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更新日:2012年8月1日

シリーズ現場12月10日号

兆候見つけ、自殺を防げ!ゲートキーパー

区内の自殺者数は、この11年間でおよそ千800人。これは、区内の大きな町会が丸々1つ消滅したのに匹敵する。経済不況が続く中、自殺者は今後も増えることが予測され、対策は待ったなしの状態だ。区では、自殺しようとする人の悩みを解決するために、様々な『生きる支援』を行っている。今回は、その1つである「ゲートキーパーの養成」を追った。

命を守る「門番」

ゲートキーパー。直訳すると「門番」である。相談などに訪れた人が最初に接する職員を「門番」と位置付け、自殺の兆候を見つけ出し、問題解決に繋(つな)げようというものだ。例えば、納税の窓口職員が「税金を納めるのが厳しい」という相談を受けたとする。その背後にはいくつもの悩みが隠れている可能性がある。借金を多く抱えているかもしれない。事業がうまくいっていないのかもしれない。身体的な病気で働けないのかもしれない。ゲートキーパーはそうした相談者の隠れた悩みに気付いたときに、相談者の了解を得て、区の生活保護や企業融資の担当、保健総合センター、ハローワーク、病院など適切な関係機関に繋ぐ。悩みを総合的に解決していくための道案内の役割を果たそうというのだ。区では、昨年11月から、区民と接することの多い窓口職員を中心に「ゲートキーパー研修」を行ってきた。これまでに受講した職員は延べ500人以上に上る。

72パーセントの「生きたい」のサイン

ゲートキーパー研修で、連携の大切さを訴える馬場優子保健師

ゲートキーパー研修で、連携の大切さを訴える馬場優子保健師

ここに驚くべき数字がある。区と協働して自殺対策に取り組むNPO法人「自殺対策支援センターライフリンク」が、自殺者の家族にアンケート調査を行った。それによると、およそ72パーセントの人が自殺する前に、病院の精神科や公的相談機関など、何らかの窓口に訪れていたという事実が見えてきたのだ。言い換えれば、自殺者の72パーセントの人が最後の最後まで「生きたい」と模索しながらも、悩みを完全には解決することができずに、自殺という道を選ばざるを得なかったということになる。このことからも、相談窓口などで自殺の兆候に気付くことの大切さが分かるだろう。

小さな兆候を見逃すな

この日は、税金や保険料を集める徴収嘱託員に対して研修が行われた。滞納者などが抱える多重債務などの問題を学んだ

この日は、税金や保険料を集める徴収嘱託員に対して研修が行われた。滞納者などが抱える多重債務などの問題を学んだ

「相談者の小さなサインを見逃さずに、手を差し伸べることは、とても難しいけれど重要なことです」と話すのは、東和保健総合センターの馬場優子保健師。これまで以上の自殺対策の必要性を訴え、関係機関に連携を求めて活動してきた職員の1人だ。そんな馬場保健師には、今でも忘れられない出来事があるという。9年前のある日、担当していた50歳代の男性が、普段見たこともない改まったスーツ姿で馬場保健師のもとを訪れた。男性は「あなたにはこれまで大変お世話になった」と丁寧にお礼を言ってきた。馬場保健師はそのときは違和感を感じながらも、返礼をし、少し立ち話をした。そして、男性はにこやかに帰っていった。その翌朝、男性は自殺したのだ。「いつもと様子が違ったのに、まさか自殺を考えていたとは気付けなかった。今でも悔やんでいます。あのとき、『今、死にたいくらいしんどいんじゃないの?』とひと言掛けることができれば…」1人でも自殺者を減らしたいとの思いから、馬場保健師は関係機関と何かできることはないかと模索を始めた。そしてたどり着いた取り組みの1つが、窓口職員に向けた「ゲートキーパー研修」だった。

「負の連鎖」を断ち切る

自殺に至る要因の1つとして「うつ病」がある。これまでも、足立区はもちろん様々な自治体で「うつ病」対策がとられてきた。しかし、今回の自殺対策で区が着目したのは、「うつ病になる前の過程」であった。会社での配置転換、過労、失業、就労の悩み、病気、子育てや介護の悩み、借金苦…。「うつ病」になるには、様々な要因があり、それらが複雑に絡みあっている。区は、「うつ病」の前段階にある「負の連鎖」を断ち切ろうと考えたのだ。ゲートキーパー研修では、自殺対策の専門家を講師に招き、自殺願望者を追い詰める悩みがいかに複雑で、その要因が多岐に渡るかを、実例を通して知る。複数の要因を解決するには、各部門が連携を深め、横断的な支援が不可欠なことを学ぶためだ。そして、相談者に対する話の聞き方や情報の伝え方、相談機関への繋ぎ方などを知ることで、自殺の兆候への「気付き」のアンテナを高めていく。「点」での支援を「面」へと広げる。その努力が、今、着実に進められている。

広がる面の支援

こうした支援を実行性のあるものにするためには、民間の力も不可欠だ。「面」での支援を更に区役所の外にも広げていこうと、11月5日には、民生委員や区内のNPO団体など、約250人が参加し、ゲートキーパー研修が行われた。「これまで、自殺は社会通念に反する『身勝手な死』だと思っていました。でも違っていたんですね」と、研修を受けた感想を語るのは、地域で活動する健康づくり推進員の織田弘子さん。「本人は生きたいと思いながらも、死を選ばざるを得ない人がいかに多いか。私たちはその現実をしっかりと認識しなければいけないのだと思い知らされました。悩みを持っている方々の『助けて』の声をしっかりと受け止めていきたいです」区では、今後も庁内や関係機関、民生委員や児童委員などにゲートキーパー研修を行っていく。

10月には、「こころといのちの相談支援ネットワーク会議」が開かれた。区役所だけでなく、警察、消防、病院、ハローワーク、鉄道などの20以上の関連団体・企業が自殺対策に向けた情報交換などを行った。年間の自殺者数がパソコンの画面に浮かび上がると、出席者は皆、一層真剣な面持ちとなった
10月には、「こころといのちの相談支援ネットワーク会議」が開かれた。区役所だけでなく、警察、消防、病院、ハローワーク、鉄道などの20以上の関連団体・企業が自殺対策に向けた情報交換などを行った。年間の自殺者数がパソコンの画面に浮かび上がると、出席者は皆、一層真剣な面持ちとなった

 

どんなに高い理想を掲げ、何度研修を行っても、それが「絵に描いた餅(もち)」になっては意味がない。区では、悩みを持つ方々に効果的な支援が行えるよう、区内の自殺者の特徴の分析や相談別のフローチャートの作成を進めている。足立区の『生きる支援』は始まったばかりだが、着実な一歩を進めたところだ。

問い合わせ先

  • ゲートキーパー…衛生管理課計画調整担当
    電話番号03-3880-5891
  • この記事…報道広報課広報係
    電話番号03-3880-5815

(平成21年12月10日号)

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