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公開日:2016年11月10日 更新日:2016年11月10日

ちょっと変わった枕をご紹介します

青木萬吉作「旅枕」

青木萬吉「旅枕」 付 村越向栄 四季草花図(しきそうかず)

 郷土博物館の開館30周年を記念して開催中の「アラサーみゅーじあむ モノがたり」で面白いものを見つけました。「旅枕(たびまくら)」です。

 今回展示されているのは、明治時代に旅行用として作られた携帯式の枕で、長旅に必要な品々や小さくしつらえた職業上の用具などを収納できる物入れがついた箱形のものです。写真を見ていただくとお分かりの通り、中には枕、鏡、そろばん(旅枕には付き物とのこと)、そして高さ20センチ足らずの行灯(あんどん)が収納されています。箱の中にスライド式の引き出しが組み込んであるなど、大変凝った作りになっており、そのうえ行灯には、江戸琳派(りんぱ)の第一人者、鈴木其一(すずき きいつ)の流れをくむ千住の琳派絵師、村越向栄(むらこし こうえい。にわかに注目度アップ中)が四季の草花を描いているというぜいたくさです。

 この旅枕を作った指物師の青木萬吉(あおき まんきち)は、江戸時代末期から大正にかけて活動した花又村(はなまたむら。現在の花畑)の和算家(※1)でもあります。地租(※2)改正の改正委員もつとめ、彼が営んでいた寺子屋(算学塾)は門人でにぎわったそうです。

 作者が腕試しで作ったものらしく実際に使用されてはいませんが、自前の小型行灯を持参しての旅とは、何とも風流ではありませんか。萬吉同様、向栄も寺子屋を営んでいたそうで、そちらのつながりもありつつ、一方で「作家」「職人」として互いに引かれ合うものがあったのかもしれません。いずれにしても見事なコラボ作品です。

※1 和算家:「和算」は日本で独自に発達した数学で、江戸時代に大いに発展した。「和算家」はその専門家。明治になり西洋数学が入ってくると和算は衰退し、学校教育の現場から姿を消したものの、今日まで引き続き継承されている。

※2 地租:土地に対して課せられる税で、明治6年に制定されたが昭和25年に廃止された。現在の固定資産税にあたる。

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