。教育は大切

この9月に上海で行われたSHコンテンポラリーで、世界中の若手アーティストの中から選ばれる「ベストヤングアーティスト賞」を受賞しました。その賞品(副賞)として、シンガポールに10日間滞在して制作してくださいというお話がありました。足立区もね、そういう賞ができるといいですね。年に一回、足立アワードとか、足立ヤングアーティスト賞とか。何がいいかというと、それがステータスになって、若いアーティストが集まるきっかけになる。外から来るアーティストが、このまちを見て、知って、住むというきっかけになると思うんです。たとえばそういう人たちを登録してもらって、小学校で音楽会をやってもらったり児童館でのイベントを年間スケジュールを組んで発注するのもいいと思います。

足立区は、外から来た人が、ここの良さに惹かれるまちになっていかなければならないと思う。僕らは、このまちの「人のいる風景」に惹かれて来たけど、そこに、文化があったり教育があったりすることって、とても大事なんです。文化や教育をサポートしてくれる自治体であれば、若いお父さんやお母さんたちはうれしいし、ここに住んで、子どもを育てたいと思う。文化や芸術は、今はお金を払って観に、聴きに行くものになっているけれど、まちにアーティストが住んでいれば、普段から、それを提供してもらうことができる。アートや文化活動や音楽やいろいろなものがそこここにあふれるまちであるといい。

アーティスト・イン・レジデンス(アーティストが滞在しながら制作する)に関して言えば、古くは、アメリカのバーモントのジョンソンって小さいまちなんですが、空き家を使って世界中からアーティストを呼び、生活費は国や企業からお金を集めて実施しています。1タームに200人くらいのアーティストを招聘しているので、児童館でイベントをやってもらったり、学校を訪問してインドネシアのアーティストがインドネシア文化と染色の体験授業をやったりしているんです。子どもたちが日常的に文化やアートに触れ、さらには芸術を通して異文化も学んでいく。一石二鳥だと思います。日本は、「国際化」なんて言うばかりで、まったく国際化していない国ですから。

しかし日本でもいくつかは動きがあって、たとえば茨城県のアーカススタジオには、アーティスト・イン・レジデンスの事業があり、世界中からアーティストを招聘しています。

僕は今、いろいろなまちに関わらせていただいていますが、「アートを入れれば何とかなるだろう」というような投げやりな考え方ではやれない。変わる気があるなら、こちらも本気でやります。

ここは帰る場所。足立区から世界へ

僕のアトリエの大家さんは、最初、「変な人は入れたくない、アーティストなんてよくわからない」という感じだった。それで僕は、なぜこういうまちに来たいか、何をしたいかを、じっくり話した。すると大家さんも絵をやっている人だということがわかり、意気投合して、最後には「それならぜひ、うちを使って」と言ってくださった。

今は、隣に住んでおられる大家さんとおしゃべりして、お互い、楽しいなと思えるような関係になっています。

僕がアトリエを構えるようになって、まちが変わったかというご質問ですが、僕はこのまちを変えようとは思っていない。ただ、よく行くお店では、僕らの展覧会のポスターを貼ってくれるようになり、たまには見に来てくれたりするようになっている。蕎麦屋さんで「昨日まで熊本だったんだ。シンガポールだったんだ」なんて話をするので、おもしろがってくれていると思います。僕らがこのまちに来たことによって、美術館に足を運んでもらうきっかけくらいにはなってるかなと。

今、地方や海外の仕事が多いですが、ここから離れて遠くへ行くとき、このまちのことを感じるんですよ。離れれば離れるほど引き寄せられる、そういう思いは強くなっていますね。そして、離れたまちで会った人に、このまちのことを話すんです。

僕らにとって、自分たちの帰る場所として「足立区」はとても大切です。帰る場所があるのとないのとでは、全然違います。このまちを通して世界中とコミュニケーションして行きたいと思っています。

EchoesINFINITY2010

「Echoes-INFINITY」2010,東京都現代美術館/東京
写真:森田兼次

<談2010.9.9.>

おおまき・しんじ

アーティスト。足立区にアトリエを持つ。「トーキョーワンダーウォール2000」に入選以来、空間をダイナミックに生まれ変わらせる作品が話題に。2010年夏には、東京都現代美術館で「こどものにわ」に出品し、注目を集めた。昨年度、上海で行われたSHコンテンポラリーでは、世界中の若手アーティストの中から「ベストヤングアーティスト賞」を受賞。国内外を問わず活躍中。
http://www.shinjiohmaki.net/index.html(外部サイトへリンク)

 

著名人が語る!足立大好きインタビュー

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